昨晩放送されたNHKドラマの「ストレンジャー~上海の芥川龍之介~」は、かなりの異色作だった。
およそNHKらしからぬ作品だ。
100年前の中国をリアルに再現していた。
松田龍平さん主演「ストレンジャー~上海の芥川龍之介~」A Stranger in Shanghai おもな出演者紹介! | お知らせ | NHKドラマ
1921(大正10)年 特派員・芥川龍之介、激動の上海へ― 芥川が克明に活写した100年前の中国を8Kで映像化 日本有数の知性と巨龍・中国、20世紀史に刻まれた知られざる魂の交流!
芥川を演じた松田龍平の演技には疑問符がつくが、中国で撮影された映像はリアルだったし、シナリオはそこまで踏み込むのか?…というくらい攻めていた。
控え目ではあるが妖艶なベッドシーンは出てくるし、娼婦とのシーンも出てくる。
NHKはお色気シーンは避ける傾向にあると思うが、かなりギリギリまで出していた感じ。
リンチや暴動シーンでは生々しく血を流すし、あの時代の混沌とした猥雑感や退廃感を表現していた。
これ、NHKだよね?
子供には見せられないR15指定が必要なドラマだと思う。
舞台は100年前の上海だが、どこか現在の中国に通じるものがある。
別の番組で天安門事件を取り上げていたが、それと関連して香港での騒動に絡めていた。
中国の転換点となった時代が、100年後の現在にも訪れている……というようなメッセージとも受け取れる。
中国で撮影したという本作だが、中国側がよく許可したなと思う。
中国共産党にとって、あまり触れられたくない過去のひとつだろうからだ。
オリンピックの近代史を題材にした大河ドラマが不調のようだが、近代史を舞台にするのならこういう切り口があるではないか……というドラマだ。
また、中国側の俳優の存在感が素晴らしかった。
松田龍平はそれに負けていたのが、疑問符がつく一因でもある。
男娼のルールーを演じた薛薛(シュエシュエと読むのかな?)が光っていて、松田龍平を食っていた。
宣伝文句に「8Kで映像化」とあるのだが、一般の視聴者には縁のない話なので、それを売りにしても意味がない。うちのテレビは4Kチューナーのない4Kテレビではあるが、BSの4K・8Kを見るのはハードルが高い。
オンデマンドなら4K配信も可能だろうが、地上波放送では4Kにもできない。
動画配信では4Kが当たり前になりつつあるので、地上波が4Kに対応できないのは時代遅れにもなっている。設備投資が大変なのはわかるが、テレビ離れがいわれているのに、テレビ局(特に民放)自体が時代遅れになっているのではしょうがない。
ともあれ、このドラマはいろんな意味で異色であり怪作だ。
シリーズ化は難しいかもしれないが、もっと見てみたいと思わせる作品だった。