ふと、「ブレードランナー」が見たくなって、久しぶりに見直した。
1982年公開の本作の中では、2019年の未来という設定だった。
現在(2022年)からは3年前であり、コロナ以前の年だ。
1982年から約40年後の世界。
2022年に生きる私たちにはすでに過去。
40年後なら、こんな未来かもしれない……という未来感が背景にあったのだろう。
当時は、たしかに未来を感じた。
しかし、現実の2019年は、そうはならなかった。
見直してみて、特に印象的なシーンを挙げると……
ブレードランナーの世界観を象徴していたのが「スピナー」だ。
スピナーは、地上も走れるし空も飛べる、文字通りのエアカー。その駆動方式は、「従来の内燃機関、ジェットエンジンに加え、反重力エンジンという3つのエンジンによって推進されている」という設定だ。
現在開発中の「空飛ぶクルマ」は、大型のドローンであり、ヘリコプターと同様にプロペラ(ローター・ブレード)で飛ぶ。テクノロジーとしてはローテクなんだ。
ジェットエンジンを使うホバーボードなんてのはある。しかし、地上を速く走るためにジェットエンジンを積んだ車はあるが、車を空に飛ばすために積んでるものはない。理由のひとつは、ジェットエンジンは大きな推力を出せるが、燃料をバカ食いするからだろう。
反重力エンジンなんてのは、いまだ空想の産物。
これが実用化されたら、未来は劇的に変わる。エネルギー革命といってもいい大発明になる。現在から50年後でも、登場しているかどうかは怪しい未来テクノロジーだ。
様々な端末についているモニタは、みなブラウン管式だった。
無理もない。1982年当時、液晶モニタは実用化されていなかった。
シャープが1987年に3インチの液晶カラーテレビを発売したが、一般に普及し始めたのは2001年になってからだ。
まさか、液晶に置き換わるなんて、当時は想像できなかったというわけ。
スピナーが飛んでいる未来だが、誰もスマホを持っていない(^_^)b
そりゃそうだ。個人が無線端末を持ち歩く未来なんて、誰も予想しなかった。それを可能にするテクノロジーがなかったからだ。
携帯式の無線機はあった。トランシーバーやアマチュア無線などがその例だが、チャンネル数は少なく、一方通行の通信だったし、無線機自体も大きかった。手のひらに載るような携帯電話は、技術的に無理だったんだ。
それを思うと、突出して進歩した技術だね。
これまた予測できなかった技術革新の例だね。
現在ではLEDが当たり前になっている。
発光する半導体の発見は1906年と古いのだが、商品化されたのは1962年で赤色のみだった。
照明として白色光を発光させるには、青色LEDが世に出る1993年までかかった。
蛍光灯は、特殊な用途を除いて絶滅しつつある。
登場人物は、ところかまわずスパスパとタバコを吸っていた。その煙が空気感にもなっているのだが、2019年に世界的な嫌煙運動になるとは予想されていなかった。
世の中の風潮が、こうも様変わりするのか?……という典型例にもなっている。
ブレードランナーの世界を成立させる、重要なファクターでありテクノロジーが、レプリカントだ。
レプリカントはロボットでもアンドロイドでもなく、生物的な人造人間だ。
人間と区別できないほどの内部構造と代謝をしているから、レントゲンなどで透視しても区別がつかない。
そんな超テクノロジーは、あと100年でも可能になるかどうかは疑問だ。
……とまぁ、未来の私たちから見ると、1982年の未来感はずいぶん外れていたともいえる。
それでも、名作SF映画であることに変わりはない。
古くて新しい、ノスタルジックな未来世界だからね。