ユニクロ関連で、マグドナルドとの類似性を指摘する記事が、2つ出ていた。

「ユニクロ」と「マクドナルド」が、まだ復活できないワケ (1/3) – ITmedia ビジネスオンライン

 8月4日に発表したユニクロの7月の国内既存店売上高が、3年ぶりに2カ月連続のマイナスを記録したことに対し、「ユニクロ一人負け」と東京経済ONLINEが絶妙なタイトルを付け多くの人が注目したが、ファーストリテイリングの柳井社長の目の中にはそんな足下のことより、もっと先が見えているようだ。

 2015年9月2日の日経新聞の朝刊では「ファストリ次へ」という連続もののコラムが始まり、そこには「ライバルはアマゾン」という見出しが躍る。「衣料品専門店として世界4位につけるが、グローバル戦略を支えるには国内は出店余地が狭まる」とある。やはり、海外戦略重視の方向性だ。

 しかし、記事では「柳井氏は20年に5兆円の目標を掲げるが、実現に欠かせない海外事業も思うように進んでいない」という現状も記されている。

(中略)

一連の記事で残念なのは、既存店、既存顧客に対する施策が全く語られていないことだ。『ユニクロはどこへ行くのか?』というコラムで紹介したように、昨今のユニクロはファミリー層ばかりになって「若者離れ」が激しい。若者が敬遠する理由は簡単。「高いから」。Airリズムにヒートテックなどに代表される高機能素材を開発し、多くの商品にそれを過剰なまでに取り入れた結果、商品単価がかなり高くなっている。

マクドナルドの二の舞か?  なぜだ! ユニクロが突然、売れなくなった 「飽きた」「高くなった」「もう欲しい物がない」…… | 経済の死角 | 現代ビジネス [講談社]

——何の前触れもなく、客にソッポを向かれる恐怖

世界各地に次々と店を出し、右肩上がりに伸びてゆくジャパンブランドの筆頭格。しかし足元の日本では、異変が起きていた。訳知り顔の人々は「大したことじゃない」と言う。本当にそうだろうか。

(中略)

「誰もがユニクロには『高品質で低価格』というイメージを抱いています。しかし、数年かけてアンケート調査を行ったところ、実は『品質がいいのに安い』のではなく『安いわりに品質が良い』と評価されていることが分かりました」

また、消費者がユニクロ製品の何を重視して購入しているかを調べてみると、「品質の良さよりも安さのほうをより重視している」との結果が出たという。

(中略)

直近の柳井社長の言動を見るに、「モノがよければ、多少値上げしても客はついてきてくれる」と考えている節がある。しかし、この正論さえ常に正しいわけではないのが、商売の難しいところだ。

人は何かを買う時、無意識のうちに「内的参照価格」、つまり「このくらいまでなら出せる」という金額にモノの値段を照らし合わせるという。エルメスで服やカバンを買うときは「20万円出しても仕方ない」となる。だが、良くも悪くも「普通の服」ばかりというイメージが染みついたユニクロでは、1万円払うのも高いと感じる。どうしようもない現実だ。

 マクドナルドとユニクロは、以前はよくお世話になったものだが、最近はご無沙汰(^_^)。
 利用する必然性がなくなったからだが、あまり魅力を感じなくなったからでもある。
 どっちも、一時は「安さ」が売りで、安いから買っていた。他店と変わらない、あるいは他店より高ければ、必然的に選択肢からはずれる。
 衣類の中でも、シャツ・Tシャツ類は消耗品で、何度も着て何度も洗濯すれば劣化していく。シンプルなものは流行に左右されないから、劣化するまでの数年は着られるし、安ければ捨てるのも躊躇がない。そういう意味では、ユニクロは貧乏人の味方だったのだ(^_^)。
 不景気の中、支出をいかに抑えるかで、真っ先に削るのが衣類だろう。ユニクロの選択が、『安いわりに品質が良い』と考えるのは、言い換えると「ユニクロで我慢しておこう」ということでもあった。

