電子ブック(電子書籍)については、これまでにも度々取り上げてきた。
その電子ブックの可能性、未来の道筋について、示唆に富んだ記事が以下。
本を売るのではなく、物語を伝えること:電子書籍ビジネスに一石を投じる「太陽系 for iPad」 (1/2) – ITmedia +D PC USER
多くの出版社は単に本を適当に選んで、それを電子書籍化していますが、これはもしかしたら間違いかもしれません。タッチプレスとファーバーは、そうではないアプローチで非常に大きな可能性を示してくれたのではないかと思います。
(中略)
日本の出版社には、なかなかデジタルを理解する人がおらず、いい電子書籍が出せていません。ファーバーには優秀な人材がいるんですね。
(中略)
ただ、ファーバーはビジネスの核は変えていません。彼らのビジネスの核は、本を出して流通することではなく、人々に科学の物語を伝えることだったのです。そんな彼らにとって、電子書籍は従来の紙に加わる新しい伝達手段の1つだと気がついたのです。
下線は私が引いた。
そこがポイントだからだ。
現状、日本の出版社の大部分がやろうとしているのは、従来の本を単純に電子化することだけ。紙を液晶画面にコピーするだけだ。
それじゃ、だめなんだよ……というのは、私の過去記事でも書いた。
成功している事例は、電子ブックならでは、もっといえばiPadならではの工夫がある。
国内で、プラットフォームや規格の乱立、既得権益をいかに温存するか……なんてことをやってる場合じゃないんだよ。
どういう電子ブックを作るか? どういうイノベーションを起こすか? そのためにはどのデバイスが適しているのか?……ということを考えなくちゃいけない。
ぐだぐだと後手に回っていると、結局、AppleやAmazonにシェアを握られてしまう。
これは、かつて通った道ではないか。
パソコンでは、OSもCPUも国産は敗退し、アメリカ製のものを使うしかなくなった。
スマホでも、OSとCPUは海外製に頼らざるを得なくなった。
根幹の部分を海外に握られてしまったがために、国産でできる部分が制約されてしまう。
電子ブックでも、同じ経過を辿りそうだ。
出版界に片足突っこんで仕事をしている身としては、「目覚めよ!」と叫びたい気持ちだ。
だが、出版の現場では、古い体質から抜け出せず、IT化は遅れている。機器やアプリケーションだけのことではなく、関わる人たちのITについての知識と技能も遅れている。
情けない話だが、この上記の記事のようなレベルに到達するのは、まだまだ先だろう。追随することすら危うい。
結局、「真似」することになってしまう。
もっと先を予見して、日本からイノベーションを起こさないといけない。
しかし……
無理なんだろうなー。