ロボット研究についての面白い記事があった。

「人とロボットの秘密」という書籍を、まるごと連載記事として掲載していくという。
書籍とネットのコラボではあるが、面白い試みであると同時に冒険でもある。果たして利益の上がる書籍の売り上げに、どれだけ貢献するのだろうか?

ともあれ、長い記事なので、最初から読んだ方がいい。
一覧が以下である。
「人とロボットの秘密」最新記事一覧 – ITmedia Keywords

現時点で最新の記事には、「不気味の谷」という話が出ていた。
人とロボットの秘密:第2章-3 アンドロイドが問う「人間らしさ」 石黒浩教授 (1/2) – ITmedia News

「不気味の谷」とは、石黒教授の師であり、日本のロボット開発の先駆者である森政弘氏が提唱した概念である。

ロボットの外見や動きが精密になればなるほど見る人の親密度は増す。しかし、それがある段階までくると親密度は激減してしまい、逆に不気味に感じるようになる。そこを越えて、人間と区別できないところまで外見や動きがリアルになれば、親密度がまた急上昇して最大になるだろうという説だ。

実体を持ったロボットでもある話だが、映像の中のCGでも同じようなことがある。
CGといってもピンキリだが、作り手の感性や技術の熟練度によって、完成度は違ってくる。リアルでまるで生きているかのように見える場合と、見た目はリアルだがいかにも作り物と見えてしまう場合。

その違いを一言で言えば「自然か、不自然か?」ということ。
自然に見える場合は、違和感が少ない場合。どこかに違和感を感じると不自然に見えてしまう。

だが、必ずしもリアルな現象をリアルに表現することで「自然」に見えるわけではない。実際には「嘘」なのだが、自然に見えることもある。
それは脳が現実をイメージとして加工してしまう……つまり、錯覚を起こすからだ。

人間に似せたロボット(ここではアンドロイドだろうが)を見て、不気味と感じるのは、生きている人間とは違う、違和感を感じてしまうからだ。
その原因はなんなのか?

リアルに再現しても、何かが足りない。
それは表情であったり動きであったりするわけだが、微妙な違い……それはノイズあるいは冗長(無駄な要素)なのかもしれない。

人は直立不動の姿勢を取っていても、実際には不動でいられるわけがない。常に微妙に体は揺れている。それをCGでも再現して、常にゆらゆらと揺れるように表現すると、逆に不自然になってしまう。そういう失敗作の作品が過去にあった。

ゲームでいえば、プレーヤー視点で移動する歩きを表現するために、画面がゆらゆらと上下する演出をしているものがある。これは目眩がして船酔いしてしまう。歩いていれば、確かに頭は上下しているわけだが、私たちはその上下動を補正して、安定した視覚で周囲を見ている。それは脳の作り出すバーチャルな世界……嘘でもある。それが無理矢理上下に揺さぶられると、リアルとは感じなくなってしまうのだ。

アンドロイドが人間のように見えるかどうかは、生きているように見えるかどうかだろう。
生きているように見える……とは、どういうことなのか?が問題。

たとえば、酔いつぶれた人が道端に寝っ転がっているとしよう。それをやや離れたところから見たとき、酔いつぶれているのか死んでいるのかは、判断できないときがある。近づいていって、瞼がピクピク動いたり、胸が動いて呼吸していたら、生きていると確認できる。

つまり、生きていると判断できる、なにがしかの情報……サインが必要だということ。
それらの生きている「サイン」というのは、ロボットの機能としては、余分なもの……冗長でありノイズなのだろうと思う。
(たぶん、続く(^_^))

諌山 裕

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