前エントリに続いて、メタバース関連の話題をもうひとつ。
記事としてはちょっと古いが、メタ社のメタバースについての記事。
Facebookからの社名変更の裏事情と、将来性の推察。
メタ(旧フェイスブック)はメタバースで行き詰まってこけるのか(大原 浩) | マネー現代 | 講談社(2022.08.15)
昨年10月28日、フェイスブックは社名をメタに変更した。日本経済新聞10月29日の記事「Facebook、社名を『メタ』に変更 仮想空間に注力」のように、これから「有望」と考えている「メタバース」に注力することを世間に示す意図があるようだ(「フェイスブック」の旧社名はSNSの名称として利用を継続)。
だが、それ以外に、企業体質や管理体制への批判が高まっていることに対して、「社名変更によるイメージ一新」という手法で回避することも大きな目的なようだ。
(中略)
だが、昨年10月時点での同社のビジネスの状況を考えれば、社名を「メタ」に変更したのはかなり強引であったように思われる。
つまり、社名変更の主たる目的は「世間からの批判をかわす」ことにあったのではないかということだ。
私が上場企業を観察している限り、業績不振や不祥事を起こした企業ほど頻繁に名前を変える傾向にある。
(中略)
石油、天然ガス、(自然)環境だけではなく、電気も限られた資源である。電力が無尽蔵に供給されるという前提でメタバースを論じるのは危険である。もちろん、膨大になると考えられる通信量の増大も具体的に考えなければならない。
メタバースは、人間の「(脳の中の)仮想空間」であることは間違いがないが、その仮想空間を支えるのは「現実世界のインフラ」であり、それらには資源・エネルギーあるいは物理的制約が伴うのである。
(中略)
さらに7月28日日本経済新聞「ネット広告『2強』主導に転機 景気減速、メタ初の減収」にあるように、本業のSNS事業でも「黄色」ランプが点滅している。
(中略)
デフレ時代には、生活必需品の価格が安かったから、IT・インターネットへの支出を増やせたが、インフレ時代にはそれが逆転する。
最初に脱落するのはたぶんメタであろうが、その他のGAFA(ビッグテック)を含む、IT・インターネット企業の将来も予断を許さない。
Facebookから「メタ(Meta)」への社名変更には、違和感があった。もっとも成功し浸透している名前を、なぜ変更する必要があるのか? メタになったらGAFAのFがMになり、GAMAになってしまう(笑)。
「世間からの批判をかわす」というのが本当なら、企業としてネガティブな動機だ。その批判を払拭するには、メタバースで成功させるのが必須になる。
で、メタ社のメタバースは「Horizon Worlds」という名前で公開されている。日本ではまだローンチされていないが。YouTubeにそのプローション動画がある。
プロモーションなので、実際とは多少違うだろうことは想像がつく。
動画のサムネール画像ではアバターに足がついているが、動画の中では上半身だけで下半身がない。
下半身は、まだ実装していないということなのかな(^_^)b
足があると、足の動きを表現しなければいけないので、いろいろと面倒な問題が起きる。足がなければ、上半身をただ移動させればいいだけだから、動かし方が楽だというのもある。
しかし、この奇妙なアバターは違和感ありまくり。
アバターに着せる服が、アイテムとしてメタバースの商品になっていたりするが、Horizon Worldsでは上着だけで、パンツ(ズボン)やスカートや靴は商品にならないね。アバターでもオシャレをしたいと思う人にとっては、この仕様はマイナス要素になる気がする。
それはそれとして、Horizon Worldsという名前は、インパクトがない。なんか平凡だよね。もっとシンプルで新鮮味のある名前が必要だった気がする。Metaでいいじゃんと思ってしまった。
また、現状のメタバースにはほぼ必須の、メタ社のVRヘッドセットは値上げされたという。
Meta Quest 2、2万円以上の値上げ。59,400円に – Impress Watch (2022年7月27日)
Metaは、VRヘッドセット「Meta Quest 2」を8月1日から価格改定する。従来は128GBが37,180円、256GBが49,280円だったが、8月以降は128GBが59,400円、256GB版が74,400円となり、それぞれ2万円以上の値上げとなる。
高〜〜(^_^)b
この価格を見ただけで、やる気が失せる。マニア向けだよね。PS5より高く、iPhoneよりは安いが、VRヘッドセットはVRを見て操作するだけのデバイスだからね。この価格設定が、普及の足枷になりそう。※PS5も値上げが発表された(2022年8月25日)
ゴーグルがなくても利用はできるようだが、それだとVRの利点を活かせない。
SNSのFacebookが成功できたのは、PCやスマホは他社が作ってくれて、Facebookはプラットフォームとしてのアプリを作っただけで、ユーザーは無料で利用できたからだ。無料で始められるのと、初期費用がかかるのとでは、雲泥の差。
別の記事で、メタ社は「メタバースでの収益化には10年くらいかかる」と述べているというのを見たが、その間、赤字を出し続けるわけで、持ちこたえられるかどうかだね。
「欲望の資本主義2022夏 特別編 「メタバースの衝撃 デジタル経済のパラドックス」【後編】」で触れたように、クオリティの高いメタバース(佐藤メタバースと仮称する)を無償で公開しようという動きもある。そんな対抗馬が出てくると、競争は厳しいものになりそう。
仮想空間を支えるのは「現実世界のインフラ」
これは名言だ。
それに関連することは、前エントリにも書いた。
SNSをツールとして利用して、政府への抗議活動が民衆に広がったり、ウクライナ戦争でSNSが情報発信の手段になったりした。
しかし、メタバースではそうしたリアル世界への行動は起こりにくい。基本的にメタバースは家の中に引きこもることになるので、リアル世界へのアクションは乏しくなる。むしろ逆で、仮想世界に逃避することを助長する。
「最初に脱落するのはたぶんメタ」と手厳しいが、乱立するメタバースの中でHorizon Worldsが生き残ることができるかどうかだね。