メタバースイベント成功に必要な「ならでは」の価値とは?

 メタバースの実用性に向けて、いろいろと実証実験がされているようだ。
 以下のレポートも、そのひとつ。

 この中でも、VRゴーグル酔いの問題が指摘されている。
 VRゴーグルは、単にゴーグルと呼んだり、ヘッドセットとか、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)とか、製品名のオキュラスと呼ぶなど、通名が統一されていないのも問題かな。たとえば、マウスはメーカーが違ってもマウスだし、スマホやタブレットもそう。呼び名の統一は必要だと思う。

メタバースイベント成功に必要な「ならでは」の価値、PwCの調査で浮き彫りに | 日経クロステック(xTECH)

メタバースイベントの様子

アンケート調査の結果を見ていこう。まず、メタバース空間への没入感を深める機器として一般的に利用されるVR(仮想現実)ゴーグルの着用あり・なしの影響について調べた。イベント内で社内戦略についての説明を受けた際の結果を見ると、VRゴーグルを着用して参加した社員が「非常に理解が深まった」「理解が深まった」と答えた割合は71.4%だった。一方、着用せずに参加した社員が同様の回答をした割合は54.2%となり、VRゴーグルの装着者のほうが20ポイント近く理解度が高かった。

 この結果に対して小林ディレクターは「オンラインイベントだと何か他のことをしながら視聴する人が増えてしまう。VRゴーグルを着用すると他のことができないため、目の前に映し出されている映像や音声に集中できる」と理由を語る。

 一方、VRゴーグルを着用するに当たり、課題も見られた。社員の声には、VRゴーグルを着用しているとメモを取ることや他のデバイスで調べものをすることができない、機器のセットアップに関して、紙のマニュアルを見ながらVRゴーグルを着けたり外したりして設定することが煩わしいなどがあった。また、VRゴーグルを使った社員の25.6%がVR酔いや頭痛を体験した。複数デバイスの併用が必須だと考えられる。

(中略)

今回のイベント参加者は約1500人だった。VRゴーグルを使用し講演に参加した社員を対象に、今回の体験とこれまでの体験を比較した評価を聞いたところ「リアル」の満足度が38.3%と一番良く、「VR」(メタバース)が10.9%、「VRでないオンライン」が6.3%と続いた。この結果によると、VRはリアルに比べて分が悪いようだ。

 ……ということだが、この記事は有料記事なので2ページ目は見られず。
 そこで、元のレポートPDFを参照する。

大規模メタバース社内イベント実証実験

VRゴーグルのセットアップに約半数のユーザーが不満を持つ
ゴーグルのセットアップに関しては、現状複数の課題が存在します。VRゴーグルに最適化されていないIDやパスワードの入力フォームとなっており、画面上のソフトウェアキーボードを用いて入力する必要があります。パスワードがパスワードマネジャーなどで管理されている場合や、初期パスワードが通知されるようなケースでは、「ゴーグルを外してパスワードを見て、再びゴーグルを装着して……」といった動きをしなければならないでしょう。また、セットアップ自体の長さや手間も障壁だと答えた社員が多く、約半数の46%が「設定するものが多く時間がかかった」と答えており、また31%が「操作の仕方や設定の方法が分かりにくかった」と回答しました。本件については、詳細なマニュアルが提供されていたものの、特にVRゴーグルをつけながらも、マニュアルはそれを外して参照しなければならないという不便さがあり、これをゴーグルの中にインストラクションとして取り込みゴーグルのつけ外しが不要になれば、体験は変わるのではないかと想定されます。

SNSアカウントとの紐づけが、セキュリティ上の不安になる
セットアップにおいて、個人のSNSアカウントとの紐づけに伴う、プライバシー関連の不安について、「セキュリティ上の不安」を挙げた社員が約25%いました。こちらについては、今後プラットフォーム側で機能アップデートがあり、個人のSNSアカウントではない、専用のアカウントで使えるようになるといわれています。

(中略)

企画に関する課題
 社内メタバースイベントを初めて企画するというチャレンジでしたが、5カ月弱で企画から開催までを行い、一定の成果を収めることができたと考えています。一方、メタバースの特性や、潜在能力などを企画に盛り込み切れなかったという反省点もあります。
 具体的には、メタバースならではの体験というよりも「オンラインの延長」として設計してしまった点といえますが、今後、今回の結果を踏まえて改善ができるものと考えています。

 ということで、いろいろと問題点が挙げられている。
 まだ馴染みがないから戸惑うのは当然なのだが、メタバース環境を提供する側もベースの部分が定まっていないから、実用部分での混乱が生じているように思う。

 VRゴーグルを使うのに、マニュアルをいちいち見ながらでないと使い方がわからないというのは、普及の足枷になりそう。道具には使い方というのはあるのだが、スマホを買ってマニュアルを見ながら使う人は少ないと思う。とりあえずポチポチいじってれば、なんとなく使い方がわかるのがスマホの簡単さだろう。

 昔のPCは、それこそ使うためのセッティングからして難解だったのだが、最近のPCは電源入れてネットにつなぐためのケーブルを挿せば、半自動的にセットアップしてくれる。VRゴーグルも電源を入れれば、手間をかけずに接続できるようにしないとね。

 こういう問題は、いつか来た道で、パーソナルコンピュータと呼ばれていた時代(1980年代)を彷彿とさせる。パソコンと略称されるのはもっとあとで、現在ではPCと呼称されるようになった。
 プラグ・アンド・プレイ(「差し込んで使う」という意味。 パソコンに周辺機器や拡張カードを接続すると、OSが自動的に必要な設定を行う仕組みのこと)が必要なことは、過去の教訓から自明のことなのだから、製品を作る側がもっと考えなきゃいけない。

 「リアル」の満足度が38.3%と一番良く、「VR」(メタバース)が10.9%、「VRでないオンライン」が6.3%……というのは、当然の結果でもあって、リアルに勝るものは現時点ではない。というのも、現状のメタバースは限定的な視覚と聴覚の情報だけであり、しかもチープな世界観だからだ。リアルと区別ができないほどのメタバースになるには、SAO(ソードアート・オンライン)でいうところのフルダイブができるような技術革新が必要。

 「メタバースならではの体験」とは、なんなのか。
 可能なことは限られているので、それをどういう形で実現するかが課題だね。

諌山 裕

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