地下鉄のトンネル内でもケータイがつながるようになったというニュース。
しかし、このサービスには矛盾を感じる。
走行中の地下鉄で携帯電話が利用可能に、路線は順次拡大予定 – デジタル – 日経トレンディネット
2012年3月30日より、東京都交通局(都営地下鉄)と東京メトロの一部区間において、走行中の列車内で携帯電話サービスが利用できるようになった。これにより、駅間のトンネル内でも途切れることなく通信できるようになるわけだ。
利用できるのは、NTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクモバイル、イー・アクセス(イー・モバイル)の携帯電話サービス。トンネル内に携帯電話のアンテナを設置しているため、利用可能な区間を通過するどの列車内からでも通信できる。
(中略)
駅間を走行中の車内でも通信が可能になるわけだが、各社では電車内での利用について「通話を控える」「優先席付近では携帯電話の電源を切る」など、これまでと同様に利用時のマナーを守るよう呼びかけている。
現状でも「マナー」を守っている人が、どれだけいるのか疑問(^_^)
ケータイが普及し始めた当初は、電車内において大声でケータイを使っている人もいたが、それは少なくなった。というより、ケータイの使われ方が、メールやネットに変わっただけだ。
むしろ、年配の人がケータイで電話していることの方が多い。
ケータイの使われ方に、「最近の若い者は……」と揶揄された時期もあったが、現在は「最近の年配者は……」である。
優先席付近でケータイの電源を切る人がいるだろうか?
十中八九、いない。
私も切ったことがない。
電源を切る理由に、ペースメーカーへの影響が挙げられていたが、現在ではその注意書きも姿を消した。これについては以前にも書いたが、ケータイの電波が影響を及ぼすのは、最大でも30センチである。事実上、ケータイでペースメーカーがトラブルを起こした事例は報告されていない。
飛行機の搭乗時にもケータイの電源を切るようにいわれるが、これまた過剰な予防措置であって、ケータイの微弱な電波で影響を受けるような機器では、まともな運用はできない。
飛行機は東京タワーやスカイツリーの上は飛べないことになってしまう。テレビの電波塔からは、10kW~100kWの電波が出ている。ケータイの電波出力は200mW~800mWである。m(ミリ)とk(キロ)の違いがある。単位を同じにすれば、電波塔が10000~100000W、ケータイが0.2~0.8Wだ。
電波は距離の二乗に反比例して減衰するので、30センチの距離での影響と1メートル距離での影響は、約10分の1になっている。
飛行機自体からも無線通信として電波を発しているのだし、そっちの方の出力の方が大きい。それでも影響しないのはシールドしているからだ。そのシールドをスルーするケータイの電波などありえない。
海外の航空会社では、機内からケータイを使えるようにしているし、ネットに接続するサービスも展開している。
マナーとして守らせたいのであれば、使えないようにするのが最善の策だ。ケータイを使えるようにするのではなく、むしろ、電車をシールドして電波を遮断するのが鉄道会社のすることではないのか? マナーを守ることが最優先課題ならね。
今までは使えなかったから、地下鉄ではケータイを手にしている人は少なかったが、これからは増えるのだろう。
本末転倒だ。
結局のところ、マナーを守らせるよりも、ケータイを使わせることを優先したということだろう。
マナーという曖昧な定義が問題だ。
罰則規定のあるルールにしてしまえば、守るようになるかもしれない。その場合、「優先席付近」という曖昧な定義ではなく、禁止エリアに線引きして、「この中は禁止」とすべきだけどね。