再び月面に人間を送る……というNASAの計画。
一国だけではまかないきれないから、複数の国が協力して行われる予定で、日本も関わっている。
実現するかどうかは、技術的な問題よりも資金的な問題が鍵のようだ。
いったいいくらかかるんだ?……というのが以下の記事。
NASAの月面着陸プロジェクト、2兆2941億円なり〜 | ギズモード・ジャパン
予算のうち76億ドルは宇宙船「オリオン」と「スペース・ローンチ・システム」に、10億ドルが探査技術の開発費、そして5億1800万ドルが宇宙飛行士の月面用宇宙服の開発と製造に振り当てられます。280億ドルは2021年度から2025年度の予算となります。
(中略)
2024年に予定されている「アルテミス3」ミッションでは、男性と女性計2人の宇宙飛行士が月面へと送られます。人類が月面を踏むのは1972年以来。2人は月面におよそ7日間滞在して、サンプル採取や科学実験などを行います。
(中略)
NASAの「月面インフラの建設を増やす」ための計画など、このフェーズのアルテミス計画は本当に未来的です。その目標のため、ローバーの配備やクルーのため与圧されたキャビンのついた移動型施設、居住モジュール、発電システムとあらゆるオンサイト資源の活用システム(乗組員たちは例えば水の氷を酸素と燃料へと変換などを試す)が計画されています。重要なのは、こういったミッションが2030年代に実現するかもしれない火星への有人ミッションの序章になるという点です。
計画は壮大なのだが、結局、金しだい、という身も蓋もない話になってしまう。
経済的な投資と違って、2兆2941億円を投じて、それを上回るリターンの見込みはない。得られるのは、科学的な成果や未知の領域へのチャレンジといった、お金には換算できない知の財産だろう。民間企業も関わっているから、それらの企業はNASAから収益を上げられるが、計画全体としてはペイしない。
これは公共工事と同じで、建設会社は潤うが、税金を投入する国は赤字になるという構図だ。
それでも宇宙開発は必要だとは思うが、巨額の費用を誰が出すのか?って話。
「【レビュー】Netflixオリジナルドラマ「AWAY」」でも書いたが、最終目標が火星とするなら、恒久的な月面基地は不可欠な条件だ。
とはいえ、月面基地を造るにしても、当初は地球から材料や機材を運ぶ必要がある。そのためには何度も月まで往復しなくてはならず、その費用もかさむ。
月面基地建設には、さらに数倍のコストがかかりそう。
この手の試算は、往々にして低めに計算される。なぜなら、最初から高すぎると議論の材料にならないからだ。実際に計画が始動したら、予算は膨らみ、数倍になってしまう。
現時点で2兆2941億円ならば、6兆〜10兆くらいになるかも。
で、予算確保ができなくなって頓挫……という図式。
NASAの予算だけでは限界があるのは明白。
人類の未来のための投資……として、世界中が協力でもしない限りは、不可能かもしれない。
仮に、火星行きロケットのための月面基地建設に10年かかるとする。
月にある資源を使って建造し運用するには、そのくらいはかかる。ロボットを使って建設するというほどには、ロボット技術は成熟していない現状だから、人間が建設要員として数百〜数千人規模で月に駐留することになる。そのための基地は、ジェラルド・R・フォード級航空母艦くらいの規模は必要だ。
ジェラルド・R・フォード級航空母艦の建造費は、130億8,400万ドルだという。起工から就役までに8年がかかっている。この空母には、4000人あまりが乗艦して生活できる。地球上で造ってこれだから、月面で造るとなると何倍の期間と費用がかかるやら……。
数人が滞在できる簡素な月面基地は、居住モジュールとなる着陸船を送るだけで可能だが、火星への足がかりとなる本格的な基地は、巨額のビッグプロジェクトになる。
夢は持ちたいが、実現には悲観的。
前途は多難だ。