脳の情報処理方法をコンピュータになぞらえるのは間違いでは?

脳の仕組み、どのように機能しているのか明確なことはわかっていない。
脳が脳のことを解明しようとしているわけで、ある意味、矛盾ではある。
その仕組みの一端が発見されたかもしれないという記事。

脳のタイムキーパー? ある神経細胞の発見で、脳の情報伝達手法の解明に近づいた|WIRED.jp

脳の情報処理を可能にしているのは、神経細胞の「発火」だ。しかし、この発火がどうやって情報を伝えているのかは、まだはっきりとわかっていない。発火のタイミングによって情報を伝えているという説もあるが、その際に“タイムキーパー”の役割を果たしている可能性がある神経細胞が、このほど見つかった。ことによると、情報伝達の謎の解明に一歩近づき、論争に終止符を打つことになるかもしれない。

(中略)

だが最も重要なことは、この神経細胞をヒトの脳で発見することである。そうすれば、神経細胞同士がどうやってごくわずかな電気信号の炸裂で情報を伝達しているのかというミステリーを解明できるかもしれない。

面白い発見ではあるのだが、決め手ではない気がする。
そもそも、脳の情報処理システムとコンピュータとを対比させ、なぜ、脳もコンピュータ的な処理システムだと想定しているのだろう?

それが根本的に間違っているのではないか?

コンピュータは脳を模倣して作られたものではない。
脳のシステムが解明されていないのに、模倣できるはずもない。
コンピュータは数学的な計算をするのに、どうしたら動作するかという方法論を模索した結果、2進法で計算する方法に辿り着いた。厳密にいえば、2進法に置き換えた方が簡単だったからであり、部品もシステムもシンプルにできたからだ。

脳は2進法では動作していない。
電気信号は流れているが、ONとOFFという単純なものではない。
電気信号だけでなく、化学物質の反応でも動作している。
“タイムキーパー”が必要なのかどうかも怪しい。
コンピュータと違って、クロックが正確である必然性がない。人体というか生物には「時計」は必要だが、正確な時計である必要もない。時間的な誤差があっても、生物は問題なく機能するし、冗長性はかなり許容値が大きい。

脳の視交叉上核による「体内時計」というのがあるではないか。まぁ、これも確定ではなく、推定ではあるが。この程度のアバウトな時計でも、脳の機能には支障はないのだろう。

もうひとつ、心臓の鼓動も時計だろう。
脳は脳だけで機能していると考えるのは、おそらく間違いで、体全体、内臓すらも脳機能には関与している……との研究報告もある。

いずれにしても、記憶などの情報が、どこに、どういう形で保存されているのか解明できないと、記憶をダウンロードするとか移植するとか、脳にプラグを差してコンピュータと直結するなんていうSFの世界は実現しない。

脳で脳自身のことを解明できるのか?
興味深いテーマではある。

諌山 裕

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