テレビのリモコン問題

スマートテレビの話題で、特にリモコンについての問題。
テレビのリモコンはボタンがいっぱいの旧態依然とした形態から脱していないのだが、そこにスマートフォンやタブレットを使って、使い勝手を向上させようというのがスマートテレビの目指している方向性のようだ。

以下の記事はちょっと古いが……

センシング技術:リモコンが変わる、スマートテレビの登場でユーザーインタフェースが多彩に (1/3) – EE Times Japan

 これらのスマートテレビが備える機能の多くは、既にPCで一般に提供されているものだ。しかしテレビには、PCとは異なる課題がある。それがユーザーインタフェースだ。旧来のテレビの一般的なリモコンは受動的な利用形態に向けて進化してきたもので、スマートテレビの能動的な利用形態には必ずしも適さない。

そこでテレビメーカー各社は、従来とは異なる機能を備えたリモコンや、リモコンに代わる新しいユーザーインタフェースの開発を進めている。今回のCESでは、そうした各社の提案がスマートテレビとともに大きな注目を集めていた。

(中略)

東芝の担当者は、「大量のコンテンツやWEBを閲覧したり、FacebookやTwitterでコメントを入力したりするには、画面にソフトウェアキーボードを表示できてスクロールもしやすいスマートフォンやタブレット端末の方が、従来のテレビ用リモコンよりも圧倒的に使いやすいはずだ」と述べる。

いわんとするところはわかるのだが、しかし……

テレビのリモコンに関しては、昨年(2012年4月11日)の過去記事にも取り上げていた。
「テレビ」の未来形を考える(1)
「テレビ」の未来形を考える(2)

このとき、私が例として作図したタブレット型リモコンの図が以下。詳しくは上記の過去記事を参照。

タブレットリモコン

 

音・画質関連のコントロール画面


CESで発表されたタブレット型リモコンは、まだまだ機能的にもデザイン的にも、古い殻から突き抜けていない。既存のメカニカルボタンのリモコンを、画面上に移植した程度にすぎない感じだ。ボタンが画面上のタッチボタンになっただけでは、ぜんぜんスマートじゃない。そうではなくて、タブレット画面だからできる表現や使い方にしないと意味がない。

私の提案したものの方が、まだマシな気がする(笑)。一介のグラフィックデザイナーでもこの程度のものは考えられるのだから、メーカーのデザイナーや技術者の人たちは、もっと高度に洗練されたものを考えて作って欲しい。

過去記事に書いたことと重複するが……
「リモコンはテレビの肝だ」
最近のテレビは、テレビ本体には操作系のボタンはわずかしかなく、リモコンがなければチャンネルを変えることすら難儀する。

テレビを点けるのに、リモコンがどこかにいってしまって、リモコン探しから始めるようなことがよくある。そのリモコンの使い勝手を直感的かつ快適に使えるようにすることは、テレビが面白いデバイスになれることを意味する。Appleが出すかもしれないといわれている「iTV」は、そんな方向性なのかもしれない。

iPhoneやiPadを使うことが快適で楽しいのは、「操作する面白さ」があるからだ。
テレビのリモコンは「ボタンを押す」という感覚だが、iPhoneやiPadにもボタンはあるものの、ボタンを押すという感覚ではなく、「アクションする」という感覚だ。アクションとは「入力する」「見る」「聞く」「(メッセージを)送る」といった操作をするための指の動きだ。

その動きが、ただボタンを押すのではなく、フリック入力であったり、ズームのためのピンチだったり、ページめくりのためのスライドだったりする。そして、細かいことだが、一連の動作をしたときのグラフィックの微妙なアニメーションが、直感的で気持ちいい感触になっている。
そこまで考え抜いたものが、Appleのデザインセンスだ。

スマートテレビもいいのだが、日本のメーカーに求められているのは、ユーザーの予想を超えるような快適で面白いデザイン性である。
そんなテレビのリモコンの登場を期待したい。

諌山 裕