夢、あるいは理想のエネルギー源として考えられ、実験されている核融合炉だが、実用的な技術になるのはまだまだ先のようだ。
技術的な問題だけでなく、コストがかかりすぎるのも一因になっている。それに比べると、水力発電、火力発電、太陽光発電、風力発電の方が低コストだ。原子力発電は放射性廃棄物の問題を棚上げにしていて、半減期が数万年にもなる廃棄物の管理コストはツケ払いであり、厳密なコスト計算は成り立たない。
核融合の方法はいくつかあり、磁気閉じ込め方式のITER(イーター)についてのニュース。
核融合炉ITERの稼働は34年に 9年延期、費用は8700億円増:朝日新聞デジタル
日本も参加する国際熱核融合実験炉「ITER(イーター)」計画について、2025年としている実験開始の時期が9年延び、34年にずれこむ見通しとなった。ITER機構が3日、発表した。
費用は50億ユーロ(8700億円)上ぶれする見込み。文部科学省は10日に専門家会議を開き、見直しの妥当性や追加の費用負担について議論に入る。
核融合炉は次世代のエネルギーとして各国で研究開発が進む。日米欧など7カ国・地域が参加するITERは、07年に仏南部で建設が始まったが、資金不足などで稼働開始時期は延期を繰り返してきた。来年までに予定されていた費用は約200億ユーロ(3兆4800億円)。日本は1割ほどを負担する見通しだった。
資金不足が計画の遅れになっているというが、これは今後も続きそうだ。9年後には、さらに延期……なんてことになりそう。
ITERは実験炉なので発電はしないのだが、核融合発電としての実用炉のイメージは以下のようなものになるという。
「地上の太陽」の実現は? 核融合開発の国際競争激化、日本も挑戦:朝日新聞デジタル
発電部分については、火力発電と同じで発生する熱で水を加熱して水蒸気にしてタービンを回す。その熱源が石炭や石油か、核融合かの違い。そこのところが古典的なんだよね。ソーラーパネルは光エネルギーを電気エネルギーに直接的に変換するが、他の発電方法はタービンを回さなくてはならない。
実験炉では、二重水素(D)と三重水素(T)を核融合(D-T反応)してヘリウムを作り出す。この三重水素は、福島の原発事故後に問題となっている廃水に含まれるトリチウムのことだ。つまり、放射性物質だということ。
Yahoo!ニュースに転載されたこのニュースについてコメントで、原子力発電と混同して放射能汚染を心配する書き込みがあった(現在は削除されている)。ウランやプルトニウムを使う核分裂のように、放射性廃棄物を大量に出しはしないのでクリーンだといえるが、厳密にいうと放射性物質は副産物として出てくる。
それに関する記事が以下。
やはり世界最大級の核融合実験施設が,フランス南部カダラッシュ村の近くに140億ドルを投じて建設されている。国際熱核融合実験炉ITER(イーター)という設備で,レーザーで圧縮するのではなく,超電導磁石で作り出した磁場によって水素同位体を保持し,1億5000万℃の高温に加熱する。
こちらの実験も,投入分を上回るエネルギーを得る計画。さらに,断続的にエネルギーを生むレーザー方式とは違って,磁気閉じ込め方式ならプラズマを数十秒,うまくすれば数百秒にわたって維持できるとみられ,エネルギーを連続的に得られることになる。
これが達成されると,核融合研究の大きな節目となるだろう。しかし,この点火はほんの序の口にすぎない。
研究者の間では,核融合発電所の建設と運転は,核融合の火の玉を作り出すという物理的課題よりもずっと困難だろうという認識が広がりつつある。実用的な核融合炉を作るには,何百万度もの高温に何年間も連続して耐えられる材料が必要になる。しかも,高エネルギーの核子が常に衝突するので,通常の材料は脆くなるし放射能を帯びてしまう。さらに,一部の核融合燃料を複雑な増殖プロセスによって生産する必要もある。
下線部分のようなこと。
実験炉はごく短時間(数秒から数十秒)の核融合反応ができれば成功だが、実用的な核融合発電は常に稼働し続けなければならないので、設備の耐久性が求められる。それを可能にする炉の材料がないのが現状。こっちの技術的問題の方が難問のように思う。
未来のエネルギー源としては、太陽電池の変換効率が80%以上(現在は市販品で約20%)になるとか、温度差を利用する熱電池の変換効率を高めるとか、そっちの方が現実的な気がする。ちなみに、火力発電は40〜43%、原発は約33%の変換効率。
核融合技術が絶対的に必要になるのは、未来の宇宙船のエンジンとしてだろう。火星まで行くにしても、化学燃料ロケットではノロノロすぎる。もっと莫大なエネルギーを生み出す高出力のエンジンが必要であり、それができるのは核融合だからだ。
それはまた、夢の夢……(^_^)b