NHKスペシャルの新シリーズ「2030 未来への分岐点」を見た。
第1回は地球温暖化問題。
かなりの力の入れようなのだが、ツッコミどころも多い(^_^)

2030 未来への分岐点 (1)「暴走する温暖化 “脱炭素”への挑戦」 – NHKスペシャル – NHK

持続可能な未来を模索する新シリーズ「2030 未来への分岐点」。第1回のテーマは新たなフェーズに入った地球温暖化。このままいくと早ければ2030年にも、地球の平均気温は臨界点に達するといわれている。それを超えていくと、温暖化を加速させる現象が連鎖し暴走を始める可能性が明らかになってきた。その時、私たちの暮らしはどうなるのか、どうすれば破局を回避できるのか。この10年歩むべき道を考える。

いちおうドキュメンタリーなのだが、なぜかそこに安っぽいSFの要素が入れられていて、そこが興ざめ。
それ、必要か?

ドラマ仕立てで始まり、森七菜さんが演じる主人公が、2100年の未来を見るというところから始まる。そして、未来の謎の男の声が「未来を変えるには2030年が分岐点だ」とメッセージを伝える。

いやいや、それおかしいだろう(^_^)b
タイムパラドックスが生じてしまう。
なんだか最近、そういう安直なSFシチュエーションが多いんだよね。簡単に時間移動したり、異世界に飛んだり、超能力を発揮したり、心が入れ替わったり……。作ってる人たちはいいアイデアだと思ってるのかもしれないが、それらは魔法と同じでリアリティの微塵もない設定になってしまう。
特に、この手のドキュメンタリーでは禁じ手だ。内容が陳腐化してしまう。

未来の彼は、温暖化で絶望的な世界にいるようだ。
その彼が過去を変えてくれという。しかし、過去が改変されると、未来の彼は存在しなくなる。それ以前に、彼が存在するということは、過去は変わらず彼のいる未来は必然になっている。
未来を知る彼の存在そのものが、温暖化した未来を確約することになる。
過去と未来が交錯する時間テーマは、軽々しく扱うと墓穴を掘ることになるんだ。

つまり、深読みすると、この番組は温暖化する未来は変えられない……と暗示していることになる。
それでいいのかい?

ドキュメンタリーはリアルに徹しないとダメだ。
内容的にはよい部分もあるが、クソSF要素が入ったことで、説得力は半減してしまっている。番組を面白くしようという意図だと思うが、その軽さが番組を低俗にしてしまっている。
森七菜さんに責任はないが、彼女はこの番組には不要だった。

本筋の内容的なことでいえば、温暖化のイメージとして、氷河が崩れ落ちるシーンを多用していたが、氷河の先端は温暖化に関係なく海に崩れ落ちるものだ。そのシーンは、使い方として間違っている。

グリーンランドの氷が溶けているというシーンもあったが、かつてバイキングの全盛時代(800年〜1050年)には温暖で、バイキングは沿岸部に入植していた。その後、12世紀頃に寒冷化が始まり、入植地は消滅した。そういう史実に触れないのは、恣意的ではないか?

もっと遡ると、270万年前には、グリーンランドは氷床に覆われておらず、地面が露出し緑に覆われていたという研究報告もある。その当時は、文字通りのグリーンランドだったんだ。それほど温暖化していた時代でも、地球には生物があふれていた。270万年前の人類の祖先は、パラントロプス・エチオピクス(Paranthropus aethiopicus)やパラントロプス・ボイセイ(Paranthropus boisei)の時代だ。

パラントロプス・ボイセイ復元像(Wikipediaより)

遠い祖先は、こんな姿だった(^_^)
じつのところ、人類の祖先が滅亡せずに生き延びられたのは、地球が温暖化していたからでもある。
最終氷河期である約7万年前のウルム氷河期を、現生人類(ホモ・サピエンス)が生き残れたのは、技術と文化が発展し、寒さをしのぐための衣服を作れるようになったからだといわれている。

この番組でも、温暖化の比較対象として、産業革命前(18世紀半ば、1760年頃)を基準にしていた。
なぜ、そこを基準にするのかの根拠が乏しい。
人為的なものだとするための、方便にしか思えない。

過去記事にも書いているが、もっと昔、縄文時代は現在よりも温暖だった。現在よりも2〜3℃気温が高かったことがわかっている。
縄文時代の前期、約6千年~5千年前に、温暖化が進行し、海水面は4~5メートル高くなった(縄文海進)。
人類の文明が発祥する以前なので、気候に人類はまったく関与していない。基準とするなら、この時代こそがふさわしいのではないか?

見方を変えれば、現在の温暖化は縄文時代に戻っている過程ともいえる。たしかに環境は変わる。それは地球の歴史上、何度も起こっていることであって、今回が初めてではない。
変化が急激という指摘もあるが、縄文時代の温暖化もわりと急激だったといわれ、その後の寒冷化も急激だった。中世の小氷期(14世紀半ばから19世紀半ば)も、変化は急激だった。ときに地球環境は激変する。

「脱炭素社会」の理念を否定する気はない。
空気はクリーンな方が、いいに決まっている。
だが、問題の本質はそこじゃない。
何度も書いているが……

問題の本質は、人口が多すぎることである。

エネルギー消費量が多いのは、消費する人口が多いからだ。
多くの人口を食わせるために、多くの資源や食糧が必要なのだ。
Nスペの次のテーマは食糧問題になっているが、これも多すぎる人口が問題の本質だ。

つまるところ、温暖化問題を解決するには、人口をいかに減らし、適正人口にするかだ。
そのことを指摘する人は少ない。
産業革命以前を基準にするのなら、適正人口は現在の10分の1となる。
人口が増え続ける限り、問題は悪化していく。

2050年に排出炭素ゼロを掲げているが、現在の国のリーダーたちは生きていない。自分が死んだあとのことを約束しても、責任を取る必要がないのだからなんとでもいえる。
政治的なパフォーマンスにしか見えない。

グリーンディールというのも、聞こえはいいが、ようするに儲け話ではないか?
経済的損得勘定が絡むと、儲からなくなったら誰もやろうとはしなくなる。
いずれ破綻してしまう可能性が高いように思う。

 

諌山 裕

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