ある言葉を使うときに、その使い方で侮蔑や差別をすることがある。
 言葉の使い方とは、気配りでもあり、言葉に対するバランス感覚でもある。
 言葉を使う人の意識が、そこにどう働いているかだと思う。

 次の記事は、その典型だろう。

「銀」太田、無名の会社員にいきなり負けた!…フェンシング(スポーツ報知) – Yahoo!ニュース

 「強い選手なので、波乱というわけではない」潔く完敗を認めたが、相手はジュニアの日本代表歴はあっても、無名の剣士。本来の15点先取とは違う試合方式で、ニートのメダリストは、会社員選手に屈した。

 「ニート」という言葉は、社会的に特定の条件下の人たちを指す言葉として使われだしたが、人をあるカテゴリ中に入れてしまうというのは、そもそも差別の始まりだろう。
 本来の言葉の意味は違っていた。

 ニート(NEET)とは英国政府が労働政策上の人口の分類として定義した言葉で「Not currently engaged in Employment, Education or Training」の略語であり、日本語訳は「教育を受けておらず、労働をしておらず、職業訓練もしていない」となる。
(中略)
 非常に誤用の多い言葉である。そもそもニートとは「○○をしていない」という「状態」を現すにすぎない言葉だったが、その語義はマスメディアによって歪曲化され、現在では「○○をする意欲が無い」という意味で使われることが一般的となっている。
(ウィキペディアより)

 記事では、「ニート」と「会社員」を対比させていて、ニートの方が下位にあるという意識で書かれている。
 この記事を書いた人は、冗談のつもりかもしれないが、バカにしていることは読み取れる。執筆者のニートに対する考えかたが反映されているのだろう。
 こうした表現は、マスコミによくみられる。

 マスコミは人々を分類したがる。こういう人たちは○○○、こんなことをする人たちは○○○と、カテゴリにはめる方が物事を単純化できてしまうからだ。
 「最近の若者は」という言い方も、そのひとつだ。犯罪発生率が低くなっているにもかかわらず、ある事件を起こしたあるカテゴリの人たちを大きく取り上げることで、あたかもそれが全体像であるかのように誇大妄想化する。

 スポーツの報道に、ニートであるか会社員であるかは関係ない。
 まったく不要な一文だ。
 マスコミが差別や格差を煽っていては、ますます問題は悪化していくだけだろう。
 それとも、スポーツ紙にそうした良識を求めるのが間違っているのだろうか?

諌山 裕

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