文科省が発表した、「22歳をピークに女性の妊娠のしやすさが低下」とする教材。
元ネタ→「安心して子供を産み育てられる 社会に向けて」
その根拠があやふやだと指摘されている。
文科省「22歳をピークに女性の妊娠のしやすさが低下」のグラフ、元論文と食い違い?(篠原修司) – 個人 – Yahoo!ニュース
論文には「性行為の頻度のため25歳がピーク」と記載
そもそも、掲載されているグラフは「定期的に生理があって避妊をしない女性の1回の生殖周期中における妊娠確率(fecundability)」を表したものです(グラフは孫引きされており、原典は1989年の論文)。
Fecundity and natural fertility in humans. | POPLINE.org
論文の要旨にも「妊娠確率の年齢パターンは、思春期では低レベルだが性行為の頻度によって25歳をピークに急激に上昇し、その後低下する」とあり、「女性の妊娠のしやすさ」とは別物です。
8/26時点では、まだグラフの訂正は行われていない。
▼女性の妊娠のしやすさの年齢による変化のグラフ
篠原氏の記事にもあるように、この元ネタのグラフの意味するところは、「性行為の頻度によって25歳をピークに急激に上昇し、その後低下する」ということであって、「妊娠する確率=セックス頻度」を示しているに過ぎない。
セックス頻度が減れば、そりゃ妊娠はしにくくなるさ(^_^)
にもかかわらず……
文科省:妊娠しやすさと年齢、副教材に 高校生向けに作製 – 毎日新聞
22歳をピークに女性の妊娠のしやすさが低下することを表すグラフを使い、「女性にとって妊娠に適した時期は20代。40歳を過ぎると妊娠は難しくなる」と解説。また、男性についても「年齢が高くなると精子の数や運動性が下がる」とした。不妊治療が近年増加していることや男女ともに不妊の原因になることなども記述した。教材を使用するかどうかは、各学校の判断に任される。
有村氏は「男女ともに医学的、科学的に正しい知識を得て、安全で健やかな将来設計を考えていただければありがたい」と述べた。
……などと、科学的という方便を使うのは違うだろうと思う。
高齢になると妊娠しにくくなるのは事実だが、ピークが22歳とするのは科学的とはいえない。年齢によってセックス頻度は異なるのだから、前提条件がそもそも同じじゃない。
こんなデータもある。
結婚している、交際相手がいる、セックスする相手がいる人に対して、「そのお相手との1ヶ月にどの程度セックスをしていますか?」
全体の平均回数は2.1回。年代別では20代が4.11回で最も多く、30代が2.68回、40代が1.77回、50代が1.38回、60代が0.97回となります。属性別に見ると、「交際相手と(4.1回)」「セックスフレンドと(2.9回)」に対し、「結婚相手と(1.7回)」となり、結婚するとセックス回数が減少する傾向にあります。
この2つのグラフを重ねてみると……
▼女性の妊娠のしやすさの年齢による変化とセックス頻度の関係
……となり、関連性のあることがわかる。
妊娠が可能なのは排卵日の前後数日なので、セックス頻度が減れば排卵日に重なる確率が低くなり、妊娠の可能性はグッと低くなる。
真に「妊娠のしやすさ」を科学的に論じるのならば、セックス頻度が同じカップルによる、年代別の比較が必要になる。条件が違っていれば、出てくる答えは違った意味を持つ。
女性は初潮を迎えてから、健康であれば毎月排卵していくわけだが、加齢とともに卵子も老化していく。若々しい卵子という意味では、10代後半の頃の卵子の方が妊娠には適しているともいえる。初体験年齢が下がっているとはいっても、10代で妊娠・出産をするのは経済的・社会的に困難をともなう。
「妊娠のしやすさ」という科学的根拠を求めることができるとするなら、おそらく10代後半~20代前半にピークが来るのではと思う。もし、そのような研究が出てきたら、10代後半で妊娠・出産しなさいというのだろうか?
妊娠しやすい年齢は22歳がピークだから……ではなく、25歳以上30代になっても、月に4~5回はセックスしなさい……というのが、適切な助言だろうね(^_^)。週1でセックスしていれば、月に4~5回のうち1回は排卵している時期に当たるから。もちろん、避妊していなければの話。