新型コロナに対するリスク評価の更新を

新型コロナパニックは、日本はもとより世界的にも下降線になってきている。
新しいウイルスのため、対処が後手に回ってしまったのはどの国も同じ。治療法が確立していなかったから、できることに限界もあった。

パンデミックとなって、多くの人が亡くなったのは痛ましいことではあるのだが、新型コロナのリスク評価は結果としての数字から冷静に考える必要がある。

1月〜2月に想定されたリスク評価は、適切だったのかどうか。
そのリスクの脅威度によって取られた対策は、どの程度有効だったのか。

過去の記事を振り返ってみると……

「新型コロナで死亡する日本人は57万人」米著名シンクタンクが掲載する報告書の中身(飯塚真紀子) – 個人 – Yahoo!ニュース(3月6日付)

 国別の推定死亡者数も下記のように表化されており、日本の場合、その数は最悪のシナリオで57万人、最善のシナリオでも12万7000人となっている。

ちなみに、アメリカの場合は、最善のシナリオで23万6000人、最悪のシナリオで106万人だ。アメリカでは毎年、インフルエンザで約5万5000人が亡くなっているが、それをはるかに超える数である。

なお、韓国の場合は最善のシナリオで6万1000人、最悪のシナリオで27万2000人、イタリアの場合は最善のシナリオで5万9000人、最悪のシナリオで26万5000人と日本より推定死亡者数が少ない。

とまぁ、絶望的な予想になっていた。
表にすると以下。

国名 最善のシナリオ死者数 5月20日現在の死者数
アメリカ 23万6000人 9万2258人
韓国 6万1000人 263人
イタリア 5万9000人 9万2258人
日本 12万7000人 763人

予想はことごとく外れている。
イタリアは予想よりも多くなったが、もう一段悪い予想(14万7000人)よりは少ない。そして、日本や韓国は桁外れに少なくなった。

こうした予想を根拠に、日本では15万人の死者が出ると、専門家と称される人たちは社会に不安を植え付けたのが、2月〜3月にかけての状況だった。
緊急事態宣言の発令の根拠は、この予想に基づいていた。

最悪の事態を想定することは必要ではあるのだが、未知のウイルスだった新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)が、どの程度の感染力と致死率なのかが、少しずつ見えてきて、リスク評価は変わってきたはず。しかし、いまだにリスク評価の更新が行われていないように思う。

強敵のラスボスかと思ったら、じつは小者のスライムだった……みたいな話。
致死率も当初推定された数字よりも低くなりそうで、0.1〜0.5%程度になりそうだ。
この数字は、季節性インフルエンザ(約0.1%)とあまり変わらない数字だ。

日本での死者数が著しく少ないのは、「ジャパン・パラドックス」とか「ジャパン・ミラクル」などと揶揄されていたが、どうやらBCG有効説が一理ありそうだ。

対コロナ・ミラクル日本の立役者はBCG日本株(団藤保晴) – 個人 – Yahoo!ニュース

京阪神も緊急事態宣言から脱しそうであり、欧米から不思議の目で見られるコロナ対応。囁かれたBCG接種の対新型コロナ免疫効果が、日本株で歴然と効いていると数字に現れました。ミラクル日本の秘密が解けました。日本株接種国は人口百万人当たりの感染者が概ね百~2百人、百万人当たり死者はことごとく一桁で済んでおり、死者で数百にもなる欧米各国と桁が二つ違います。

(中略)

強制措置もなしに緊急事態宣言も解除が近い、なぜ日本は悲惨な欧米のようにならないのか、「ジャパニーズ・ミラクル」と言われたりして海外メディアも不思議でならないようですが、守護神BCG日本株の存在は意外に見落とされていると思います。

このBCG有効仮説について、専門家会議は「エビデンスがない」という答えをしたらしいが、その答えは答えになってない(^_^)b
言い方を変えれば「わかりません」ということなのだが、わからないのなら検証するのが医学であり科学だろう。オランダではBCGについて有効性の検証を始めたとのことだが、有効と思われるのは日本株なのだから、日本が世界に先駆けて検証すべきことではないのか?

