ベルギーのテロを受けて、日本でもテロ警備の強化をしているようなのだが……
 銃器や爆薬を使う実戦経験の乏しい警察がどれほど対応できるのかは、「その日」が来てみないとわからないようにも思う。

警察庁、全国の警察にテロ対策の徹底指示|日テレNEWS24

 ベルギー・ブリュッセルの同時テロ事件を受けて、警察庁は22日夜、全国の警察に対して、1:関連情報の収集の徹底、2:水際対策の徹底、3:国際空港などの重要施設や公共交通機関のようなソフトターゲットの警戒警備の強化の3つを改めて指示した。

警察庁の幹部は、伊勢志摩サミットの警備への影響について「ソフトターゲットを狙ったテロに関しては特効薬があるわけではない。気を引き締めて警戒警備を地道にやっていくしかない」と話している。

 アメリカやヨーロッパでは、警備する警察や軍は、自動小銃などのものものしい装備で街中に配備される。それだけで威圧感はあるが、そういう警備をしていてもテロ実行犯は武器や爆薬を持ち込んでいる。いわばゲリラ戦なわけで、往来する人々の中で、誰がテロリストかわからないから防ぎようがない。

 日本の警察官の武装は、基本的にS&W(スミス&ウェッソン)M360J SAKURAなどの拳銃だ。特殊部隊(SAT)は、H&K MP5A5などの自動小銃を装備するが、名前のとおり特殊部隊なので人員は少なく(約300人)、警備のためというよりはテロ事件等が発生したときに出動する。

 欧米と違って、日本は銃器の入手が困難なため容易には武装できないが、仮にテロリストが自動小銃で武装しているとなると、拳銃のみの警察官では歯が立たない。射撃訓練をたまにしていても、一般市民がたくさんいるなかで、人に向けて撃つ経験がほどんど皆無の警察官たちに、はたして有効な応戦ができるのかどうかは疑問。

参考記事→「犬を射殺した事件記事で使われた銃のイメージ写真は正しくない

テロ対策のための訓練の様子が、ニュースで流れたりするのだが……

伊勢志摩サミット控え、羽田空港でテロ訓練|日テレNEWS24

 伊勢志摩サミットが5月に迫る中、警視庁は3日、テロリストが羽田空港に入国したとの想定で対策訓練を行った。

訓練は、火薬を所持したテロリストが羽田空港に到着後、旅行客を人質にとったという想定で行われた。

▼動画のキャプチャ

伊勢志摩サミット控え、羽田空港でテロ訓練

 この動画は、訓練というよりはデモンストレーションだね。
 犯人役はいかにもテロリストという格好だし、こういうわかりやすいシチュエーションは現実的にはありえないだろう。

 この場面、即、射殺しなきゃだめだ。
 日本の警察は、生きたまま捕まえることを前提にするから、これだけの至近距離でも発砲しようとしない。犯人役は撃ってくださいとばかりに、人質を捕まえているだけで盾にもしていない。
 これじゃ、訓練にならないよ。

 犯人の顔が見えたら、狙撃手が一発で頭をぶち抜けば終わり。下手に時間かけると、犯人は自動小銃を乱射して、周りにいる人たちが犠牲になる。自爆テロをするようなテロリストは、死ぬ覚悟でいるのだから、説得とか時間的猶予を与えるのは無意味。そういうところが、甘いと思う。
 この訓練の様子は、見せ物としてのアピールにしかなってない。

 現実的な訓練をするのなら、たくさんの一般市民がいる中で、誰が犯人か警備の警察官にもわからない状態でやらないと意味がない。人相の悪い人がテロリストとは限らず、老人かもしないし、子供かもしれないし、子連れの若いカップルかもしれない。

 非公開の訓練では、そういうこともやっているとは思うのだけど、公開される訓練は茶番だ。そもそも本物の訓練の様子を見せてしまうと、テロリストに入れ知恵することになってしまうのだから、茶番でいいのだろうけど。

 空港は乗客の手荷物検査などがあり、比較的防御しやすい場所ではある。飛行機で武器を携帯して日本に乗り込んでくるテロリストは、不可能とはいえないまでもかなり難しい。ベルギーの事件は、街から空港施設に入ってきたテロリストだ。事件後に、犯人を特定する監視カメラの映像が公開されたが、事件を起こす前には怪しまれなかったことになる。
 この判別は難しい。

 自爆するつもりだったわけだから、犯人たちは緊張していただろうし、挙動の変化もあったはずだが、それを見つけ出すのは容易ではない。
 日本ではマスクをすることが普通になっているため、顔を隠したいテロリストにとっては好都合だ。花粉症のためのマスクなのか、顔を隠すためのマスクなのか、判別はできない。極端な話、厳戒態勢のときは「マスク禁止令」を出さないと、警備の妨げになるのではと思ってしまう。ベルギーのテロリストがマスクをしていたら、顔がわからず犯人の特定はできなかったかもしれない。

 空港よりも船の港の方が、警備しにくい。
 港は大小合わせて数が多いし、手荷物検査や金属探知機などが充実しているわけでもない。そもそも正面玄関である港から堂々と入っていく必要もないわけで、夜の闇に紛れてボートで浜辺に上がることだって可能だ。海岸線のすべてを監視することは不可能なので、海路で侵入することは容易い。その場合、武器・爆薬を持ち込むことも可能だろう。
 港の警備も強化しているというが……

テロ防止の合同パトロール 神戸港 | NHKニュース

神戸市では、ことし5月の伊勢志摩サミットに関連して、9月にG7=主要7か国の保健相会合が開かれることになっていて、海上保安部や警察などは神戸港でのテロの警戒を強めることにしています。
24日、9つの関係機関による合同パトロールの出動式が行われ、神戸海上保安部の徳永裕之部長が「テロに関わる人や物を神戸港に絶対に入れないという強い決意と緊張感を持って対策を徹底してもらいたい」と訓示しました。
式のあと海上保安部の巡視艇や警察のパトロールカーなどが次々に出動し、港の警戒に当たりました。関係機関は今後、連携を取り合いながら、テロに関する情報収集や外国船舶の立ち入り検査なども行い、神戸港の水際対策に当たることにしています。

 海上保安部の隊員は、警察同様に銃を所持することができるが、常時携帯しているのではなく、必要になったときに保管庫から取り出すことになっているという。
 テロリストといつ対峙することになるのかわからないのだから、銃を常時携帯することが必要なのではないだろうか? 丸腰では対処できないよ。

 日本人は銃に対してアレルギーがある。警官が発砲するような事態になると、ことさらに問題にする。それがときには処分の対象になるため、警察官は発砲をためらうこともあるのだろう。

 しかし、テロリスト相手にためらいは命取りになる。
 自動小銃を持った警察官が街角に立っていると、威圧感はあるが同時に抑止力にはなると思う。単発撃ちの拳銃でヒットさせるのは難しいが、数打ちゃ当たるの自動小銃であればヒットさせられる確率は高くなる。日本でも、警備の警察官にH&K MP5A5を持たせた方がいいかもしれない。相手がAK-47を持っていたら、絶対に必要になる。
 そういうことになると、野党は武力の誇示とかなんとかいって反対しそうだけど。

 それはそれとして、相次ぐ有名人の不倫騒動で騒いでいる日本は……平和(ぼけ)だなーと思う。

諌山 裕

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