昨晩、『竜とそばかすの姫』を観てきた。
なかなかよかった。
★5つの採点をすれば……
★★★★☆
……かな。
満点じゃない理由は後述する。
「未来のミライ」が残念な作品だったので、細田監督がどんな新作を作るのか期待は半々だった。前作では、迷いというか売れる監督になった驕りのような、よくない方向に向かっているように感じたからだ。
細田監督、お帰りなさい。
見たかった世界だった。
ちょっと感動してしまったよ。
本作は「サマーウォーズ」の12年後という設定なので、世界線のベースは同じ。そういう意味では続編ともいえる。
映画の仕掛けとしては、「サマーウォーズ」の方がよく練られているし、ストーリー的にも面白い。勢いがあり、変に媚びることもなく、シンプルで力強い作品だった。
続編的な『竜とそばかすの姫』は、原点に還る意味もあったのかもしれない。
以下、ネタバレあり。
細田監督の作品では、「家族」が重要なテーマになっている。家族のありようが作品の大黒柱でもある。
本作では、あまり幸せそうではない家族が描かれている。
そこが現代社会を映しているのかもしれないが、個人的には「サマーウォーズ」のような底抜けに明るい家族の方が好きだ。
高校生が主人公なので恋愛要素もあるが、そこは昭和を感じさせるレトロな甘酸っぱい恋愛になっている。今どきの高校生は、どんな恋愛をしているのか詳しくは知らないが、こうじゃないだろうとは思う。
本作のもう一本の大黒柱は、「歌」だ。
歌……音楽は素晴らしかった。
ここで楽曲に感動要素がなければ、映画が成立しなかっただろう。
主人公の「すず」を演じた中村佳穂さんは、オーディションで選ばれたというミュージシャン。
声優としての演技はいまいちだったが、歌は素晴らしかった。
歌は別の人が歌っているのかと思ったら、歌も彼女だった。別人だと思ってしまうほどに。
歌がふんだんに挿入されているので、ミュージックビデオのようなシーンが多い。
歌に力があると、それだけで感動しちゃうんだよね。
「マクロスF」なんかもそう。
物語世界の説明で「インターネット」という言葉が出てくる。
これに強烈な違和感を感じた。
いわゆるフルダイブ形式で仮想世界に没入するのだが、ここまで進歩したバーチャル世界になったら、もはやインターネットとはいわない。
インターネットは、テキストベースで平面ディスプレイ上の世界だよ。
呼び方は、サイバースペースとかUスペースとか何でもいいが、現実世界とは違う仮想空間であることを表す名称にした方がよかったように思う。
こういうバーチャル世界が実現するのは、50〜100年後くらいだろうからね。
時代的には現代とほぼ変わらない様子なので、普通のスマホにアプリがあって、ワイヤレスイヤホンが没入のデバイスになっている。
それ、どういうテクノロジーだよ(^_^)b
イヤホンを装着すると、ユーザーの全身をスキャンできるという、驚異の未来テクノロジー。
そこは笑っちゃったが、この作品をSFとして見ちゃいけないんだろうね。
基本的にはファンタジーであり、テクノロジーは魔法扱いなんだ。
魔法少女の変身ステッキと同じ。
あえて名前を付けるなら……テクノファンタジー、かな。
主人公のアバター(劇中ではアズ)の名前が「ベル」
そして、もうひとりの主役となる竜と対峙したときに、ダンスをするシーンがある。
あれ、これって「美女と野獣」だよね?
オマージュなんだろうけど、ほぼそのまんまんのイメージなのでパクリにも見えてしまう。
それで名前が「ベル」というわけか。
監督自身がそのことに触れていた。
細田守監督「30年かけてできた作品」現代版「美女と野獣」への思い明かす…「竜とそばかすの姫」16日公開 : スポーツ報知
1991年にアニメーターとして歩み始めて以来30年間、構想し続けていた作品がついに完成した。駆け出しの頃、ディズニーのアニメ映画「美女と野獣」(91年)に影響を受け、「本当に好きで、どうしてもあのような作品を作りたかった」と振り返る。
その気持ちはわかるが、なぞりすぎだろ(^_^)b
影響を受けることと真似することは違うと思うのだが……。
新人監督ならまだしも、もはやベテラン監督なんだし。
主人公の母は、見知らぬ子供を助けるために、増水した川で命を落とし、主人公の心に陰を落とす。
それが嫌われ者の竜を助ける動機になるという展開が、いまいちしっくりこなかった。
それ、必要か?
母の死を経験しなくても、やさしい子には育つだろうし、いじめられる子を助けることはできる。
動機付けの過去設定としては、母の死は重すぎる気がする。
6歳の頃の記憶はかなり曖昧なものになるし、それ以降は父親だけとの親子関係だから、人格形成に与えた影響は時間的にも父親の方が大きいと思う。
また、竜のオリジン(アバターの本人)に会いに行って、虐待する父親に毅然と立ち向かったときに、父親が主人公を殴ろうとしたシーンの不自然さも気になった。
主人公の気迫に恐れおののいて、あたふたと逃げてしまう父親。
暴力的な虐待親は、考えるより先に暴力を振るうものだから、ためらったりはしないし、反省なんてしない。
まして、小娘を恐れる理由もない。
あのシーンでは、主人公はボコボコに殴られてもおかしくない。
いろいろとツッコミを入れたが、それでもよい作品だと思う。
本作は、歌に救われた作品だ。
うちの妻の感想は、こうだった。
「細田監督って、クジラが好きなのね」
なるほど、『サマーウォーズ』『バケモノの子』にもクジラが出てきた。シロナガスクジラ限定のようだが。(バケモノの子は、マッコウクジラでした(^^;))
とまぁ、そんなわけで★4つの評価。