エミー賞を受賞して、大注目されることになった『SHOGUN -将軍-
 Disney+での配信なので、見ていた人はそんなに多くなかったはず。かくいう私も、新作として出てくるから存在は知っていたが、見てはいなかった(^_^)b
 私がDisney+を視聴しているのは、Star Wars関連の作品を見るためなので、それ以外は眼中になかった。

 主演兼プロデューサーの真田氏が「リアルにこだわった」という発言をしていたことから、それについてのツッコミ記事が出てくるのは必然かな。

武士が刀を抜きすぎ…「SHOGUN 将軍」が描く日本はリアルではない 褒めるだけのメディアの罪(全文) | デイリー新潮

 これは凄まじい快挙だと思います。映画のアカデミー賞、音楽のグラミー賞、演劇のトニー賞とならぶアメリカのエンターテインメント賞であるエミー賞で、真田広之さんがプロデュース兼主演を務めた『SHOGUN 将軍』が、作品賞をはじめ18部門を制したのです。

 時代は関ヶ原合戦の前夜。徳川家康をモデルにした武将の吉井虎永と、その家臣になったイギリス人航海士の按針、そして2人の運命のカギを握るキリシタン女性で、細川ガラシャをモデルにした戸田鞠子。彼らを中心に陰謀と策略が渦巻くスペクタクル・ドラマで、虎永を演じた真田さんは主演男優賞に、鞠子を演じたニュージーランド生まれで東京育ちのアンナ・サワイさんも主演女優賞に輝きました。

 製作費が2億5,000万ドル、つまり日本円で350億円もかけられていた、という事実にも驚かされます。全10話なので、1話あたりに日本映画の平均製作費の10倍にあたる35億円もかけていたわけで、ここ30年余り、日本が経済成長でアメリカに突き放されてきたという事実を、あらためて突きつけられた感があります。

(中略)

 エミー賞で過去最多の18部門の受賞となった作品です。観てみようと思う人は少なくないはずです。その作品について、リアルな日本描写が特徴だとこれだけいわれれば、観た人は『SHOGUN』に描かれているのは、関ヶ原合戦前後のほんとうの日本だと思ってしまうでしょう。プロデュースした真田さんが言っているだけならわかります。ところが、今回の受賞を報じるメディアが例外なく、「リアルな日本描写」だとなんの疑いもはさまずに強調しているのは、いかがなものでしょうか。

 いいたいことはわかるのだが、どこまでリアルを追求するかだよね。
 所詮、フィクションであり娯楽作品であり想像(創造)の産物である。リアルさというのは、物語に説得力を持たせる意味合いがあるが、リアルに徹しすぎるとドラマチックさが薄れる場合もある。要はリアルと誇張のさじ加減だろう。

 実のところ、記事の執筆者の香原氏も、 歴史評論家という肩書きがあるものの、16世紀の日本を見てきたわけではないし、残された断片的な書物等から類推しているにすぎない。言い換えると、16世紀の日本のリアルを知る術はないし、かなりの部分を想像で埋めるしかない。

 ただ、それでもサムライファンタジーとしては、よくできていたと思う。
 私の印象は、
「ああ、この空気感は、ロード・オブ・ザ・リングに近いね」
 という感じ。
 日本でいうところの「時代劇」とは違い「サムライファンタジー」なんだ。
 映像的には、彩度を低くし、暗いところは顔が見えないくらい暗く、空気遠近法で霧や霞を多用し、衣装等の汚れを効果的に使っている。
 NHKの大河ドラマに代表される時代劇では、ロウソク一本でもギラギラに明るく、細部までくっきりと見せようとするのとは大違い。

 また、物語の展開的には西部劇のような対決構造にもなっている。
 銃をバンバン撃ち合う西部劇は、その時代のリアルはどうだったかというと、映画のようにすぐに撃ち合いになっていた……というのは誇張だろう。
 『SHOGUN』で、すぐに刀を抜こうとするアクションは、西部劇でホルスターの銃を抜こうとするアクションと同じだね。騎馬シーンにエンニオ・モリコーネの『荒野の用心棒』をBGMに入れたら、ピッタリはまるよ(^_^)

 本作は画期的であり快挙を成し遂げたが、同時に日本のドラマが海外に進出するためのハードルを上げることにもなったように思う。
 安っぽいドラマではダメなのだ。
 あとに続く人は大変だ。

諌山 裕