日本人はロボット好きだ。
 鉄腕アトムからガンダムまで、マンガやアニメでロボットに対してプラスイメージができあがっているからだろう。
 実社会でも、産業用ロボット、掃除ロボット、介護ロボットなど実用化もしくは実用化されつつあるものもある。
 高齢化が進み、少子化も進んで、日本は労働力不足になっていくという。
 そこで期待されているのが、代替となるロボットだが……
Yahoo!ニュース – ロイター – シルバー特集:労働人口が減少する日本、解決策はロボット

 [東京 27日 ロイター] 見た目は車輪の付いた洗濯機。都内の高層ビルの廊下を掃除するこの装置、実はロボットだ。高齢化が進む日本にとって、労働人口の減少にどう対応するかが緊急の課題となっている。その解決策として、研究者はこうしたロボットに期待を寄せている。
  富士重工業<7270.T>が開発したこの掃除ロボットは、すでに国内のビルやマンションなど13棟で使用されている。掃除ロボットが稼動するのは、オフィスが無人になる夜間。フロア間の移動にはエレベーターを使い、エレベーターから「清掃運転中です。乗車できません」というメッセージが流れると、ロボットが乗り込む。
 世界で稼動中の産業用ロボットのうち、日本は4割を占めるロボット大国。だが、家庭やオフィスなど工場以外で使用できるものはまだ少ない。日本の人口は2055年までに65歳以上が4割を占めると予測されており、研究者は高齢者の生活を支援する賢いロボットの開発を急いでいる。「少子高齢化によって(ロボットに)少し助けてもらう状況にならざるを得ない」と東京大学情報理工学系研究科の下山勲教授は言う。

 研究者の意気込みはわかるし、ロボット技術の発展は恩恵も大きいと思う。
 だが、ちょっと待て。
 労働力不足をロボットで補うことは、ほんとうにプラスなのだろうか?

 たとえば、以下のニュース。
Yahoo!ニュース – 時事通信 – 8月失業率、3.8%に悪化=有効求人倍率は1.06倍

 総務省が28日発表した労働力調査によると、8月の完全失業率(季節調整値)は3.8%となり、前月比0.2ポイント悪化した。完全失業者数は前年同月比23万人減の249万人で、就業者数は同19万人増の6446万人だった。

 労働力不足といいながら、249万人の失業者がいる。
 個々の能力や仕事の適性があるから、単純に数字だけでは推し量れないことだが、仕事にありつけない人がいることは事実だ。
 また、企業も選り好みをする。誰でもいいから雇うというわけではない。求めている労働力と、余っている労働力にギャップがあるということだ。

 企業にとってロボットのメリットは、人を雇うときのような給与や待遇面でのコストと保障が必要ないということだ。待遇が悪いからと文句も言われないし、命じたことを黙々とこなすロボットは、理想的な労働力なのだろう。怒鳴りつけても、蹴飛ばしても、ロボットが壊れることはあっても裁判沙汰になることはない。いわば、ロボットは労働力というよりは、都合のいい奴隷に近い存在だ。
 極論すれば、企業は労働力を求めているのではなく、手足となる道具を求めているともいえる。
 2055年になっても、やはり失業者はいるだろう。人間の代わりに仕事をするロボットの登場は、社会から人間性が消えていくことなのかもしれない。
 現実のロボットは、私たちに「夢」を見せてくれるだろうか?
 それとも、仕事が奪われるという「悪夢」を見せてくれるのだろうか?

諌山 裕

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