混迷の世紀 「第4回 世界フードショック 〜揺らぐ『食』の秩序〜」|NHK

 食の安全保障をテーマとした、NHKスペシャル。
 私のブログの過去記事でも度々取り上げているが、食糧危機が遠くない未来にやってくる可能性が高いという警鐘の内容だ。

混迷の世紀 「第4回 世界フードショック 〜揺らぐ『食』の秩序〜」|NHK

混迷の世紀 「第4回 世界フードショック 〜揺らぐ『食』の秩序〜」|NHK

 「食の安全保障」については、『「“食”の安全保障」【風をよむ】サンデーモーニング|TBS』でも取り上げられていたが、NHKの番組はより深く掘り下げている内容だ。
 現状、まだ危機感は乏しいので、大げさな話に聞こえるが、これはかなり深刻な問題になりそうだ。

 国会では軍事的な防衛力の増強ばかりが論じられている印象だが、「ミサイルを買うよりも穀物を買え」と言いたい。野党はそこを問うべきなのだが、野党議員にも食糧問題の危機感が欠如している。
 危機管理とは、危機がやって来てからでは手遅れなわけで、スーパーの店頭から食料品が消えてから「想定外だった」と反省しても後の祭り。

番組の始めの方で、WFPのデイビッド・ビーズリー氏は、

デイビッド・ビーズリー氏

 貧しい人々が餓死するだけでなく、裕福な人々さえ苦しむのです。

 ……といった。
 これには補足が必要で、億万長者の金持ちは例外だろう。金持ちは高い価格の食料でも金を出して手に入れられるが、そこそこの裕福層には、そこまでの財力はないという話。たとえば、牛肉100gが10万円とかになったら、買える富裕層は限られるみたいな話。

 ここ最近の食品の値上げで国民が不満をもらしているが、この程度の値上げでも家計が大変になるのに、入手自体ができなくなったら悲鳴に変わる。
 大部分を輸入に頼ってきた日本は、いち早く食糧難に直面する。
 それは数年後かもしれない。

 両親から戦時中の話を聞いたりしたが、あの頃は食べものがなくて、ひもじい思いをしたという。ほんの77年前には、日本中が飢えていたんだ。来たる食糧危機は、あの時代の再来だ。
 警鐘はされているが、それに対して国が具体的な対策や行動をしているようには見えない。
 まだ、切迫した危機感を感じていないからだろう。

 第三次世界大戦が起きるとすれば、それは食糧問題が大きな要因になるという。
 限りある食料の奪い合いだ。
 グローバル経済などと呑気なことはいってられない。
 食糧を輸出していた国が、自国第一主義で輸出しなくなれば、日本は食料源を断たれる。すでに争奪戦になっているとのことなので、日本の立場は弱い。

国家における「食」の位置づけ

 この位置づけが、日本は定まっていない。
 ミサイル防衛でもそうなのだが、今になってあわてて迎撃ミサイルを増やそうとかの議論をしている。北朝鮮や中国やロシアの軍事的脅威は、今に始まったことではなく、冷戦時代にまで遡れば、準備時間は十分にあった。
 しかし、軍隊アレルギーの国民性ゆえに、自国の軍備を増強せずに、アメリカに守ってもらうことにして中途半端にした。そのツケをここに来て払うことになった。

 食の安全保障も、同様に曖昧なまま放置されてきた。自給率の低さは、昔から問題視されていたが、手つかずのまま現在に至っている。「輸入すればいい」という安易な手段があったことで、自国の農業を衰退させた。
 そして「輸入できなくなる」という現実がつきつけられてもなお、危機感が乏しい。
 これは救いようがない。

 番組の締めくくりは、経済学者のジャック・アタリ氏の言葉。

ジャック・アタリ氏

アタリ氏 「エコノミー・オブ・ライフ」つまり、「生命のための経済」を選択するときが来ています。日本はまず農業という仕事が、魅力的であるという事実を作り出すべきです。そうしなければ、農業全体を失うという最大の危機に直面します。

社会的地位の面でも収入の面でも、農業という産業を魅力的にしなければなりません。そして、今までの食のあり方も自ら賄うという方向に考え直すべきです。食料を「健康・文化の礎」として捉え直すことを社会全体が求められているのです。

ナレーター 混迷の時代を生きる私達に、アタリ氏が示唆したのは「豊かさの象徴」としての食から、「生きる土台」としての食への意識の転換でした。

 この「生命のための経済」というのは、気候変動問題にも通じるもので、経済成長ありきの経済からの脱却だ。
 食べ放題なんてのは、不謹慎な時代になるのかもしれない。資源の使い放題も、できなくなる未来になっていく。

 で、いつもの結論に辿り着く。

 世界人口が多すぎる。

 人口が多すぎるから、多くの食料と資源が必要になる。
 近年の人口増加率は下がってはいるのだが……

世界の人口増加率

 低くなっていても、ゼロではないので増え続けている。
 この11月で、世界人口は80億人を突破した。
 100年前の1920年頃の世界人口は、20億人だったとされている。100年で4倍になっているわけで、これでは食糧難になるのは必然かもしれない。

 人口を抑制あるいはコントロールしないと、自滅の道を歩くことになりそう。
 いずれにしても、日本政府の危機感のなさはかなり深刻。
 数年後、食料暴動が起きる日本になっているとしたら……。

諌山 裕

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