有料メルマガの存在価値

 出版社が独自に有料メルマガを出すという。
 「出版社の編集力生かす」……そうなのだが、メルマガでその編集力は生かせるだろうか?

角川が有料メルマガ参入「ちょくマガ」 富野由悠季さんなど参加 「出版社の編集力生かす」 – ITmedia ニュース

 角川グループで雑誌事業などを手がける角川マガジンズは、作家などの書き下ろし記事を配信する有料メールマガジン配信サービス「ちょくマガ」を7月1日にスタートする。「出版社による初の有料メルマガ配信サービス」としており、編集力を生かしたコンテンツを配信していく。

 メルマガは、インターネットが普及し始めた初期の頃からあるオールドメディアだが、基本的なスタイルは変わらずにしぶとく生き残っている。
 一時期、無料で使えるメルマガ配信スタンドが乱立して、10社くらいがしのぎを削っていた。現在も生き残っているのは5社くらいだ。しかし、最大手の「まぐまぐ」を除いて、採算的に厳しいところが多いようである。

 無料のものが多いメルマガだが、読者を獲得しやすい反面、読まれずにゴミ箱行きになることも多い。ショップが発行するメルマガも多く、役に立つメルマガとスパムでしかないメルマガの格差が大きい。
 楽天で買い物をすると、メルマガが多数送られて来るようになる。いちおう、メルマガを購読するかどうかの選択肢はあるのだが、いちいちチェックを外すのが面倒なので、そのままスルーしている。対処として、スパムメルマガは、サーバーレベルでブラックリストに入れてしまうので、サーバーに届いた時点で削除だ。

 有料メルマガは、配信部数では無料版には及ばないものの、読まれるメルマガになる。読まなくなったら料金は払うのはバカバカしいから購読を解除する。料金的には数百円レベルが多く、まぐまぐの場合には50%の手数料なので、500円であれば250円が著者の手取り。100部の配信があれば2万5千円、1000部であれば25万円になる。一見、おいしそうな話なのだが、有料メルマガで1000人の読者を獲得するのは至難の業。
 まぐまぐの有料メルマガのランキングを見ると……

週間総合ランキング 有料メルマガ版 – まぐまぐ!

 上位に入っているのは、ニュース系、ビジネス系、恋愛系が多い。
 カテゴリ別ランキングを見ると、上位のものに「殿堂入り」のアイコンがついているが、有料版の場合には【創刊1年以上、発行部数200部以上】という条件がある。つまり、200部以上の読者を獲得するのが難しいということだ。
まぐまぐ・ニュース系ランキング
まぐまぐ・ビジネス系ランキング
まぐまぐ・恋愛系ランキング

 このカテゴリ別ランキングで、1位のメルマガと10位のメルマガでは、読者数が1桁~2桁くらい違う。「殿堂入り」がついていなければ、200部以下なので、売上げは微々たるもの。
 書籍でいうところの印税率が高いから、少ない部数でもそこそこの収益にはなるが、メルマガで食っていくのは簡単ではない。

 私は恋愛系の有料メルマガを購読していたことがあるが、内容もさることながら著者の魅力というかファンにならないと購読しないものだ。
 ネット上には無料の情報があふれているが、有料メルマガを購読するのは、そこにしかない情報、希少価値としての情報に対価を払いたいからだ。いわば、産直の食品や限定販売のレアものを買うような感覚だ。

 角川の有料メルマガがどのような形になるのかは、まださだかではないが、雑誌のような多数の著者の記事が一緒に掲載される「てんこもりメルマガ」では、魅力は乏しくなる。興味のない著者の記事には、金は払いたくないものだ。
 著者それぞれで個別に出すのであれば、その著者のファンは食いつくだろう。
 じつのところ、編集力というのはあまり必要ではなくて、著者の魅力がそのままメルマガの魅力になる。成否の鍵は、ファンを集められる著者の人選にあるといってもいい。
 雑誌感覚のままメルマガを発行すると、たぶん失敗するよ(笑)。

諌山 裕

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