私は昔、アニメーターをやっていた(^_^;
 アニメーターといってもピンキリで、原画、動画と大別できるわけだが、動画は下請け、孫請けの制作会社がやっていることが多い。
 で、こんな記事。

アニメ産業に忍び寄る暗い影とは – ビジネススタイル – nikkei BPnet

そもそも、アニメ制作業界は、「産業」と呼べるほどの規模ではないという事実を忘れてはならない。当然、「映画産業」と呼ばれるハリウッドなどとは比較にならない規模だ。「雇用」「労働条件」など、ファンダメンタルな部分に、産業育成の焦点を当てないままでは、小規模な「映像制作の一分野」に留まったままだ。

 私がいたのは、下請けの制作会社だった。
 当時、アニメ業界のことなどあまり知らなかったため、たまたま採用してくれた会社に入ったのだ。
 だが、これが大きな間違いであることに、あとで気がついた。
 会社……といって、社員ではなかった。最低賃金の保障もなく、当然のことながら社会保険なんてのもない。給料は完全歩合で、1枚描いていくら、という世界だった。
 社員というのは名ばかりで、じつのところアルバイトと変わらないどころか、普通のアルバイト以下だった。生活の保障はまったくなかったのだ。
 もう38年前のことだが、当時の動画の単価は、1枚100円だった。
 1日に何枚描けると思うだろうか?
 最初の1ヵ月目は、アニメーター初心者ということもあって、1日15枚くらいだった。つまり、1日で1500円にしかならない。25日働いても、37500円である。
 これで生活できるわけがない!
 だが、同期に入社した人はだいたい同じくらいだった。中にはさらに少ない人もいたのだ。
 半年後には、1日30枚くらい描けるようになったが、それは1日20時間くらい描き続けての話だ。
 アニメは好きであったが、その仕事は過酷だった。
 食えない、眠れない、金がない……と、ないないづくしだったのだ。
 同期に入社した人が、次々に辞めていった。
 貧乏のどん底だった。
 貧しい生活をしていると、考え方まで貧相になった。
 みじめで、情けない気持ちが、ふつふつと心の中を満たしていた。

 私はここでなにをしているのだ?

 そう、自問自答する日々が続いた。
 私も堪えられなくなって、とうとう辞めた。
 転職のため、グラフィックデザインの会社に面接に行った。
 希望する給料は?と聞かれて、
「12万あればいいです」といった。
 相手はびっくりしていた。当時の私の年齢からいけば、20万を超えるのも当たり前だったからだ。
 私の金銭感覚は、貧乏で麻痺していた。12万という額は、それだけあれば普通に食えるという計算だったのだ。
 デザイン会社に採用されて、給料は20万円になった。アニメーターでもらっていた金額の3倍強だ。
 それはアニメーター感覚からすると、途方もない金額だったのだ。20万稼ぐのに、動画を何枚描けばいいのか?……そんな計算をしていた。
 デザインの仕事は、アニメーターに比べると「楽」だった。
 こんなに楽して給料もらってもいいのだろうか?……と思ったほどだ。
 しかも、8時間労働で帰ることができた。
 まるで世界が違う、労働環境だったのだ。

 現在は、動画でも200円になっているらしい。
 昔に比べれば倍だが、それでもまだまだ安い賃金には違いないのだ。

諌山 裕

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  • たまたま立ち寄りました!
    こんな過酷な世界があって、あのアニメが生まれてるんですね!
    勉強になりました!

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