またまた今日もメタバース関連の記事から。ここ数日、メタバース関連の記事が頻繁に発信されているのだが、その多くは批判的なものになってっている。なにやら不穏な空気を感じるのだが……。

マーク・ザッカーバーグはもう辞めるべきだ | Business Insider Japan

で、メタはこのカンファレンスで何を発表したか。ただでさえインターネット疲れをしている私たちを、それでも1500ドルのヘッドセットを買ってザッカーバーグの言うメタバースにコネクトする価値があると説得するために何を発表したのかというと——足! 足のあるアバターだ!

そう、彼らの一大発表とは何のことはない、それまで胴体だけで浮遊することしかできなかった同社のメタバースプラットフォームのアバターに足が付いた、というものだった。

(中略)

メタは2021年にメタバースの開発に100億ドル(約1兆4500億円、1ドル=145円換算)を費やしたが、その成果はほとんど出ていない。2022年2月にメタが発表したところでは、同社のメタバース「Horizon Worlds」にログインしたユーザーは月間30万人しかおらず、Facebookの月間アクティブユーザー数29億人とは比べるべくもない。

(中略)

ニューヨーク・タイムズのある記事によると、昔の人形のようなメタバース・アバターを茶化されて以来、ザッカーバーグは新たなアバターをつくることに取り憑かれ、グラフィックアーティストに命じて1カ月で40通りの彼の顔を描かせ、そのうちの1つをようやく承認したという。社員たちが同紙に語ったところによると、彼らは当初メタバースプロジェクトのことをMMH、つまり「Make Mark Happy(マークを喜ばせる)」プロジェクトと呼んでいたという。

(中略)

ザッカーバーグがメタバースという構想を広げていきたいのであれば、もうメタの外でやるしかない。

メタバースに関するザッカーバーグの諸々の話から想像するに、彼はFacebookとInstagramを救うことはできないと考え、見殺しにすることにした可能性がある。

 かつては時代の寵児として扱われていたザッカーバーグだが、ここまで嫌われる存在になっているとはね。カリスマ性の輝きが失われたということか。

マーク・ザッカーバーグのアバター(Watch Mark Zuckerberg Reveal Next-Gen Avatars With Legs!より ※Archive

 この動画の中で、足が付いたことの技術的な成果を熱弁しているのだが、なんだか滑稽に思える(笑)。たしかに既存の他社のアバターに比べて、よりリアルさが増しているのは認めるが、その技術的な背景はともかく、ユーザーにとっては「そんなの当たり前のことじゃん」という話なんだよね。
 来年にはもっとバージョンアップしたアバターを提供するといっているのだが、メタバースの本質はそこじゃない気がする。
 メタバースでなにをするのか、なにができるのか、私たちの生活がどう変化し、どういうメリットがあるのか……というビジョンが見えてこない。足が付いて、ピョンピョン跳びはねることで、人々が幸せになれるのか?

 かつて、ジョブズがiPhoneを発表したときのスピーチがある。

スティーブ・ジョブズの名プレゼン「iPhone発表」から一部書き起こし | 書き起こし.com

2年半この日を待ち続けていた。
数年に一度、全てを変えてしまう新製品が現れる。
それを一度でも成し遂げることができれば幸運だが、アップルは幾度かの機会に恵まれた。

1984年マックを発表。PC業界全体を変えてしまった。
2001初代iPod。音楽の聴き方だけでなく、音楽業界全体を変えた。
本日、革命的な新製品を3つ発表します。

1つめ。ワイド画面、タッチ操作のiPod。
2つめ。革命的携帯電話。
3つめ。画期的ネット通信機器。
3つです。タッチ操作iPod、革命的携帯電話、画期的ネット通信機器。

iPod、電話、画期的ネット通信機器。iPod、電話、お分かりですね?

