Categories: サイエンス歴史

未来予想の難しさ

“第6の大量絶滅”が起こっても、進化の歴史は続く」…に関連した話題。

100 years in the future world

 未来の予想は、なにかにつけて行われる。
 100年前には「100年後の世界」として、バラ色の未来を想像したものだ。
 未来予想で当たったものよりも、外れたものの方が多い。未来は予想通りには進まないということだね。

 最近の未来予想は、暗いものが目立つ。
 不景気な世相を反映して、明るい未来を想像しにくいのかもしれない。
 顕著なのが「地球温暖化の未来」だ。
 地球温暖化の未来は、あまりに暗い。一種の終末論ですらある。
 その暗い未来にならないために、今こそやらなければいけないことがある!……と、声高に叫ばれる。少々ヒステリックなくらいに。

ニュース – 科学&宇宙 – ローレンス・クラウスが語る未来 – ナショナルジオグラフィック 公式日本語サイト(ナショジオ)

◆空飛ぶ車を願ったのに、代わりにインターネットが生まれてしまいました。望んだこととは違った現実にたどり着いてしまった原因は何だったのでしょうか?

(中略)

◆では、未来には何が起こると予想しますか?

私たちの知っているこれまでの世界は、人間によって破壊されようとしています。地球は今、新しい時代に入ろうとしているのは確実ですが、この先どこへ向かおうとしているのかはまだ分かりません。

 「空飛ぶ車を願ったのに、代わりにインターネットが生まれた」というのは笑えるが、空飛ぶ車を願っていたのだろうか?…とも思う。

 もしかしたら、私たちは「地球温暖化を願っている」のだろうか?
 だから、これほどまでに地球温暖化のことが取り上げられ、問題にされているのだろうか?

 総意ではないにしても、地球温暖化を餌にして利益を上げようとしている人たちにとっては、願っていることだともいえる。予想通りに深刻な影響が出るとしても、それは数百年~数千年先の話だ。もっと悲観的な予想では数十年先だが、それでも今すぐに出てくる話ではない。
 地球温暖化で即死するわけじゃない。
 不安を煽られているだけかもしれない。少なくとも、数世代先の話だから、今生きている人たちにとっては、差し迫った問題ではない。

 既定路線のように言われている地球温暖化問題だが、一週間先の天気予報すら当たらないし、今年の夏は冷夏だというし、二酸化炭素濃度が高まって温暖化しているはずなのに、2000年以降の平均気温の上昇は予想より低いという。
 予想通りにはいかないという典型だ。

火山噴火、人為的温暖化の「減速」に一部貢献か 研究 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News

【2月24日 AFP】太陽光を反射する微粒子を大気中に放出する火山は人為的な炭酸ガス排出の影響を部分的に相殺してきた──そのように結論付ける研究論文が、23日の英科学誌「ネイチャー・ジオサイエンス(Nature Geoscience)」に発表された。特に過去15年間については、地球温暖化をめぐって常に議論の的となってきた。

これまでで最も暖かい年の上位14年のうち13年が、今世紀に入って発生していることからもわかるとおり、気温は容赦なく上昇している。しかし、その一方で、上昇速度が人為的な温室効果ガスの増加速度をはるかに下回っているのも事実だ。

 ……と、火山噴火が温暖化を減速させていた可能性があるという研究なのだが、これも「一説」にすぎない。
 ただ、この説でいえば、「人為的温暖化がなかったら、地球は寒冷化していた」ということになり、それはそれで大変な事態になっていたかもしれない話。

 先進国の大都市の多くは、高緯度地方にあり、寒波が襲来すると大きな被害が出る。先日の関東地方の大雪のように、大都市は寒さに弱い。温暖化よりも寒冷化の方が影響は大きい。

 寒波の襲来は温暖化の影響……という理屈も展開されているが、人為的な温暖化がなかったら、寒冷化でもっと大変なことになっていた……かもしれない。そう考えれば、むしろ温暖化によって、深刻な寒冷化を回避できたと、喜ぶべきなのではないか?……といった見かたもできる。

 人の一生は、80年前後くらい。(2013年の厚生労働省の発表による日本人の平均寿命は、男性79.59歳、女性86.35歳)
 時間的なスケールとしては、自分の一生がひとつの物差しになるから、10年単位くらいでしか過去と未来を実感できないと思う。
 10年後に、温暖化で地球が生物の住めないような星になる……というのであれば、差し迫った緊急事態になる。そんなことにはならないのだが、温暖化のイメージには煽られた切迫感がつきまとう。

 猛暑になったり、大きな台風が来たりすると、「温暖化の影響」とメディアも騒ぐ。しかし、猛暑といいつつも、過去に例のない猛暑だったかというと、もっと暑い夏が過去にはあったわけで、毎年毎年、猛暑を更新しているわけではない。年々温暖化しているのなら、去年より今年の夏の方が暑くなっていなくてはいけないわけだが、そうはなっていない。

