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アメリカのテロ事件以降、メディアではさまざまな討論や分析が行われている。流れとしてアメリカによる報復軍事行動が正当化されようとしている。

小泉首相も、事実上参戦を表明した。これは重大な決断だし、危険を招く判断だ。日本が中立的な立場を維持していれば、日本がテロの標的となる可能性は低かったが、実際に自衛隊の艦船をアメリカ軍とともに派兵すれば、日本は格好のテロの標的となるだろう。アメリカに較べれば、無防備にも近い日本は、攻撃しやすいからだ。

ハイジャックするのに、銃器やナイフは必ずしも必要ない。誰もが凶器とは思わないものでも、武器として転用できるのだ。たとえば、鉛筆でも人は殺せる。ライターで機内に火をつけることも可能だ。お土産用のワインのボトルだって、割れば凶器となる。ただの空き缶さえも「これは爆弾だ」と脅せば、凶器になりうる。素手であっても、格闘技の心得があればりっぱな凶器だ。

すべてを排除することなど不可能である。事件のあとでは、はったりだけでも十分に脅威だからだ。

小泉首相の口癖である「改革には痛みがともなう」というのを、今回の決断にも当てはめるならば「参戦するからには、痛み(犠牲)をともなう」となる。派兵される自衛隊員に犠牲者がでるかもしれないし、テロとして標的にされ犠牲者がでるかもしれない。首相は、そこまでいうべきなのだ。国民にリスクと犠牲を覚悟してくれ……と。それでもなお、国民は首相を支持するだろうか? そして、日本がテロ攻撃を受けたとき、首相は独自に動いて報復するのだろうか?

歌手のMADONNAは、「暴力は暴力を生むだけ」として、いち早く「報復反対」の立場を表明した。アメリカの風潮が怒りと報復に傾いているだけに、彼女の発言は勇気ある発言だ。

いつの頃からか、日本はアメリカのイエスマンになってしまった。従属しているといった方がいいかもしれない。我々は日本人としてのポリシーを失ってしまった。

私は基本的にはアメリカが好きだ。SFと科学の本場であり、映画・音楽・アートでも素晴らしい才能と作品が生みだされているからだ。

しかし、アメリカの掲げる「正義」には疑問を抱く。圧倒的な力……もっといえば、圧倒的な武力を背景にした「正義」なのだ。

スポーツにたとえるのは不謹慎かもしれないが、相撲であれば土俵を割ると勝負は決着する。だが、アメリカの戦い方は場外乱闘ありのプロレスだ。しかも、レフェリーはいない。相手をとことん打ちのめすまでやめない、デスマッチだ。そこにあるのは、勝ったものの正義である。

「テロには屈しない」……という理念はりっぱだ。ならば、自分もしくは家族や友人が、テロに巻きこまれるかもしれない覚悟はできているだろうか?

小泉首相の決断がもたらす結果は、どういう代償をはらうことになるか? 大きな代償になるかもしれない。

諌山 裕

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