メタバース関連のニュースは、ますますネガティブ度が増している。どうやら、期待したほど面白い(儲かる)展開にはなりそうにない……と思われ始めているようだ。
 VRを使わないメタバースの方向に進みそうな予感。

メタバースにVRは必要ない? 「没入感のある体験」に人々が魅力を感じない理由 | WIRED.jp

メタ・プラットフォームズが新型VRヘッドセットを投入し、メタバース事業を加速させている。だが、多くのユーザーはメタバースの体験にVRが欠かせないとは考えていないのではないか──。『WIRED』エディター・アット・ラージ(編集主幹)のスティーヴン・レヴィによる考察。

テクノロジーの世界で最も“高価”なアルファベット3文字を挙げるとしたら、「P・R・O」だろう。この3文字がついた製品が発売されると、財布は大打撃を受けることになる。

(中略)

これまでザッカーバーグは、人々が交流する上でVRが当たり前の方法になる運命であるとしつこく主張してきた。一方でソーシャルアプリにはネットワーク効果が重要であることを、誰よりも知っている。仲間と一緒に遊ぶためにVR機材を買っても、友人ももっていなければ意味がない。

(中略)

その体験は「人々の互いにつながる能力を一段階上げるものです」と、シャーは言う。しかし、ウェブブラウザーやスマートフォンには没入的な体験をもたらすVRディスプレイがないので、他人とつながる能力は変わらない。そしてMeta Questを装着したユーザーは“ファーストクラス”の体験を得られるが、ウェブ経由のユーザーは質の低い体験しか得られないのだ。

(中略)

「人々はヘッドセットを装着することに抵抗がありました」と、アガラワラは説明する。ハードウェアを所有していても会議のときに手元になかったり、設定に手間取っていら立ったりする人がいたのだ。Zoomや「Microsoft Teams」で会議をするほうが、ずっと簡単だったのである。

(中略)

つまり、メタバースにVRは必要ない、ということなのだろうか。ヘッドセットをもっていても、現在のテクノロジーは人々を引きつけていない。それにどうやら、メタの社内でVRの仕事に携わっている人たちでさえも同じようだ。

 ヘッドセットが高価すぎるのが、最大の難点だよね。比較的安い「PICO 4 256GB VR ヘッドセット 」で、約6万円だからね。ヘッドセット単体で使えるものもあるが、母艦となるPCはあったほうがいいので、快適な環境を構築するにはそれなりにコストがかかる。
 前にも書いたが、貧乏人には買えないデバイスだ。

 ヘッドセットの利点は没入感にあるとされているが、100〜300インチの大画面でも没入感は増すんだよね。最大300インチ表示の4K対応プロジェクターであれば、3万円前後から買える。壁一面を画面にすれば、なかなかの迫力だと思う。同じ引きこもり趣味なら、ヘッドセットよりも大画面の方がストレスが少なくてよさそう。

 記事にあるように、「メタバースにVRは必要ない」ということになれば、メタバースの定義はなんなのかの再定義が必要かもね。

 Wikipediaによれば

現在メタバースの定義として様々なものが提案されているが、未だ統一した解釈は存在しない。メタバース解説書『メタバース進化論』(技術評論社、2022)では「空間性」「自己同一性」「大規模同時接続性」「創造性」「経済性」「アクセス性」「没入性」の七要件を満たしたオンラインの仮想空間として定義されている。

 ここに挙げられている7要件のうち、「没入性」くらいしか実現していないように思う。それはヘッドセットありきの前提だ。そのほかの要素は、なくはないが微々たるものだろう。
 普通のテレビでするプレイステーション(PS)のゲームの方が、要件を満たすスコアは高いのではないか。とするならば、PSのゲームはメタバースと呼ぶことも可能だ。

 ゲームの発展型としてのメタバースの方が、方向性としては正しい気がする。
 コミュニケーションツールとしてのメタバースの利用は、あまり普及しないように思う。既存のSNSがそうであるように、簡単かつ安価でないと、誰もが使う(使える)メタバースにはならない。スマホ自体は高価だが、スマホはいろいろなことができる総合デバイスであり、SNSはそのうちのひとつにすぎない。TwitterやFacebookは無料のアプリだから爆発的に普及したのであって、ヘッドセットが6万〜20万円超もするのであれば、簡単かつ安価とはいえない。

 ヘッドセットそのものは、ディスプレイのひとつと考えれば、映画を見るため、ゲームをするために買う人は少なからずいるだろう。メタバースのためのヘッドセットである必要はない。メタバースが流行らなくても、ディスプレイとしてのヘッドセットは、そこそこの需用はあると思われる。

 ヘッドセット需用が高まれば、テレビやプロジェクターのようにコモディティ化されて、より安価なものが出てくるのは必然だ。Meta Quest 2の価格設定では、ハードの販売面でも負け組になってしまう。

 日本国内では、ちょっとしたメタバース・バブルになっているみたいで、参入企業が増えている。しかし、アメリカではすでにブームは冷めつつあるようだ。
 数年後、メタバースブームがどうなっているのか、興味津々。
 あまりバラ色ではなそうだけど。

諌山 裕

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