ソーシャルゲームの黄昏

 飛ぶ鳥を落とす勢いだったソーシャルゲーム業界だが……
 成長が減速しているようだ。
 「いつか来た道現象」とでも名付けたい状況。
 既存のゲーム機が辿ってきた道。ソーシャルゲームと名前は違っても、基本的には同類だろう。

ソーシャルゲームに陰り、成長にブレーキ 2強の活路は – ITmedia ニュース

 急拡大を遂げてきたソーシャルゲーム業界が、曲がり角にさしかかっている。2013年度の国内市場は12年度見込み比で10%増にとどまり、成長ペースに急ブレーキがかかる見通しだ。携帯電話ユーザーにゲームが浸透するにつれて需要の拡大余地は狭まり、廃止したアイテム商法「コンプリートガチャ(コンプガチャ)」に代わる収益源の不在も響く。頼みの綱となる海外事業もディー・エヌ・エー(DeNA)、グリーの大手2社がともに黒字化が遅れるなど、先行きの不透明さが増している。

(中略)

 健全性をめぐる対応は後手後手の感が否めない。12年には、ゲームで獲得したアイテムを競売サイトなどで現金化する「リアル・マネー・トレード」やコンプガチャが問題化し、各社はコンプガチャの自主廃止を余儀なくされた経緯がある。厳しさを増す業界への視線はボディーブローのように業績にも響く。

 いろいろと原因は挙げられているが、個別の原因がどうこうではなく、これは必然でもある。
 経済の法則というより、物理(自然)法則だ。
 無限の人口と、無限のお金があれば、無限に成長できるかもしれない。
 しかし、現実には有限の人口と有限のお金しかない。その有限の範囲内において、消費できる量も有限である。
 初期の段階では、有限の頂点である天井が高いため、成長する余地がたくさんある。だから、急成長できる。ある段階に達すると、天井が見えてくる。もうこれ以上成長できない限界点が近づいてくれば、減速するしかない。

 日本の人口は1億2700万人くらいだが、すべての人がソシャゲをやったとしてもこれ以上のユーザーにはならない。実際問題としては、人口の数パーセント~数十パーセントだから、さらなるユーザー獲得のためには、国内だけでなく海外に求めることになる。
 同様に貨幣流通高は、80兆円くらい。このパイを様々な業界や国民で取りあって(分けあって)いるわけだ。
 ちなみに、80兆円÷1億2700万=約62万9921円……ということで、赤ん坊も含めたひとり当たりにすると大した金額ではないのも事実。

 ソーシャルゲームが登場した頃は、そこは埋蔵量の多い鉱山だったようなもの。露天掘りから始めて、地下へ地下へと掘り進み、隅から隅まで掘り尽くしていけば、いずれ資源は枯渇する。
 もはや、閉山するしかない。
 別の山を掘るか、新たな産業に転換するか。
 既存のゲームでも同様だが、黎明期には斬新なゲームが登場するものの、だんだんとアイデアは枯渇し、同じようなゲームの焼き直しになっていく。シリーズ化するのが手っ取り早い方法だが、それもやがては飽きられていく。

 急成長しすぎたことで、天井に辿り着くのも早かった。
 それは自明のことだったはずだ。
 稼ぎ頭だったコンプガチャを業界が黙認したのは、それが短期間で儲ける方法だとわかっていたからだろう。世論が批判の大合唱をしなければ、続けたかったはずだ。
 RMTやギャンブル性の高いコンプガチャのようなものは、収益性が高いことはわかっている。
 ソーシャルゲーム業界が、いよいよ瀬戸際になってきたら、RMTやギャンブルを堂々とできるシステムや法整備を求めていくのではないだろうか?
 カジノを合法化する法案を提出する動きがあるが、これが成立するような状況になれば、ソーシャルゲーム業界はオンラインカジノ業界へと転換していくように思う。

 ゲーム内だけの仮想通貨ではリアルには何の恩恵もないが、リアルマネーと直結するゲーム内通貨であれば、パチンコと同様にお金をつぎ込む人は多くなる。
 良し悪しは別問題だが、ゲームといえども人の欲望をストレートに刺激するのは、お金でありギャンブルであることは間違いない。

諌山 裕

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