東アジアカップに招集された選手選考を巡って、サッカー評論家たちがいろいろと発言しているのだが……
内容的には似通っている、ふたりの記事。
武田氏「ザックの闘莉王、寿人外し納得できない」 | 東スポWeb – 東京スポーツ新聞社
ただ…全体的な感想を言えば正直、がっかりだ。先月のコンフェデレーションズカップ(ブラジル)での惨敗を受け、Jリーグ得点ランキング1位(12得点)のFW佐藤や空中戦に強い闘莉王といった実力者の選出を期待したが、フタを開ければ若手中心のメンバー編成。しかも、初選出が10人でコンフェデ杯メンバー23人から19人もの選手を入れ替えた。
(中略)
このまま東アジア杯でも惨敗することになれば「初代表選手に経験を積ませた」や「若手のテスト」という言い訳は許されないだろう。指揮官の去就も検討しなければいけなくなる。少なくとも私はそう考えているし、場合によっては解任もやむを得ないと思う。
チーム力を上げるために、今こそ中村俊輔や闘莉王を招集すべき|集英社のスポーツ総合雑誌 スポルティーバ 公式サイト web Sportiva|J Football
これまでは、ある程度メンバーを固定してきたが、これからは新たな選手を積極的に起用していってほしい。Jリーグで結果を出している選手はすぐに招集して、チャンスを与えるべきだろう。
(中略)
そういう意味では、今度の東アジアカップ(7月20日~28日/韓国)に向けて、多くの新メンバーを招集したことはいい傾向だが、それが今回だけで終わってはいけない。
(中略)
そのエネルギーをより膨らませるには、若手の新戦力だけでなく、ベテランも呼んだほうがいい。横浜F・マリノスのMF中村俊輔やDF中澤佑二をはじめ、名古屋グランパスのDF闘莉王やサンフレッチェ広島のFW佐藤寿人、そして川崎フロンターレのFW大久保嘉人に、浦和レッズのMF阿部勇樹など、今季も結果を残していて、力のある選手はいっぱいいる。
(中略)
そんな真のチーム内競争があってこそ、日本代表は強くなる。にもかかわらず、「彼らの力はわかっている」とか「最終的には選考する可能性が低いから、招集するのは心苦しい」などといった理由で彼らを招集しないのなら、ザッケローニ監督には早々に代表監督の座から退いてもらったほうがいい。
若手の積極的起用とベテランの招集、そしてそれができない(結果を出せない)のなら監督解任……という論調だ。
武田修宏氏、木村和司氏、ともにS級ライセンスを取得しているのだから、日本代表監督になることは可能だよね。だったら、監督に立候補しなよ(笑)。
「オレが監督になれば、確実にW杯ベスト8になれる!」
……と、高らかに宣言すればよい。
スポーツライターやただの評論家は、机上の空論を書くしかないが、ふたりは実戦経験があり監督にもなれる資格を持っている。ザッケローニ監督がダメだというのなら、おふたりが監督する日本代表は、さぞかし素晴らしいチームになり、よい結果を出せるのだろう。
そうなるのなら、大賛成だ。
ただね、ザック批判をする人たちの言い分を読んでいると、政権交代前の民主党のような感じがする。自民党に対して、あれがダメ、これがダメ、こうすれば政治は変わる……と、さんざん理想論をぶちあげてくれたが、いざ政権を取ったら、なにもできず、なにも決められず、前よりも悪くなってしまって、国民は失望した。
なんとなく、そんな空気なんだよね。
武田修宏氏や木村和司氏が、日本代表監督になったとして、いったいどれほどのことができるのか。論評していることを実践できるのか。口で言うほど簡単なことなのか。……等々、いまいち説得力が乏しい。
東アジアカップに向けて招集された若手のうち、本大会にもメンバー入りするのは、多くても3~4人だと思う。求められているのは、ジョーカーになりうる誰か。
ベテランの招集に関しては、闘莉王は見てみたい気がするものの、ピークは過ぎているだろうし、チームにフィットするかどうかは疑問。クラブチームではいい働きをしていても、代表チームでは機能しない場合も多々ある。佐藤寿人や大久保嘉人なんかもそうだし、中村俊輔はハードワークが必要な今のチームでは動けないだろう。素人考えでも、誰を入れて誰を外すかというのは、なかなか悩ましい。
これまではメンバーが固定化されていて、若手が招集されないといって批判されてきた。東アジアカップでは若手ばかりが招集されて、またまた批判される。批判する人は、ザックのやることなすこと、全部が気に入らないんだろうね。監督はなかなか大変そうだ。
監督に求められる資質はなんだろうか?……と、考えてみると。
(1)指導力
(2)采配力
(3)育成力
(4)求心力(人望)
(5)信頼性
……といったところ。
私の個人的な感想として、ザッケローニ監督を採点してみると……
※各項目は10点満点。
(1)指導力……………… 7
(2)采配力……………… 6
(3)育成力……………… 8
(4)求心力(人望)……10
(5)信頼性……………… 8
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計………………39×2=78
100点満点に換算して、78点くらいかな、と思う。
ザッケローニ監督がダメだというのなら、80点以上の監督を引っ張ってこないとダメだ。ブラジルのスコラーリ監督は、たぶん100点満点の監督だね。
監督の個性や能力によって、上記の5つの要素が変わってくる。ザッケローニ監督の采配が批判の対象になることも多いが、もちろんそれも重要ではあるが、ザックの一番の魅力というか能力は、チームをまとめあげる「求心力(人望)」なのではないかと思っている。
監督と選手という主従関係では、「この監督についていきたい」と思わせる、尊敬や信頼感が必要だが、ザックはその点が抜きんでているように思う。
ときに、監督と選手の関係がぎくしゃくして、チームが空中分解してしまうことがあるが、「求心力(人望)」はもっとも重要な資質ではないだろうか。選手に尊敬されない監督は、監督として仕事ができないのではないか。
国際大会では、結果も求められることは事実だ。
東アジアカップに選ばれたメンバーは、いわば若手のオールスターといったところ。直前に集合して試合に臨むわけだから、チーム力としては弱いだろう。個々の能力をどれだけ発揮できるか、そして結果を出せるか。不安と期待が同等くらいにあるチームだが、もしもこの大会で若手が爆発的な活躍をしたなら、代表チームに新たな化学反応が起きることは期待できる。
サックが期待しているのも、そういう部分なのだろう。
くすぶり続ける監督交代論は、W杯開幕までいわれる。前回大会がそうであったように。
何度も書いていることだが、監督交代論をいうのであれば、監督が誰ならいいのかと提言が必要だ。誰でもいいから監督を交代させればいいわけではない。そんなことは、評論家たちもわかっているはず。
その監督候補が、武田修宏氏や木村和司氏だったら、いいのか?ってこと。
たぶん、「それじゃだめだ」という人が大半だろう(笑)。
だったら、誰なら監督としてふさわしいのか?
問われているのは、そこなんだよ。