クールジャパンという言葉は、やや死語になりりつある感じなのだが、官製クールジャパンはすでに死んでいるようだ。
成果なき「官製クールジャパン会社」の信じ難い実態 「経営は順調」とされる公開はおろか撮影すらない映画企画開発会社 WEDGE Infinity(ウェッジ)
近年、クールジャパン政策が叫ばれている。日本のコンテンツの海外展開分野においても、これまで数百億円の税金や財政投融資など公的資金が注がれている。
(中略)
その顕著な例が2011年に「日本を元気にするコンテンツ総合戦略」のもと設立された株式会社All Nippon Entertainment Works(ANEW)である。
(中略)
16年10月27日で会社設立から丸5年が経過したが、これまで7作品の開発を発表しているものの、これらの映画が公開され配当を得るどころか、撮影に 至った作品すら1本も存在していない。また、官報に掲載されている決算公告によれば、15年12月31日時点までの損失は14億4517万円に上り、何ら 成果のないまま毎年赤字を垂れ流している経営状態が続いている。
前にも関連したことを書いたが、官主導のクールジャパンは、旗印だけ、形だけ、箱物だけで終わって、中身のない無駄に帰結する。
→もっと根本的な問題があるよ→「日本のポップパワー発信10策」
→官主導のコンテンツ事業なんてこんなものか?
→漫画家はつらいよ…クールジャパンの幻想
本気でクールジャパンを支援したいのなら、クリエイターに資金援助するだけでいい。
60億の金が出せるなら、現場で働く人たちの生活水準を引き上げることだ。たとえば、アニメーターの給与水準が、今の倍になれば優秀な人材を集めることもできるようになる。
お金の使い方が間違っている。
「君の名は。」が異例の大ヒットをしているが、190億円を超える興行収入が、末端のアニメーターに還元されることはないだろう。ヒエラルキーの上の方で利益が分配されるだけで、下の方には雫すらこぼれていかない。もともと、それほどヒットすると予想はされていなかったから、制作費は安く抑えられていたと思われる。予想の100倍のヒットになったからと、ボーナスが100倍出るわけでもなかろう。現場は低賃金労働のままだ。
ただ、資金援助は諸刃の剣でもある。
労せずして資金を得られると、それに甘んじて怠惰になる。地方振興や農政などで資金を補助したりすると、最初からそれを当てにしてやるべきことがおろそかになる。赤字は補助金で埋めればいいと、安易に考えるようになってしまうからだ。
もとは税金だが、国から出てくるお金に対して、恵んでもらっているような感覚になり、有効に活用することを忘れてしまう。
費用対効果をきちんと検証しないのも、官主導の特徴でもある。
結局は、お役人たちの天下り先、「クールジャパンやってます」という形を作るだけのものになってしまっている。
いったい、誰のためのクールジャパンなのかがわからない。
記事の最後は……
日本がクリエイティブ産業で食べていくということは、日本に投資を獲得し、また産業を支える現場に質のいい産業雇用創出をすることが重要である。ソフトパワーによるインバウンド効果を得たいなら、まずこの国でインバウンド効果を生むいいコンテンツが生まれる環境がなければそもそも達成できない。
……と結ばれている。
私も同感だ。
映画にしろアニメにしろ、それを作る人たちの環境がよくならなければ、成長もクソもない。
ハリウッドが世界から注目を集め、優秀なクリエイターが集まるのは、それで食えるからだ。食えない日本のアニメ業界には、人が集まらず、人材不足が深刻化している。
官主導のクールジャパンは、お役人たちのマスターベーションでしかない。