 しかし、ユニクロの商品が、ジリジリと値上げしてきてから、買う頻度が減った。同程度の品質と価格であれば、他店でも間に合うからだ。
 また、ユニクロのオンラインショップでは、衣類関係しか買えないが、Amazonであれば他の商品と一緒に衣類も買える。通販の場合、送料がいくらかかるかが重要で、5000円以上で送料無料とはなっているが、Tシャツを2~3着だけ欲しいときに、送料はかけたくない。
 その点、Amazonであれば、Tシャツと音楽CDと書籍などと一緒に買える。そっちの方がお得だし、1回の購入で用が足りる。そういう利便性は、Amazonが有利だね。

 ユニクロの服は、「我慢して着る」ものだと思う。自慢して着るブランドものの服ではない。裏のタグには、ユニクロのロゴがあるが、それは表に出したくないロゴでもある。Louis VuittonやCHANELのロゴを露出するのとは、意味合いが違う。
 「モノがよければ、多少値上げしても客はついてきてくれる」というのは、ブランドの価値が高ければの話。正直なところ、ユニクロにはそこまでの高級感のあるブランド力はない。
 中国人による爆買いでユニクロは人気のようだが、日本まで買い物ツアーに来られる中国人の中でも、安いものをたくさん買う層だと思う。中国経済の先行きは不透明だが、経済的に余裕のある富裕層が増えてくれば、あえてユニクロを買う必然性はなくなる。

 デフレ経済の中で、「安さ」を最大の武器にして成長したユニクロとマクドナルド。
 デフレから脱却しようとしている現在、最大の武器を手放しても戦える武器が、切れ味の悪い武器になっているように思える。
 かといって、「安さ」には戻れない。人件費や原材料の高騰、円安の進行で、コストカットは難しくなっている。
 世界に向けてのブランドの認知やイメージ向上にも努めているようだが、いまひとつ決め手に欠けている印象だ。
 テニスの錦織選手やジョコビッチ選手が、ユニクロのロゴの入ったシャツを着ていたりするが、そのロゴが目に入ると、微妙な違和感を感じてしまう。
 テニスを始めとしたスポーツウエアのブランドとしては、Adidas、FILA、MIZUNO、Nike、Wilsonといったイメージがあるからだ。テニス選手とコラボしたユニクロのテニスウエアは販売しているものの、種類は限定されているし、バリエーションは乏しく、女性用のウエアはない。スポーツウエアを展開するにしても、中途半端な感じがする。そこは今後の課題なのだろう。

 ユニクロの衣類は、ファッション界のトレンドを作るようなものではない。どちらかといえば、トレンドに追随するデザインであり商品だろう。ヒートテックなどのオリジナル商品もあるが、デザイン的な新しさはない。機能を売りにするのは、最初はいいが、機能ばかりに走ると、日本の家電メーカーが陥った性能競争と同じになってしまう。
 高級ブランドとして衣類を作っているわけではないユニクロは、競合他社がたくさんある中で、「選ぶならユニクロ」という価値観を生み出さないといけない。かつては、「安いわりに品質が良い」だったが、もはやそれが通用しなくなった。

 ユニクロの衣類のもうひとつの特長は、個性がないことだろう。
 きわめてスタンダードで、新しさはないが古くさくもない。ファッション界は、毎年毎年、新たなトレンドで流行りが変わる。去年流行った服は、今年はもう着られない。流行の服の賞味期限は長くて1年、シーズンものであれば、せいぜい4ヶ月。
 対して、ユニクロのスタンダードさは、数年経っても着ていられる。そういう意味では、賞味期限が長い。長く着られるということは、買い換えサイクルも長くなるということだ。毎年買う必要がない。
 個性のなさが個性ともいえるが、「選ぶならユニクロ」の価値観を生み出すには、強い個性が必要な気がする。
 多様な種類があるユニクロの衣類にも、それをデザインしたデザイナーがいるはずだ。しかし、そのデザイナーの個性というか顔が見えない。複数のデザイナーがいると思うが、中心となる、柱となるデザイナーの存在が感じられない。
 ブランド力が上げていくのに、中核となるデザイナーの存在は欠かせないと思う。
 かといって、有名デザイナーをスカウトしてくるのではなく、手垢のついていない新進デザイナーを起用するとか、自社の生え抜きを表舞台に立たせるとか、なにがしかの工夫や仕掛けは必要だ。

 ユニクロがマクドナルド化していくのか、それとも脱皮できるのか、柳井氏のお手並み拝見だね。

諌山 裕

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