「新五千円札」肖像画、左右反転の本当の問題点

紙幣のデザインが刷新されることになり、そのサンプルが公開された。
そして、持ち上がったのが、新五千円札の肖像画が、元となったと思われる写真を左右反転しているという問題。

それについて、著作権がどうなのかを考証した記事が以下。

新五千円札に著作権侵害訴訟リスク説を検証する(栗原潔) – 個人 – Yahoo!ニュース

「新5千円札に著作権侵害訴訟のリスク?」という記事を読みました。新五千円札の津田梅子の肖像の元になった写真を(おそらくは構図の都合で)裏焼(左右反転)で使用することが著作権侵害になり得るのではないかという説です。

(中略)

裏焼写真を使うことが社会通念に反するのではという意見(著作権法で著作物の改変は未来永劫禁じられているということはその意見の根拠のひとつになり得ます)はまた別論です。

著作権については、元の写真が古すぎるので、ほぼ摘要範囲外だと思う。
過去の紙幣の肖像画にしても、モデルのとなる偉人は大昔の人であり、残されている写真や肖像画は少なく、資料も乏しい。少ない資料から描き起こすわけだから、よく知られた写真等に必然的に似る。

今回の新五千円札が問題なのは、あきらかに左右反転した肖像になっていることだ。
つまり、新五千円札の顔は、鏡に映った顔ということになる。
さすがに、襟の合わせはまともになっているが、顔そのものは「裏焼き」。

この「裏焼き」という表現が言い得て妙(^_^)。
デジタル写真世代にはわからないだろうが、フイルム写真時代にはフイルムの表裏を間違って「裏焼き」してしまうことがよくあった。
商業印刷の世界でもときどき起こったミスで、裏焼きは絶対にやってはいけない重大な間違いだったのだ。

比較画像は以下にある。

新五千円札の津田梅子 顔が逆向きか | NHKニュース

新しい五千円札に使われる津田梅子の肖像が「実際の写真の顔の向きを反転させて使ったのではないか」という指摘が出ています。これについて財務省は「写真がそのまま紙幣の肖像になるわけではない」と説明し、そのまま発行する方針です。

顔の向きを、他の紙幣と合わせるために、左向きにしたのだろう。
それならば、単純な反転ではなく、髪の生え際や髪型なども左を向いた場合の顔にすればよかっただけ。
原画を描いた職人は、そのくらいの画力あるはず。でなければ、その職に就いていないと思う。

それをしなかったのは、はっきりいって「手抜き」
これではトレスしただけで、職人芸もクソもない。
誰でもなれるわけではない、紙幣の原画をまかされている選ばれし職人としてのプライドはないのか?……と問いたい。

余談だが、画面構成的な意味でいえば、人物が左向きなのは「過去」を見ていることを暗示する。
逆に、右向きだと「未来」を暗示する。
ドル紙幣は「右向き」だ。

左向きの資料がなかったというのは、職人として、プロとして情けない言い訳になる。
複数の資料を参考にしたのなら、反転ではない左向きの肖像画を描けるはずだ。

現在のテクノロジーを駆使するなら、右向きの写真から3Dモデルを作ることは可能であり、そこから正確な左向き顔を生成することは、それほど難しいことではない。
最新技術を紙幣に盛り込むのなら、肖像画の作成でも最先端の技術を使いなよ。
それとも、造幣局にはPCを使いこなす人はいないのか?

どうやら、批判があっても、このままのデザインで紙幣を作るらしい。
恥の上塗りというか、悪しき前例を作るような気がする。

諌山 裕

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