連日だが、今日もメタバース関連記事から。
メタバース世界を構築するのに必要なシーン記述言語の、標準規格になるかもしれないという動き。これが標準になると、またしてもOSのように基幹技術をアメリカに握られてしまう。
Apple支持のメタバース標準「USD」 製造業が続々採用 – 日経テックフォーサイト
「USDは、インターネットにおけるHTMLのような、メタバース時代の標準仕様になる」――米Pixar Animation Studios(ピクサー・アニメーション・スタジオ)のバイスプレジデントでCTO(最高技術責任者)を務めるSteve May(スティーブ・メイ)氏は、こう断言する。米Apple(アップル)や米NVIDIA(エヌビディア)といった映像業界で存在感のある大手企業に加えて、近年は大手自動車メーカーも支持するなど、急速に浸透している。
USD(Universal Scene Description)はもともと、ピクサーが自社のCGアニメの制作のために開発したシーン記述言語である。シーンとは、仮想空間における物体の形状や配置、質感、光などさまざまな情報を含めたもの。既にオープンソース化されており、映像業界を中心に利用が進んでいる。
(中略)
USDは、コンテンツ制作にとどまらず、デジタルツインに代表される製造業向けシミュレーションにも広がっている。積極的な姿勢を見せているのがエヌビディアだ。同社はデジタルツイン向けツール基盤「Omniverse(オムニバース)」において、標準形式としてUSDを選択した。Omniverseでは、建築やゲームなどにおける3次元(3D)CGの制作に、複数のユーザーがそれぞれ異なる制作ツールを利用しながら、共同、かつ同時に取り組めるのが特徴だ。加えて、製造業分野における各種シミュレーションも実行できる。そこで、どのツールでも利用できるように、制作した3DデータをUSD形式で専用データベースサーバーに保管する。
物理シミュレーションで利用しやすいように、USDでは機能拡張も進んでいる。例えば、エヌビディアとアップル、ピクサーの3社は2021年、物理シミュレーションに向けてUSDを拡張。3Dモデルの物理特性を示す要素「リジッドボディー」に対応させた。これにより、剛体の衝突などをより正確にシミュレートできるようになった。例えば、ビー玉を転がす場合において、ビー玉の重さやビー玉が転がるスロープの滑らかさなどの物理情報を表現できる。
ニュースとしては地味だが、影響は大きいだろうね。これが標準化されれば、USDを使っていないメタバースは主流から外れて孤立してしまう。
現時点で、支持企業にMeta社が入っていないのが皮肉かな。
メタバース世界の表現で、一番のネックは物理シミュレーションなんだよね。そこが雑だとチープな世界になってしまう。標準化されれば、制作がしやすくなるし、異なるメタバースへの移植も可能になる。
標準仕様を作ってしまうのが、アメリカ企業の一番の強みなんだよね。後発の日本は、それに追随し、頼ることになるから、主導権を握れない。
過去記事で「メタバースOSが必要」と書いたのだが、こうして着々とメタバースの基盤ができあがっていく。それに乗り遅れている日本は、ますます差を開けられる。
この記事を見て、メタバースが発展する方向性が、少し見えた気がする。
Meta社がもくろむ、アバターでコミュニケーションする、という方向ではなく、製造現場やコンテンツ制作でのツールとしてのメタバースだ。メタバースを使い、出力するプロダクトとして、リアル世界での製品であったり、ゲームや映画などの作品であったりする。コミュニケーションツールとしてのメタバースは、最適解とはいえないように思う。
個人的には、AdobeがPhotoshopライクな使い勝手のいい3DCG制作アプリを出して欲しい。多くのグラフィック系アプリを出しているAdobeだが、3DCGアプリだけはスタンダードがない。
「USD」は注目技術になりそうだ。