Brain Research Shaping the Future of AI?

 AIの発展へのアプローチはいろいろだが、原点である「脳」の研究に立ち返ろうという研究者たちの挑戦についてのレポート。
 現状、この研究はAI技術の主流ではないと思うのだが、「シンギュラリティ」や「知性の壁」を超えられるのは、「脳研究によるAI」の方が可能性はあるのではないか。ただし、前途多難な茨の道ではあるが。

AI発展のため、脳の研究に立ち返る科学者たち : EE Times Japan

同氏は、2009年ごろに始動した神経情報理論に関する取り組みについて触れながら、「脳内でどのように情報がコード化されるのかは、まだ明らかになっていない。恐らく、(既存のコンピュータで使われているような)信号やスイッチのコードではなく、共有チャンネルに複数の信号が到達した相対的時間がベースとなっているのではないだろうか」と述べる。

(中略)

コンピューティングの生物学的モデルに立ち戻り、新たな“ムーアの法則”を見つけるべく新しいモデルに投資するなど、飛躍的な進歩を実現する必要がある。生物学的モデルのメリットは、実際に存在していることが分かるという点にある。ディープニューラルネットワークにどれくらいのデジタルヘッドルームが存在するのかは、全く分かっていない

(中略)

NESDは、今後3年間で、神経細胞とエレクトロニクスとを接続することが可能な、埋め込み型インタフェースの開発を目指しているという。

(中略)

「人々の考えや感情、感覚などを把握することが可能になると、通信事業者やメディアはどのような存在になるのだろうか」

 ポイントは、脳の中の情報コードを解析できるかどうか?……なのだと思う。
 単純な2進法のコードではないのは明白だし、電気信号だけではなく化学的な信号も含まれている。それを読み解くことは、おそろしく複雑かつ難題な気がする。

 人は、なぜ他人の心が読めないのか?

 という問いに対する答は、心と心がつながっていないから、とか、エスパーじゃないから、とか、曖昧な答しか出てこない。なぜなら、科学的な理由がわからないからだ。

 脳から脳波が出ていることはわかっているが、人と人が頭をくっつけあっても、脳波を読みとることはできない。他人の脳波を検知する器官がないからともいえるが、本当にそう断言できるかどうかもわからない。

 こう考えることもできる。
 思考のコードは、脳のそれぞれ、つまり個人それぞれで異なったコードになっているのではないか。別の言い方をすれば、脳はそれぞれで個別の暗号化をしている。だから、他人の脳波を察知しても、「気配」として感じることはできても、コードを復号できないから「心は読めない」ということになる。これは私の仮説。

 「神経細胞とエレクトロニクスとを接続することが可能な、埋め込み型インタフェース」というのは、脳とデバイスをつなぐ理想型ではあるが、脳のコードを解明して、それをデジタルに変換できる方法を見つける必要がある。それができないと、「攻殻機動隊」の擬体と脳との接続は、現実にはならない。

 逆説的にいうと、脳の情報コードを解読できるようになるということは、他人の心の中を覗けるようになる……ということでもある。
 つまりは、脳の情報、人格のデータ化だ。
 後頭部のソケットにプラグをつなぎ、脳からの信号を拾えるとしたら、記憶や思考をデータ化することも可能かもしれない。脳のバックアップというアイデアは、SFではありふれているが、脳のコードを解読できないとデータ化はできない。

 脳の情報は、ある意味、「魂」ともいえるが、それを外部に保存、またはコピーできるとしたら、不死の存在になるかもしれない。……と、これは飛躍しすぎのSFの領域。

 いずれにしても、脳の仕組みを解明することで、現状のAIには足りない「意識」を発生させるパーツを、どうやって作るか?……という問題解決のヒントを見いだしてほしいものだ。

 自分の脳……つまり、心は、いま、なにを考え、なにを思っているかを自覚し認識している。
しかし、隣の人の脳については、まったくアクセスできない。
 人の心は読めない。
 それはなぜなのか?
 どうやったら読めるのか?
 ヒントはそこにあるのかもしれないね。

諌山 裕

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