仮に、BCGが有効だとすると、私たちはすでに新型コロナに対するワクチンを手にしていて、接種もしていたことになる。
これはとても重要なことだ。
私たちは新型コロナに対する対抗手段を持っていたのに、緊急事態宣言や経済を犠牲にする過剰な自粛をした。武器を持っていたのに、丸腰だと思い込んでいたのだ。無駄だったとはいわないが、やりすぎだったとはいえる。

BCG有効仮説は、きちんと検証すべきことだ。

上記の記事中の図表で、もうひとつリスク評価の参考になる数字がある。
それは100万人中の死者数の数字だ。この数字は、新型コロナで死に至るリスクの度合いを算出できる。(致死率ではない。致死率は、感染者数に対する死亡の割合)

▼100万人中の新型コロナによる死亡リスク

国名 死亡者の割合
アメリカ 0.027%
イギリス 0.051%
スペイン 0.059%
ドイツ 0.0095%
日本 0.0006%

おおざっぱにいって、これが新型コロナの脅威度だといえる。
多くの死者を出したスペインですら、0.059%とリスクは低く、日本では0.0006%と極めて低い。逆にいうと、日本では99.9994%の人が新型コロナでは死なないということ。
これは交通事故の年間死者数の割合(約0.0033%)よりも低い数字だ。

インフルエンザはどうかというと……

なんと1日50人以上「インフル死者」が日本で急増する不気味 怖いのは新型コロナだけじゃない (2/5) | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)

月別のデータを見ると、昨年1月にはインフルエンザで1685人の方が亡くなっている。1日平均で死者54人となる計算になる。

同じように感染が広がり犠牲者が出るウイルス感染症であるのに、既知の病だからといってこの「54人」の病状についてはほとんど報道されることがないのもバランスが取れていないのではなかろうか。昨年2019年もデータが公表されている9月までにインフルエンザ死亡者数は3000人を超えている。この人数は、医師が死因をインフルエンザと認めた人のみである。インフルエンザで入院した人でも、肺炎を併発したり、持病が悪化し心不全などその他の病気で亡くなったりした場合は含まれない。

……ということで、インフルエンザの方が圧倒的に死者数が多い。
昨年(2019年)の1月だけで、1685人も亡くなっている。この時点で新型コロナを超えているのだが、インフルエンザでは緊急事態宣言も自粛要請も出されない。

リスク感覚がおかしいと思わないか?
インフルエンザも新型のときは大騒ぎしたが、喉元過ぎればなんとやらで、もはや季節性インフルエンザで数千人が死のうが、誰も気に留めない。オリンピックも、インフルエンザの流行だったら延期にはならなかっただろう。

今年のインフルエンザはというと……

2019-2020シーズン、インフルエンザ・肺炎死亡報告(東京)/NIID 国立感染症研究所

……と、年初から東京では毎週100〜120人ペースで死者が出ていた。14週目までの時点で、新型コロナの死者数を上回っていたが、そのことはほとんど報道すらされていなかった。14週目(3月末)にガクンと落ちているのは、新型コロナ騒動が始まって、自粛ムードが高まってきた頃と合致する。

交通事故のデータも拾っておこう。
今年になってからの交通事故の死者数推移。

交通事故の月別死者の推移(2020年1月〜4月)

1月 2月 3月 4月 5月 6月 上半期
令和2年 (2020) 262 247 239 213 961
1日当たり死者数 8.5 8.5 7.7 7.1 7.9

交通事故に流行などというのはないので、年間を通して多少の増減はありつつも、ほぼ一定のペースで死亡事故が起きている。
公表されている4月までのデータで、961人の死亡。これもすでに新型コロナの死者数を超えている。リスクとしては交通事故死の方が高いのだ。
しかし、こうした数字はニュースとして扱われることはほとんどない。交通事故で何人死のうが、無関心だからだ。

相変わらず多くの人がマスクをしているが、これからの暑い季節では、マスクは熱中症リスクを高めるともいわれている。
ということで、昨年の熱中症の死者数データ。

熱中症による死亡数の前年比較(2019年)

昨年は熱中症で1581人が死亡。これも現時点の新型コロナの死者数より多い。
マスク着用による、マスク熱中症が増えるとすると、この夏はさらに死者数は増えるかもしれない。熱中症のシーズンは6月〜9月なので、これからが本番。新型コロナのリスクと熱中症のリスクと、どっちが高いか? コロナを恐れてマスク熱中症で死んじまっては元も子もない。

専門家会議は、当初の予想が過大であったことを認めて、リスク評価をし直すべきだと思う。
第2波、第3波もくる……というのは、たぶん正しいが、脅威度としては低い。
日本が甘々の対策で、死者数が著しく低かったのには理由がある。それがBCGなのか、生活習慣なのか、人種的なことなのかを解明することだ。それが専門家のやるべきこと。

脅威度がインフル並だとするなら、もはや自粛もマスクもソーシャルディスタンシングも不要だ。
COVID-19が季節性インフルエンザと同様に、毎年流行するようになるとしたら、ジタバタしても始まらない。仕方のないリスクとして、受け入れるだけだ。

 

諌山 裕

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