独立した3つの機器ではなく、1つなのです。

名前は、iPhone。
アップルが電話を再発明します。

これです。

(会場から笑い)

冗談。一応ここに実物があるけど。

さて、まずはスマートフォンとは何かについて話しましょう。
一般的には電話とメールとネット、そしてキーボード。
しかしこれらはあまりスマートではない。そして使いにくい。
縦が「賢さ軸」横が「使いやすさ軸」とすると、普通のケータイはここ。

賢くないし、使いにくい。

スマートフォンは賢いが、より使いにくい。基本操作を覚えるだけでも大変だ。

我々はそんなのはやりたくない。
我々が望んでいるのは、どんなケータイより賢く、超カンタンに使えるもの。
これが、iPhone。

電話を再発明します。

はじめに、革命的ユーザーインターフェース。長年の研究と開発の成果であり、ハードとソフトの相互作用。

なぜ革命が必要か。
ここに4種類のスマートフォンがあります。これらが抱える問題は、下半分にあります。
まさにここ。

プラスチックで固定されたキーボードが付いていて、どのアプリでもそれを使う。アプリによって最適なボタン配置は異なるのに、すでに出荷された製品に新しいボタンは追加できない。
さて、どうする?
これではだめだ。ボタンは変更できないから。より良いアイデアが浮かんでも変えることができない。どう解決する?

我々は解決しました。20年前にマックが解決していた、「ビットマップ画面にすべてのインターフェースを表示」、「ポインティングデバイスとしてマウス」これをモバイル機器に当てはめるなら、ボタンをすべて取っ払い、巨大な画面だけにする。巨大な画面。

どう操作する?マウスは無理だ。
スタイラス(タッチペン)か?
ボツだ。(会場から笑い)
誰がスタイラスを望む?すぐなくしそうだ。
スタイラスはやめておこう。

皆が生まれながらに持つ世界最高のデバイス、指だ。

新技術を開発しました。名はマルチタッチ。魔法のように機能する。
スタイラスいらず。極めて高い精度。ミスタッチには反応しない。

複数の指を感知。特許も取得済み!(会場から笑い)

 「電話を再発明する」といった言葉通りに、その後のスマホのスタンダードを作った。そこには明確なビジョンがあった。
 ザッカーバーグがメタバースを再発明しているか?……というと、まだしていない。グラフィック的な面は1年前より進歩しているが、以前からあったセカンドライフよりも見た目がよくなった程度の変化に過ぎない。
 人々がメタバースを必要とする理由が乏しい。スマホは、いまや必需品になっているが、メタバースは必需品になるかというと、現状ではそうはなりそうにない。娯楽のひとつにはなるかもしれないが、それはたくさんある娯楽の選択肢に加わるだけだろう。リモートワークが増えて、仕事でアバターを使う人もいるが、広く定着するかどうかは疑問。

 「メタバースで働いてみた実験結果は」で取り上げたが、長時間の使用では大きなストレスがかかる報告もあり、メタバースよりもリアルに対面する方が結局は健康的だったりする。コロナ禍でリモートワークが加速したのだが、リアルで他人と接する機会が減少すると、孤立感や孤独感が増し、精神的な健全性を保てなくなる事例も起きている。
 コロナ禍が落ち着いたら、再びオフィスに回帰する働き方になるように思う。

 メタバースというかサイバースペースの理想型は、「ソードアート・オンライン」でいうところの「フルダイブ」だろう。
 全身の感覚をすべてアバターに再現する技術。そんな技術は、50年後とか100年後の未来技術だ。そういう未来のイメージが先行しているので、現状のメタバースがあまりにも稚拙に見えてしまう。

 こうなればメタバースは楽しいかもしれないという動画がある。

 装着するゴーグルが、このくらいコンパクトでスマートであれば、メタバースは身近になるかもしれない。
 ゲーム的な面白さを追求するとしたら、この動画で表現されているような世界観なら、多くの人を魅了する可能性がある。
 これもひとつの理想型だね。

 いずれにしても現状のメタバースは、ハードとしてのゴーグルも、メタバースの世界観も技術的にまだまだ未熟。そこを早期に解決しないと、メジャーに普及するのは難しいように思う。

諌山 裕

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