ジェフ・ベゾス氏のスペースコロニー計画

ジェフ・ベゾス氏が、月着陸船だけでなく、スペースコロニー計画もぶちあげているという記事。
目新しくはないものの、そこまでいう?……と思う。
大風呂敷を広げすぎ(^_^)。

ジェフ・ベゾス氏のスペースコロニー計画、ベースは70年代に発表の円筒コロニー – CNET Japan

 航空宇宙企業Blue Originの創業者であるBezos氏は2019年5月にワシントンDCで開催されたイベントで、人類の生活圏を地球外に拡大する計画を発表した。

「私たちが太陽系に出て行けば、人類は太陽系に1兆の人口を抱えることが可能になる。それは1000人ものモーツァルトや1000人ものアインシュタインを擁することを意味する」「これは驚異的な文明になるだろう」と同氏は述べた。

(中略)

1970年代、科学者のGerard O’Neill氏が「O’Neill Cylinder(O’Neill Colony)」(オニール・シリンダー)を提示し、構想はさらに発展した。巨大な円筒状のコロニーであるオニール・シリンダーは宇宙で回転しながら人工重力を生み出し、およそ100万人が暮らせるようになっている。

(中略)

だが未来的なスペースコロニーの実現は、まだずっと先の話になる。ワシントンDCでのイベントで、Bezos氏はスペースコロニー建設を数世代にわたって実現する構想を打ち出し、人類を未来的な生息環境へ導くのは同氏ではないと述べた。

「誰がこれを実現するのか」「私ではない。(イベント会場で)前の列に座っている若者たちの皆さん、あなたたち、そしてあなたたちの子供がこれを実現することになる」と述べた。

▼オニール型スペースコロニーは以下。

「オニール・シリンダー」Wikipediaより。

ガンダムを見てきた世代には馴染みのあるもの。
以下は、ガンダムに出てくるスペースコロニー。

劇場版 機動戦士ガンダムより

ほぼオニール型のそのまんま。
芸がないといえば芸がないのだが、ガンダム放送当時(1981年)は最先端のビジョンだったんだ。

100万人規模のスペースコロニーとなると、世田谷区(約90万人)もしくは練馬区(約72万8千人)を、そっくりそのままスペースコロニーの中に移動させるような話。

スペースコロニーを住める環境にするには、世田谷区のすべての街機能をコロニー内に持ち込む必要がある。
自然環境である空気と水はもとより、土地(土壌)、電気水道下水などの生活インフラ、移動手段としての電車や車(ここでは電気自動車)、住む家、食糧の供給のための農園や家畜、そして空気や水をろ過して再利用するための循環システムなど。

街をまるごと移動させるだけでは足りないので、足りないものは取り寄せないといけない。
そんなときはアマゾンで買う……というほど簡単ではない。
地球から資材を打ち上げるにしても、ロケットの積載量は限られているから、いったい何往復すればいいのやら……。月から材料を持ってくるというアイデアもあるが、そのためには月に恒久的な基地を建設しないといけない。

スペースコロニーの建設は、膨大なコストと時間がかかるから、おそらくビジネスとしては成立しないだろう。造ったら終わりではなく、維持費も膨大になる。
どのくらいのコストがかかるのかというと、一説には……

宇宙情報センター / SPACE INFORMATION CENTER :スペースコロニー

米国航空宇宙局(NASA)は1970年代に、この考えに沿ったスペースコロニーの構想案を作成しました。それによると、コロニー上方にある大反射鏡で太陽光が反射されてコロニー内に差し込みます。居住区はドーナツ型になっていて、その中が居住区域、農業区域などに区分され、生活に必要な動植物の飼育、栽培がおこなわれます。総重量は推定約1,000万tに達するものです。この計画を実現するには、提案当時の試算でも、約20年の歳月と約2,500億ドル(当時約60兆円)の費用がかかるとされました。

……と、これは円筒型ではなくドーナツ型で10万人規模のスペースコロニーの場合。居住人口は10分の1なので、100万人規模だったら単純に10倍しても600兆円になる。1970年代の試算を、現在の状況から試算し直せば、物価は10倍くらいにはなっているので、6000兆円レベルのコストがかかると予想できる。

仮に、スペースコロニーを造って、その中の家を不動産として売りに出すとする。
全体で6000兆円の物件を100万人で割れば、60億円になる。ハリウッドの大豪邸でもこんなに高くない。しかし、大富豪なら買うかもしれない。

マンションに管理費があるように、スペースコロニーも維持費がかかる。
どのくらいの維持費がかかるのか?

参考として、ジェラルド・R・フォード級航空母艦の建造費と維持費を見てみよう。空母を例にするのは、その巨大な船体は、ひとつの街のように機能しているからでもある。
空母は単独ではなく、空母戦闘群1ユニットとしてセットで行動する。
そのおもな内訳は……

  • 空母の建造費は1.5兆円
  • 艦載機は全部で5000億円
  • 空母を護衛する3隻の艦艇(ミサイル巡洋艦=1、ミサイル駆逐艦=2)が、2000億円×3=6000億円
  • 攻撃原子力潜水艦ロサンゼルス級が1600憶円

……と、合計で2兆7600億円くらいかかる。

これらの年間維持費は、約1100億円だという。
つまり、取得費用の約3.99%、ざっくり4%が維持費という計算。

6000兆円のスペースコロニーでは、4%の維持費は、年間240兆円はかかると想定される。
240兆円を100万人で割ると、ひとりあたりで年間2億4000万円の管理費が必要となる。月額で2000万円だが、4人家族なら8000万円。

大富豪でも、この経費では尻込みしそう(^_^)。
アムロ・レイの家族は、そんな大富豪だったのか?……と思ってしまう。一般住民というより、技術者家族であり、いわばコロニーで働いていたわけだから、住居費は会社持ちなんだろう。

スペースコロニーをビジネスとして成立させるのは、かなり困難だというのが以上の試算。
逆にいえば、経済的な発想ではスペースコロニーの建設はできないということ。

宇宙開発に民間企業が参入して、コストが下がっているメリットはある。ただし、それは儲けが見込めるからだ。
超巨大構造物であるスペースコロニーや軌道エレベータは、建設費や維持費が膨大であり、1つの企業で建設できるようなものじゃない。経済論理を持ち込んだら、とてもじゃないがペイしない、儲けが見込めないプロジェクトだ。

それでもスペースコロニーを造る必要が生じるとしたら、貨幣経済ではない社会、経済優先ではなく、損得抜きの人類の未来のための建設になるのではないか。
そういう未来が訪れるかどうかだと思う。

諌山 裕

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