出生数が急減は必然

「出生数90万人割れ」というニュース。
人口減少に転じた日本の先行きとしては、必然でもある。
むしろ、際限なく増え続けると考える方がおかしい。

「出生数90万人割れ」 Twitterでは「当たり前」「もう手遅れ」の声 怒りとあきらめが漂う / ITmedia

日本の出生数が急減しており、2019年は90万人を割る可能性が高い──という報道が伝わり、Twitterでは「当たり前」「自分の生活で精一杯」「安心して子どもを産める世の中ではない」といった声が相次いで投稿され、トレンド上位に「出生数90万人割れ」が入りました。関心の高いテーマですが、投稿の多くには怒りとあきらめが漂っています。

90万人割れ、出生率減少を加速させる「子ども部屋おじさん」:日経ビジネス電子版

 想定より早いペースで少子化が進んでいることに対しては、団塊ジュニア世代(1971~74年)の高齢化が進み、出産適齢期でなくなったことや、20代の女性が578万人、30代の女性が696万人と、出産期の女性の数自体が減っていることが主な理由に挙げられる。しかし、こうした人口動態の変化は、17年時点である程度把握できていたはずだ。なぜ狂いが生じたのか。

(中略)

非正規雇用の増加、給料の減少、社会保障費用の増大と、若年層を取り巻く雇用環境は厳しい。こうした経済的環境が未婚率を加速させている部分はある。だが、天野氏は未婚率の上昇は必ずしも経済的理由とは限らないと話す。「20~40代の独身男女の6~7割が親や親族と同居している。子どもを手元に置いておき、仕事や結婚に関してまで口を出す親が昔より増え、自立できない若者が増えている。結果、結婚しようとしない若者の“増産”につながっている」(天野氏)というのだ。男性の方が数が多いこともあって、天野氏はこうした現象を「子ども部屋おじさん」と呼んでいる。

なにごとにも上限がある。
経済成長だって永遠に右肩上がりになるわけではないし、寿命にしても人生100年時代などといっているが、それが200年、300年となっていくわけではない。
人間は生物だということを忘れている。

少子化の原因はいろいろといわれているが、もっとも基本的なことは生物としての限界だろう。
ある環境下で生存できる生物の数には限界がある……という自然界のルールだ。
地球全体で許容できる人口にも限界がある。その限界に達するのは時間の問題だ。狭い日本は、一足先に限界点を超えたのだ。

若年世代の経済的な問題、結婚できない問題、セックスに興味がない若者たち……といった理由は、それなりに一因ではあるだろう。
では、なぜそのような現象が若者世代に降りかかっているのか?

100年前(1919年)の日本の人口は、5503万3000人。
そして、現在(2017年調査)は1.268億人。
約2.3倍になっている。
狭い国土では、このへんが限度なんだろう。
田舎では過疎が進んでいたりするが、快適な暮らしを求めて、人々は都市に集まる。ささやかではあっても、誰もが贅沢をしたいのだ。つまり、富の集まるところに人も集まるということ。

人口が増えたということは、限りある富を多くの人で分配することになる。富というパイの大きさは、それほど変わらないから、人口が2倍以上になれば、ひとり当たりのパイの分け前は半分以下になる。そのシワ寄せが、若者世代に押しつけられている。

少子化で年金制度の心配をしているが、そもそも現在の年金制度は、最初の老人世代が一番美味しいところを持っていった制度であり、後の世代ほど割に合わない制度だ。
これはもう、1回チャラにするしかない。すでに破綻しているのだし、建前だけ大丈夫といっても説得力がない。

政治は人口比率の多い老人向けの政策に力を入れるし、議員自身も老人ばかり。若者にも選挙権があるとはいえ、20代の若者が政治家になるのは少ない。なれたとしても年功序列の政治の世界では、若者は議席の頭数にしかならない。政治家は地域を代表しているかもしれないが、若者世代の代表にはなっていない。

選挙区は地域で分けられているが、議員構成に年代別区分が必要なのではないか? 20代、30代、40代、50代、60代以上というように、各世代で一定数の議員を割り振る。そうでもしないと、若者世代の意見や主張は反映されないように思う。

若者世代を冷遇してきたツケが、少子化でもある。
特に、経済界……つまり、企業経営者たちだ。経団連にも責任の一端はあるだろう。
人件費を安くするために、正社員を減らし、非正規雇用という都合のいい制度を導入し、アルバイトも含めて若者を安い賃金で使ってきた。さらには、人手不足で安い賃金の外国人労働者を受け入れようとしている。

若者世代を貧しくさせた代償が少子化でもある。
しかし、先にも書いたように富のパイの大きさはさほど大きくなっていないから、増えた人口分だけひとり当たりの取り分は減る。それが形になったのが、正社員になれない非正規雇用やアルバイトでもあると思う。すべての人に高給を与えられるほど、パイは大きくない。

子ども部屋おじさん」は、少々辛辣な表現だな。
子供が自立できない、させない親というのは、ようするに親世代が長生きしているからだ。それが介護という負担にもなってしまうわけだが、100年前の日本の平均寿命は、なんと44歳。介護が必要になるほど老人になる前に死んでいた。親が早死にするから、子供は早くに自立しなくてはならなかった。
世代交代が早かったのだから、若者世代は子供を作る必要があったともいえる。

そういったもろもろの社会的状況は、人間の生態としての自然現象のように見える。
人口が増え、寿命が延びたことで、これ以上人口が増えすぎてはいけない……というブレーキが、種としての本能で作用しているように思える。

いったん減り始めると、坂道を転げるように連鎖的に減っていくから、下げ止まるのはかなり減ってからだろう。現在の老人世代がいなくなり、高齢者寄りの人口構成が崩れて、理想的な状態を回復するまで人口は減少すると予想する。

時間スケールでは、100〜200年後。
人口は3千万人くらいが、やり直すには妥当かな。これは江戸時代の人口だ。
そのくらいがちょうどいいんだと思うよ。

 

諌山 裕

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