生物は地表や水中だけでなく、地中、それも深い地下にも存在する。
極限環境でも生物が適応できるということは、地球外生命の可能性が広がることにもなる。
そんな研究報告。
地下深部に広大な「生命体の森」 国際研究で発見 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News
海底をおよそ2500メートル掘り下げた地下に、数十万年から数百万年にもわたって存在してきた可能性のある微生物を含む、広大な「生命体の森」が存在するという発見が米ワシントンで開かれた米国地球物理学連合(American Geophysical Union)の会議で発表された。
(中略)
DCOによると、地球上の生物のうち、細胞核を持たない単細胞の有機体であるバクテリア(細菌)やアーキア(古細菌)のおよそ70%が地下に存在する。そうした「深部地下生物(ディープライフ)」は炭素重量換算で150億~230億トンに相当するという。
(中略)
地下深部で生きる同様の奇妙な微生物は、火星など他の惑星の地底にも存在する可能性があるという。
日本の海洋研究開発機構(Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology、JAMSTEC)の稲垣史生(Fumio Inagaki)氏によると、大半の深部地下生物は地表の生物とは明確に異なるという。
この大深度地下生物は、石油の元になっているのではないか……という説がある。
石油は古代の微生物の死骸がもとになっているというのが通説で、そのことから化石燃料と呼ばれる。しかし、化石だけでは説明できない事例もあり、それが地下生物なのではないかとの仮説がある。
石油はいずれ枯渇するといわれて久しいが、ある油井では減少するものの、あらたに油田が発見されたりする。化石としての石油であるなら、埋蔵量は限定され、取れば取るだけ減っていくわけだが、いまだに枯渇する気配がない。地下では石油が今も生成されているのではないか?……というわけだ。
このニュースに対するネットの反応を見ると、細菌という言葉から、未知の感染症を危惧するコメントが多かった。また、細菌とウイルスを混同しているコメントも多く見られた。
細菌というと、病原菌あるいはバイ菌というイメージがあるからだろうが、細菌とは生物の形態の呼称である。病気を引き起こす細菌は少数派であり、大部分の細菌は無害なのだ。たとえば、ヨーグルトの乳酸菌や納豆の納豆菌など。
深部地下生物は生きられる環境が限定され、エネルギー代謝も独特だ。極めて限定的な環境に適応した生物なのであって、それが地上に出てきたからといって脅威になることはない。
そのへん、勘違いしないように。
生命の起源はなに(どこ)か?……というのには諸説ある。
通説は、古代の海(あいるは海以前の水たまり)で有機物から発生したとされる。そこから進化したとする説。
だが、生命の起源が地中、あるいは原始惑星や彗星の中で発生したとすると、ルーツがまったく異なることになる。
深部地下生物はルーツに近い生物で、そこから地上や水中に上がってきたのが、地上に繁栄する生物になったのかもしれない。
太陽系外からやってきたオウムアムアには、細菌としての太陽系外生物が便乗していた可能性もある。そのようにして生物は星から星に移動しているとしたら……。
地球の生物の起源は、宇宙からやってきた……とするのが、「パンスペルミア説」だ。そのルーツのひとつが火星だという説もあるが、では火星の生物はどこからやってきたのか?
おそらく、宇宙は生命に満ちあふれている。
ただ、いまだ地球以外で発見されていないだけ。
酸素を必要とせず、食べることもせず、エネルギー源として周囲の熱や化学反応から直接得られる生物であれば、月や火星、水星や金星にだって生物の可能性はある。
とりあえず、火星だ。
火星の地下にも、深部地下生物はいるのではと思う。乾燥し、冷えた火星ではあるが、深い地下であれば、まだ細菌が生存できる環境が残っているかもしれない。