プラスチックごみ問題を取り上げたドキュメンタリー。
当ブログでも以前から指摘している問題だが、これは温暖化問題よりも深刻だと思う。プラスチック汚染は人々の健康に、直接的に影響をもたらすからだ。
「循環型社会の“夢”は実現するか?」 – BS世界のドキュメンタリー – NHK
世界中で急務だと言われてきた「ゴミの資源化と再利用」。循環型社会の構築が唱えられるようになって久しいが、理想はどこまで実現しているのか。世界の現状を取材した。
世界中で急務だと言われてきた「ゴミの資源化と再利用」。ゴミ処理問題が顕在化して以来、各国は“循環型社会”の実現に向けてさまざまな施策を試みているが、それらは問題を解決したと言えるだろうか。欧米やアジアでの現場取材を通して、問題解決への道筋が、これまでの予想を超えて複雑で困難であることが浮き彫りになる。
原題:The Recycling Myth(ドイツ/デンマークほか 2021年)
エコやリサイクルに関するインチキは、過去記事でも取り上げたが、相変わらずエコエコ詐欺は横行しているようだ。
日本でも行われているゴミの分別だが、ほんとうにリサイクルとして機能しているのかどうか、甚だ疑問だ。ストローをプラスチックから紙製に変えたりしているが、そんな見せかけのエコで社会は「やってる感」を演出している。
このドキュメンタリーは、多くの人が見るべきである。
脱炭素とかリサイクルとか、かけ声だけは立派だが、やってることは儲かるかどうかだ。儲からないことは、やらないんだよ。
プラスチックの分別回収に取り組んでいる、イギリスのボランティアの女性が出てきたのだが、彼女は集めたプラスチックを、せっせと回収会社に送っていた。しかし、リサイクルされるはずのプラスチックは、ブルガリアの処分場で燃やされようとしていた。
取材班がブルガリアで見つけたゴミを、ボランティア女性に見せて、これは海外に送られて処分されていたと告げる。見つかったゴミの入った箱には、差出人として彼女の名前が書かれていたのだ。
女性は「そんなバカな」と信じられない様子。
彼女は良かれと思ってやっていたことだが、実態はゴミとして輸出され、リサイクルなどされていなかった。
もはや、リサイクル詐欺である。ボランティアは詐欺に利用されただけ。
プラゴミは環境を汚染し、健康被害をもたらす。自然豊かな森や海を、プラゴミが覆い尽くす光景は、具現化した悪夢のようだ。都会で暮らす人々の周りからゴミは消えるが、そのゴミは燃やされるか別のところに捨てられる。その捨て場所に選ばれるのが、貧しい国の貧しい人々が暮らす地域だ。
やるせない……。
番組の締めくくりの言葉。
プラスチックの循環型経済なんて、とんでもない茶番です。大企業がリサイクルを約束するのは、アピールさえしておけば、使い捨てのプラスチックをこれからもどんどん生産できるからです。なぜ、そうするのか。それによって莫大な儲けが出るからです。
リサイクルは実に魅惑的な夢です。産業界はそれを語ることで、使い捨てプラスチックを生産するための言い訳にできますし、消費者もやましさから逃れて気分良くいられます。ある人は言います、問題は技術が解決する、今まで通りに暮らそう。
しかしその代償は計り知れません。
技術的に解決可能なこともあるが、それも儲かるかどうかに左右される。
結局、世界は経済で動いているから、儲けの出ない事業をする企業はない。
では、公的機関がその事業をできるのか?……というと、公的機関であっても財源がなければできないし、財源とは税金だ。国民がその負担を良しとするかどうか。
行政がリサイクル事業をするといっても、実際の仕事は下請け企業が行う。その企業がちゃんと仕事をするかどうかも疑わしい。
これでは堂々巡りだ。
人類絶滅のシナリオには、①気候変動、②核戦争、③パンデミックを挙げられることが多い。
意外な原因として、プラスチック汚染で絶滅するシナリオを加えた方がいいかもしれない。