バーチャルなメタバースでも、リアルな社会問題が自動的に組み込まれる。
その典型のひとつが、ハラスメント問題だろう。
それについての調査報告の記事。
メタバースでのハラスメントに関する実態が明らかに 世界初の大規模調査レポート「メタバースでのハラスメント」公開|Real Sound|リアルサウンド テック
スイスの人類学者「ミラ(リュドミラ・ブレディキナ)」とメタバース文化エバンジェリスト「バーチャル美少女ねむ」は11月8日、「メタバースでのハラスメント」に関するレポートを公開した。
同レポートは急速なユーザー数の増加により注目が集まる仮想空間「メタバース」でのハラスメントの実態を明らかにするため、全世界のソーシャルVRユーザーを対象に行った大規模調査への回答約900件を分析したもの。VRならではのハラスメントの種類や強度・経験率・物理世界とメタバース双方の生活に与える影響、そして法律やプラットフォームへのユーザー要望等が克明にまとめられている。
(中略)
性的ハラスメントが最も多く、女性型アバターを使用している男性も被害に遭いやすくなるなど、メタバース特有の特徴も見られている。程度としては「軽い」「中程度」がほとんどだが、状況やユーザーの特性(セクシャリティ・マイノリティなど)によっては「極めて重大」なものにもなりうるとのこと。
いまだ初期段階のメタバースでも、これほどハラスメントが横行しているとなると、この先どうなるのか想像するだけで怖い。ハラスメントを受ける人の、精神的ダメージは大きなものになりそうだ。
特徴的なのは、物理男性(この呼び方が新しい)はアバターでは女性型を選ぶ割合が多いという点。テキストベースのSNSや掲示板等でも同様の傾向にあり、ネカマ(死語?)はリアルではない環境だから蔓延るのだろう。その心理は、女性への変身願望だけでなく、女性アバターに接近しやすいから女性を偽装するという性的欲求があると推察できる。
アバターは仮面であり、リアルの自分を隠せるものだ。仮想の世界で仮想の自分を演じるのは、ひとつの快感でもある。
たいていは美形(かわいい)のキャラなので、それが性的なアイコンにもなっている。ザッカーバーグがやろうとしているような、リアルな自分を再現するリアル系アバターだと、メタバースの魅力は薄れてしまう。
結局のところ、リアル世界の欲求や衝動がメタバースにも反映されるので、メタバースは理想郷にはなりえない。むしろ、仮面と匿名性がネガティブな面を助長するように思う。
かといって、本名使用、本人アバター使用を義務づけたりすると、メタバースの利用は進まなくなる可能性もある。
嘘の世界は、嘘を身にまとうから成立するともいえる。
メタバースが浸透していくとしたら、メタバース犯罪が社会問題になるのは必然だ。なんらかの規制や制約は必要になるのかもしれない。