 イメージと合致しないのが温暖化問題の矛盾でもある。
 その原因は、時間スケールの感覚にある。
 数年~10年単位の時間スケールでは、地球の気象を比べるには短すぎる。右肩上がりで、気温が上がり続けるわけではなく、ある年は上がるが、ある年は下がると、増減しながら徐々に上がっていき、100年前よりは0.7℃上がっているという。

「地球温暖化は進行しているのか?」研究者とメディア関係者の対話

地球の気温は20世紀の100年間で約0.7℃上昇しているが、大気中の温室効果ガス濃度は増加し続けているにもかかわらず、2000年頃からは明瞭な温暖化の傾向が見られない。

 「たった0.7℃」と捉えるか、「0.7℃も上がった」と考えるか。
 日常的な感覚では、何十度も上がっているような気がするから、0.7℃と聞くと「たったそれだけ?」と思ってしまう。
 去年の夏が猛暑だったから、「温暖化の影響だ」というのはイメージしやすいが、今年の夏が冷夏だったらそのイメージは崩れしまう。
 「あれ? 温暖化してるんじゃなかったっけ?」と。

 体感的に温暖化を実感しようとすることが、そもそも無理。世界中が同じように気温上昇しているわけではないからだ。夏は、ある地域では猛暑になるが、ある地域では冷夏になる。冬は、ある地域では暖冬になり、ある地域では大寒波に見舞われる。地球は全体としてバランスを取るようになっている。暑いところがあれば寒いところもある。大気は地球規模で循環しているからだ。

 100年で0.7℃だから、単純に積算していけば200年で1.4℃ということになりそうだが、そうもいかないのが地球の気象でもある。
 温暖化するにしても、その時間スケールは数百年~数千年単位での話。はっきりいって、今生きている私たちには関係ないともいえる。未来の世代のために……という発想は素晴らしいかもしれないが、数千年後の気象を正確に予測することは、まず不可能。スパコンでシミュレーションはできるが、不確定要素が多すぎて、シミュレーションそのものが限定的なものでしかない。

 過去、現在よりも温暖化していた時期には、海面が上昇し、海岸線は現在とは大きく違っていた。
 その顕著な例が、縄文時代だ。

けら研,かつて人類が縄文時代に経験した急激な温暖化 松本秀明,地球の温暖化に関する情報

 今からおよそ7千年前から9千年前の縄文時代早期に,人類は急激な気温の上昇を経験しました。これは,意外なことに現在危惧されている地球大気の温暖化やそれに伴う海面上昇の変化速度を遙かに上回る速度だったことが分かっています。

(中略)

現在,二酸化炭素等の排出による地球大気温の上昇,そして海水の熱膨張,氷床の融解などによる海面の上昇が危惧され,全地球的な環境問題となっています。IPCC(1996)は,100年後までに海面は13~94cm上昇すると予測しています。ここから算出される年間1.3~9.4㎜の海面上昇速度をどう評価するかの議論は他に譲るとして,これまで人類(新人)が経験した地球規模の海面上昇のうち,縄文時代早期のある期間に相当する今から9千年前~7千年前には,この数値を遙かに上回る年間17㎜の海面上昇を記録したことが地理学の研究成果から示されます。

 縄文時代だから、原因は産業活動による二酸化炭素排出ではない。
 これに比べたら、現在の人為的温暖化が原因だとされる変化は、微々たるものでしかない。自然界の気象変化の方が、人間が及ぼす変化よりも、はるかにインパクトが大きい。

 いずれにしても、1000年単位での話だ。最近の100年の変化では、木を見て森を見ずになっている可能性が高い。

 温暖化問題の真偽は、じつのところ1000年後になってみないと、答えは出ないものと思われる。
 1000年前に、1000年後の現在を想像できなかったように。

 かつて、核戦争の未来が予想され、核戦争後の未来が想像されたことがあった。核ミサイルのボタンが押される寸前までいったこともあったわけだが、最悪のシナリオは回避されて現在に至っている。核兵器は、人類を何十回も破滅させるだけの数が、現在も待機していることは事実。限定的ではあっても、いつか核兵器が使用される事態は発生するのだろうと思う。
 人間、そこまで理性的ではない。

 温暖化で地球が破滅するより、核戦争で人類が破滅する可能性の方が高いかもしれない。
 皮肉な話だが、核戦争で人類が破滅すれば、一時的に核の冬や放射能の汚染で、環境が悪化することにはなるが、数万年もすれば、地球環境はあるべき姿を取り戻す。

 そうすれば、「“第6の大量絶滅”が起こっても、進化の歴史は続く」で書いたように、人類の次に出現する種が、新たな進化を遂げるだろう。
 心配することはない。
 地球は太陽が赤色巨星化して消滅するまで、生物を宿す星として、その役割を果たすだろう。 

私は悲観的なのではなく、楽観的なのだ。
ぶっちゃけ、温暖化問題はナンセンスだと思っている。

 人類文明は、あと数千年は続くかもしれないが、数万年は続きそうにない。そんな先の未来を心配してもしかたがない(笑)。
 「トップをねらえ!」のように、12,000年後の地球に帰還したとき、そこに人類文明が存続していれば、科学は地球そのものを改造しているかもしれないけどね。

諌山 裕

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