心とは?

なにかとAI、AIと騒がれるのだが、現在成し遂げられているAIと、未来像としてのAIがごっちゃにされている感がある。

タカラトミーがAIを搭載したオモチャを発表したというニュースなのだが……

タカラトミー“心を持つAIロボット”発表|日テレNEWS24

 おもちゃメーカーのタカラトミーは、人工知能を搭載し自分の感情を表現するロボット型のおもちゃを発表した。

タカラトミーが発表したのは、感情を表現するロボット「COZMO」。スマートフォンの専用アプリと連動させれば、人の顔や自分が置かれた状況などを認識して、それに合わせた1000種類以上の感情を表現する。

例えば、自分の腕が届かない高さまでブロックを積まれてしまうと怒ってブロックを崩したり、あらかじめ顔を認識した相手が笑いかけると笑顔を見せたりするという。

プログラミングも学習できる「COZMO」は、2万6980円(税抜き)で発売される予定。

感情表現ができるからといって、「心」があるわけじゃないよ。
その感情表現は、動画を見る限り、擬人化し、記号化した表現でしかなく、ある種のギャグのようにすら見える。

基本的には、入力に対して、適切と思われる用意されたアクションを起こしているだけだ。
それを「心」とはいえないね。

そもそも「心」とはなにか?

という、科学的な説明と根拠を明確にしないと、「心がある」とは明言できない。
この問題は、AI関連の話題で、度々書いていること。

人間には「心」がある。
犬猫をはじめとした動物にもある。
では、魚類はどうだろうか?
昆虫は?
植物は?
粘菌は?
細菌は?
……と、生命のどのレベルで「心」が発生するのか、諸説あり、明確にはなっていない。
そして、「心」が、どのようなメカニズムで発生するのかも、明確ではない。

「心」がなんであるのか解明されていないのに、人工的に「心」を作り出すことはできない。

このオモチャの感情表現で、心があると錯覚するのは、人間がオモチャを擬人化して感情移入しているからにすぎない。ないものをあるように、人間が勝手に意味づけしているんだ。

伝統工芸で、ゼンマイ仕掛けのからくり人形があるが、その動作は人間的な動きをぎこちなく模倣しているだけにも関わらず、それを見る人が、あたかも生きているかのように想像力を働かせることで、人形に命が吹き込まれる。

現代の電気仕掛けのロボットは、もっと巧妙かつ精巧なからくり人形になっているだけなんだ。それがよりリアルで、芸が細かいことで、あたかも心があるかのように錯覚する。ロボットに「心」を付与しているのは、人間の「脳」の中の想像力だということ。

そこを勘違いしないこと。

「心」のモデルが人間であるなら、心を持ったAIは、迷ったり悩んだり後悔したり、あるいは自分の存在価値を疑ったり、快感や恐怖を感じたり、人間を信用できず疑心暗鬼になったりするかもしれない。AIが心を持つことは、本当に必要なのかと思ってしまう。

人間に限りなく近づいたアンドロイドとしては、映画「ブレードランナー」に出てくる「レプリカント」が象徴的だ。

物語上では、レプリカントは人間と区別ができないほどの「心」を持っている。AIの究極の姿ともいえる。
しかし、彼らは心を持っているがゆえに、考え、悩み、迷い、死ぬことに恐怖し、自分たちを生み出した人間を憎悪する。

はたして、AIが心を持ったとき、心穏やかに幸せになれるだろうか?
人間がそうなれるとは限らないように、心を持ったAIも苦悩するかもしれない。

感情を模倣するAIを作ろうとしているが、模倣とは演技であり「嘘」だ。
言い換えれば、AIは巧妙な詐欺師だともいえる。
人がAIに話しかけて、なにがしかのリアクションを返してくるのは、設問に合致する嘘をついているだけだ。

「ねぇ、ペッパー。わたし、美人?」
《世界で一番の美人は、あなたですよ》
「そう。うれしいわ」

魔女の鏡のように、相手が望む答えを返す。
《美人とされる顔の造形と比較すると、あなたは美人の範疇には入りません》
と、事実を正直に返したりはしない……と思う(^_^)

囲碁や将棋をするAIは、ゲームのルールに則った最適解を導き出して勝利する。
人とのコミュニケーションを目的とするAIには、ゲームのような正解はない。パターンはあるが、的外れの返答でも、会話らしきものは成立する。
人が嘘をつくときは、多少の良心の呵責はあるものだが、AIは嘘で返答するしかない。

「この料理、美味しいと思う?」
《スパイスが効いていて、濃厚なソースが美味しいと思いますよ》
「なるほど」

AIは料理をしたことがなくても、味覚がなくても、美味しいという評価があれば、あたかも試食したかのごとく会話に盛り込む……かもしれない。
しかし、それは嘘なのだ(^_^)。

AIに嘘をつかせることで、親近感のあるキャラクターを演じさせることが、はたしてAIの発展に望ましいことなのだろうか?

嘘つきの人間は信用をなくし嫌われるが、嘘つきのAIは歓迎されるのだろうか?

ふと、そんな疑問が浮かぶ。

諌山 裕

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