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電子ブックストアが生き残るための教訓は…

電子ブックで数歩先を行くアメリカでは、電子ブックストアの淘汰が加速しているようだ。
この状況は、あとを追う日本の電子ブック市場にも当てはまるはずだ。むしろ、市場規模が小さいだけに、より厳しいものになるのことは予想できる。

電子書籍の未来――独立系電子書店の死 – ITmedia eBook USER

 独立系電子書店が倒産する主な理由はイノベーションの不足にある。ここ数年で倒産した企業のWEBサイトを見ると、ある傾向に気づくだろう。全体的なサイトデザインはオープンからほとんど変化がなく、ユーザーインタフェースは貧弱。検索機能はお粗末で、求める作品を直感的に探しだすのは不可能だ。

これらの企業はサイトの更新をせず、適切なサーチアルゴリズムへの投資を行わず、今日の目が肥えた顧客に訴求する新技術の採用も行わない。2013年に電子書籍を販売することに関して、時代遅れの現状維持を続けるのは、すぐにでも倒産に追い込まれることを意味する。

……ということで、日本では「あそことあそこは該当するな」といくつか思い当たる。
英語圏での3強は、KoboBarnes & NobleAmazon(kindle)に加えて、AppleのiBookが伸びているという。

アメリカでの比較的新しいシェア(2012年7月)を調べてみると、以下のようなデータがあった。ただし、セルフ出版についての記事の中に出てくる数字。セルフ出版は今後の潮流になると思われるので、傾向を見る上では参考になると思う。

Self-publishing ebooks: Why maximizing distribution matters | Musings and Marvels

●Amazon: 62%
●Barnes & Noble: 22%
●Apple: 10%
●Kobo: 1%
●Sony: 2%
●Google and others: ~3%

ここではkoboが4位に脱落している。アメリカでのkoboの凋落は日本の楽天koboにも少なからず影響しそうだ。
別のデータは以下(2013年2月現在)。
Apple iBooks at 24% Worldwide Ebook Market Share? One Analyst Thinks So | Digital Book World

In the U.S., ebook market share is often cited as breaking down as follows:

– Amazon: 65%
– Barnes & Noble: 25%
– Apple: 10%
– Others: Rounding error

市場の大きなアメリカでさえ、生き残れるのは3強なのだから、市場の小さな日本ではせいぜい2強くらいだろう。
ということは、Amazonともう1つ。

日本での利用者視点でのランキング(2013年4月現在)では以下のようになっている。

ASCII.jp:電子書籍サイトで好評なのはアマゾン「Kindleストア」

電子書籍の購入時に利用したサイトについての調査結果では、トップとなったのは「アマゾンKindleストア」(32.9%)。2位は「iBook ストア」(23.7%)で、以下、「楽天 Kobo」(13.9%)と「電子書店パピレス」(13.3%)が続いている。

数字だけではわかりにくいので、グラフにした。

電子書籍の購入時に利用したサイト


Amazonが首位であることは日本でも同様だが、2番手がiBookストア(Apple)と、日本参入が最後になってしまったiBookストアが健闘している。
以前取り上げた「Amazon、kindleストア強し」とは、調査時期と対象の違いから、2番手以降は異なる結果となっている。

顕著なのは、楽天Koboが苦戦していることだろう。海外発のストアとしてはいち早く(というより勇み足だったが…)参入したにもかかわらず低迷している。
楽天Koboは日本の電子ブック市場でシェア50%を取ると豪語しているが、先行きは暗い。

楽天の豪語ぶりは「電子ブックのKoboとSonyの行く末」で取り上げたが、そのときの裏話が別の記事に出ていた。

楽天がぶち上げる「打倒アマゾン」に出版社は眉唾…kobo事業説明会に出版界から非難轟々(1/3) | ビジネスジャーナル

 出版社だけでなくマスコミ各社も集まったこの説明会で、三木谷浩史代表取締役社長兼会長は、3年後の16年にkoboの年商を500億円に到達させるとし、さらに日本の電子書籍市場が1兆円になると予測される20年には、そのシェアの50%をkoboで獲得したいと息巻いた。

(中略)

実は、現場にいた出版業界陣はこれを眉唾ものとしており、説明会に対しても、何をいまさらと非難轟々だったようだ。

(中略)

アマゾンに比べて楽天ブックスは、出版社との協力体制が、現場レベルではまったくできていないのが現状。楽天の担当者は、すぐ替わったり、辞めたりする。その上、担当者が不在のまま、なんの音沙汰もない時期すらあった。アマゾンはネット書店が得意とする予約注文にかなり積極的であるのに対し、楽天ブックスの対応は、新刊の情報がきちんと流れているのかもよく分からないほど、お粗末。

(中略)

楽天は、SRPという販促サポートを年間を通じてやるので、キックバックを要求してきた。しかも金額を聞いたら、ありえないほどの高額だった。アマゾンとの年間契約はそれなりの売り上げがあるから支払っているが、うちとアマゾンとの取引額に対して10分の1ほどしかない楽天ブックスが、数百万円単位のキックバックを要求してきたので、驚いた。ほかの出版社にも話を聞いたが、同じように突っ返したようだ

(中略)

楽天ブックスの取り組みはアマゾンの真似ばかり。それで本当にアマゾンに追いつけるほどの売り上げを達成できるのだろうか? kobo事業も、出版社が楽天にだけしか電子書籍を配信しないことはありえないのだから、コンテンツが今の10倍になれば、アマゾンの取り扱いも10倍になる。それでアマゾンに追いつけるのだろうか?

楽天に批判的な記事なので、その分は割り引いて見る必要はあるが、それでも厳しい状況にあることは想像できる。
電子ブック市場の調査は、今後も行われていくだろうから、Amazon、Appleに続くストアがどこなのか、あるいはどこが脱落するのか、戦国時代はしばらく続きそうだ。

諌山 裕

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