私はNIKONユーザーで、現在はD800を愛機としている。
そのNIKONが苦戦しているという。

どうしたニコン、足引っ張るカメラ事業 | 企業戦略 | 東洋経済オンライン | 新世代リーダーのためのビジネスサイト

不振の要因は何と言っても、売上高の7割以上を占める、カメラ事業の悪化に歯止めがかからないことである。販売台数で見るとスマートフォンに侵食されつつあるコンパクトデジタルカメラ(コンデジ)が前年同期比4割減。さらにニコンの主な収益源である、レンズ交換式カメラも同3割減。これを受け、ニコンは通期のカメラ販売台数の見通しを引き下げた。カメラ不調の理由としては市場縮小もあるが、「市場の縮小以上に販売台数が落ちこんでいる」(牛田一雄社長)と、事態はより深刻だ。

NIKONといえばカメラなので、カメラ事業が足を引っ張っているというより、戦略がうまく噛み合っていないのではないかと思う。

一眼レフカメラは、私の商売道具でもある。以前はCANONを使っていたが、D800が発売されたときにNIKONに乗り換えた。プロユースを考えたとき、D800の36MPの高画素はニーズが高いからだ。アマチュアが撮った写真をプリントしたり、WEBに掲載するのであれば、それほど高画素は必要ない。

しかし、雑誌や広告など、大きなサイズで使用する場合、画像のピクセル数で使用できるサイズが制限されてしまう。商業印刷では350dpiの解像度が必要なため、16MPくらいの画素数だとA4サイズ程度が最大サイズになってしまう。A3とかB3などの、より大きなサイズで使用したいときには、画像を拡大使用することになるため、細部がぼやけてしまうのだ。

ユーザーとして感じるのは、CANONに比べてNIKONの広告展開が地味というか、インパクトや訴求力が乏しい気がする。顕著なのはTVCMで、CANONのCMはあれとかこれとかとイメージを思い出せるが、NIKONは印象が乏しく脳裏に浮かんでこない。
広告にどれだけの資金を投入できるかは、企業の余力がどれだけあるかでもあると思うが、NIKONはやや消極的に感じる。

よくいわれるのは、「CANONは後出しジャンケン」の製品投入だということ。新製品で新しい機能やスペックが話題になるが、NIKONが先に新製品を出し、CANONが後追いで同等かそれ以上の新製品を出す。CANONは先行する新製品の動向を見ながら、慎重に新製品を出すスタンスなのか、あるいは開発が追いつかないのか、いずれにしても後出しの利を見ているように思える。

上記の記事中にもあるが、安価なコンデジから高級一眼レフまで、守備範囲を広げすぎだね。製品数が多くなれば、それだけ生産ラインが多く必要になり、生産コストが高くついてしまう。普及機のコンデジは、もはやスマホカメラで代替できてしまうから、必要性の乏しいカテゴリだろう。

一眼レフの場合でも、機種はもっと絞っていいのではと思う。スペックの差がわずかで、価格がちょっと違うという程度では、結局安い方の機種に流れてしまう。選択肢がたくさんあることは、好みのものを選べる利点にはなるが、差がわずかだと選択肢の多さは逆にマイナスになる。

現状、一眼レフのラインナップは以下のようになっている。

NIKON・一眼レフのラインナップ


これを最小限に絞る。
Dfは独特なカメラなので別として、FXフォーマットは、D4SD810の2つ、DXフォーマットは、D7100D5300……の、計5機種にする。機能を削った下位機種は、価格がいくぶん安いというメリットしかない。
機種選びのときに考えるのは、自分が撮る写真に必要なスペックはなにか?…ということと、予算がどれだけあるか?…である。最終的には予算によって、上位機種ではなく下位機種を選ぶことが多いと思う。

機種を絞るとともに、価格も2~3割下げることだ。機種を少なくすれば、生産コストをいくぶんかは下げられると思うので、その分を価格を下げる分に回す。30万の機種が25万になれば、かなり価格的に魅力が増すはずだ。

2011年、タイで大規模な洪水被害が発生したとき、NIKONの生産拠点も被害に遭い、当時生産していたD800を国内で生産することになった。NIKONにとっては災難だったのだが、カメラユーザーにとっては朗報だったのだ。というのも、純国産の機種が手に入るからだ。国内工場でD800を生産するにあたって、タイから職工も呼び寄せたそうだが、それでも国内工場で生産されたカメラは、ブランド価値として高かった。NIKONのファンサイトでは、そういう評価だったのだ。私の持っているD800も国内生産されたものだ。

海外生産された機種は、NIKONのブランドであっても、ユーザーの気持ちとしては半国産のような気がする。ブランド価値を高めるためにも、純国産を謳うことはプラスになると思う。

カメラ本体以上に重要なのが、レンズだ。
レンズがよくなければ、カメラがどんなに高性能になっても真価を発揮できない。しかし、そのレンズの価格が高いのだ。一眼レフに二の足を踏む要因のひとつは、レンズが高いことにある。レンズの製作には高度な技術を要するため、日本のカメラメーカーが世界で大きなシェアを占めていられる。

オリンピックやサッカー・ワールドカップで、プロカメラマンが構えているカメラのほとんどがCANONかNIKONだ。プロカメラマンの多くがCANONかNIKONの2択なのだが、CANONの方が優勢なのも事実。その一因は、CANONの方がスポーツに強いというイメージがあるからだが、NIKONがけっして劣っているわけでもない。そのへんはイメージ的な戦略が、NIKONには乏しいからだろう。

カメラがNIKONであれば、レンズも純正のNIKONでそろえたいと思うのが、愛好家の気持ちだ。だが、純正レンズは高い。たくさんのレンズをそろえたいと思うと、予算的に足りない。

そこで、サードパーティのシグマやタムロンのレンズを選択する。価格は純正に比べて安いが、中には同じ焦点距離で、純正レンズよりも優れたレンズもある。ことに最近のシグマは、CANONやNIKONの純正よりも優れた性能のレンズを、純正よりも安い価格で出している。そうなれば、純正にこだわる必然性がなくなる。何本も必要となるレンズが他社に流れてしまうのも、不振の一因ではないかと思う。

業績の悪化は、新製品や新技術の開発にもブレーキになるのではと懸念する。
新製品を出さないと、メーカーとして停滞してしまうし、かといってたくさんの機種を出せば、余計にコストがかかる。ジレンマもあるのだろうが、息の長い製品を作ることも、これからは重要ではないかと思う。

フルサイズとAPS-Cの一眼レフでは、CANONとNIKONが2強になっているが、両社がフルサイズよりも大きいセンサーサイズの中判カメラを出すのではないかという噂が、あったりなかったり。現状の中判カメラ(俗に645カメラと呼ばれるが、フイルム時代の645サイズとは違う)は、あまりに高価すぎて、プロ用のカメラという印象だが、そこにアマチュアでも手が出せる低価格の製品が登場すれば、あらたな市場ができるかもしれない。ニーズは限られるが、競合相手は少ないので、1機種だけでも投入できればファンは集まる。

ともあれ、NIKONには頑張ってもらいたい。

諌山 裕

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