Silky Blueの新EP「三位一体の命堝(めいか)」をリリース

密かに……制作していたSilky Blueの新EPをリリース。
主要配信サイトから、本日より再生・ダウンロードできます。
アルバム名の邦題は『三位一体の命堝(めいか)』、英題は『The Trinity Crucible』となっている。

▼Apple Musicの例

日本語環境では、邦題の曲名となっている。
歌は英語なので、原詩となっている私が書いた日本語歌詞を、ここに掲載する。

「女の春」

惑星の輪が夜明けの光に輝く
空を分割するナイフのように
森から紫色の霧が漂う
繁殖期を知らせる胞子のシャワー

女たちは、そわそわと落ち着かない
髪飾りをつけ、体に模様を描く
旅する男たちにアピールするため
女たちの村は男たちが訪れるのを待つ

年頃になった私は、初めての性春期
番(つがい)経験のない若い女は敬遠されがち
男たちの中にも若い男はいるはず
若者同士なら、苦難を乗り越えられる

花の香りのようなフェロモン
愛する人を見つけるため
わたしは丘の上で歌う
彼が気づいてくれるように
しなやかに踊り、愛の歌を歌う

私と彼は契りを結び、旅立つ
女と男と娚性(なんせい)の3つの性
三位一体になることで新たな命を授かる
聖域の島で、三角の頂点の芯母を探す

旅の途中で脱落する者も多い
怪我をしたり迷ったり捕食されたり
試練を克服した者たちだけが辿り着く
愛を完成させるのは容易いことではない

海を渡り、聖域が近くなってくると
娚性の発する濃厚なフェロモンを感じる
彼らも新たなカップルの到着を待ちわびている
交わりの季節は、命を紡ぐ季節

花の香りのようなフェロモン
愛する人を見つけるため
わたしと彼は木の上で歌う
娚性が気づいてくれるように
ふたりで手をつなぎ、愛の歌を歌う

3人で結ばれる、愛の儀式
私の卵子と彼の精子は
娚性の子宮の中で三位一体となる
わたしたちの子供
新たな命の種
わたしたちの愛の形
愛の結晶
幸せの愛の結晶

「男の試練」

ついに待ち望んだ季節がやってきた
子供扱いされるのはうんざりしていた
兄たちの苦労話や自慢話を聞かされた
いよいよ山を下りて冒険の旅に出る

女たちのいる海岸の村まで10回の朝
気楽な気分は1日目で吹き飛んだ
兄弟の2人が青龍の餌食になった
この旅が男の試練であることを思い知る

川を渡り、山を越え、荒野を歩く
ひとり、またひとりと脱落していく
海岸に着く頃には、兄弟は半分になった
女たちのフェロモンで気分が高揚する

理想の女性と娚性(なんせい)を探す旅
強さと優しさを示さなければいけない
男として認めてもらうための試練
オレは三位一体を守る立場
試練を越えた先にある幸せ

オレは丘で歌う彼女を見つけた
相性は尻尾の性触手を絡めて確認する
オレと彼女は喜びのキスを交わす
バージンの男には難しい第一関門は突破

オレたちは次の旅の準備をする
女は旅に不慣れだから、男が守ってやる
男の試練はやっと半分をクリアしただけ
聖域は遠く、さらに脱落者が出るだろう

なぜこんな試練があるんだろう?
みんな一緒に住めばいいのにと思った
それでは子は成せないし、一族は弱くなる
自然が課した摂理だと、長老は語った

理想の女性と娚性(なんせい)を探す旅
強さと優しさを示さなければいけない
男として認めてもらうための試練
オレは三位一体を守る立場
試練を越えた先にある幸せ

オレと彼女は時間はかかったが聖域に着いた
遅れたことで適合する娚性がいないかもしれない
望みを託して、オレたちは昼夜に歌う
そして、オレたちは受け入れてくれる娚性と出会う

これでオレは一人前の男になった
新しい家族の誕生
トライアングルが幸せの形
オレがトリニティを守る
オレが家族を守る

「娚性(なんせい)の苦悩と喜び」

私たちは賢いが弱者の立場
食物連鎖の頂点ではない
それでも、子供たちの死は悲しい
聖域に来た者たちを最大限の愛で迎える

芯母の私はこの地を動くことができない
南と北で性春期の季節は逆になる
南の部族が去る頃に、北の部族が来る
私たちは彼らを迎え入れる

彼と彼女が交わり、精子と卵子は出会う
彼女の胎内で精卵子に変化する
娚性と彼女が交わり、3人の遺伝子が融合する
彼らの旅路を模倣するように

愛のための過酷な試練
幸せをつかむのは一握り
それでも必要なプロセス
生存競争を生き抜くために
すべてはトリニティの愛のため

トリニティの受精卵は2つか3つ
1つは女性の胎内に戻される
娚性と女性がひとりずつ身ごもる
出産し、子供が歩けるようになるまで聖域に留まる

家族団らんの期間は短い
男の子は男の村に帰り
女の子は女の村に帰る
カップルが再び巡り会うのは次の性春期

生まれながらの娚性はいない
何度か出産した女性が、娚性へと変態する
過酷な試練を知っているだけに、
娚性は若い彼らを温かく迎え入れる

愛のための過酷な試練
幸せをつかむのは一握り
それでも必要なプロセス
生存競争を生き抜くために
すべてはトリニティの愛のため

愛する彼と彼女、そして子供たち
あなたたちは私の生きがい
次の季節には元気に戻ってきて欲しい
それが難しいことはわかっている

ああ、愛する家族よ
この幸せを忘れないで
トリニティの愛を捧げる
あなたたちを愛しているわ
あなたたちを深く愛しているわ

「ムサに関する考察(航海日誌)」

リングのある、海が多くて美しい星
銀河系の辺境にある惑星系
一度見たら忘れられない光景
知的生命体がひっそりと息づいている

彼らの姿は人間に似ている
収斂進化が異なる惑星で起きている
彼らをNear-human、惑星はMusaと名付けた
親近感を感じるが、生態は異質だ

自転周期は約70時間、公転周期は約9年
離心率の大きな軌道のため
長い冬と厳しい夏の季節が巡る
現地の鳥に擬態したドローンで情報を集める

私は彼らを観察し、見守る
驚くべき生態と繁殖のプロセス
過酷な環境にもかかわらず
愛に溢れていることを知る
私は感銘の涙を流す

ファーストコンタクトには早すぎる
私たちは不干渉を決め、観察だけに徹する
1組のカップルに着眼して、行動を追う
ハラハラしながらふたりを見守る

言語は解析済みで、話していることはわかる
彼らはとても純粋で、悪意がない
生殖本能以上に愛しあっている
それに比べて人間は、なんと浅はかだろうか

文明のレベルは人類の石器時代くらい
しかし、知的レベルは人類と大差ないように思える
顕微鏡はないのに、精子と卵子について理解し、
3つの性による出産のプロセスも把握している

私は彼らを観察し、見守る
驚くべき生態と繁殖のプロセス
過酷な環境にもかかわらず
愛に溢れていることを知る
私は感銘の涙を流す

彼らは宇宙についても多くのことを知っている
それは感じているといったほうがいい
知識ではなく感覚として知っているんだ
もしかしたら、私たちのことも感じているかもしれない

彼らの愛の物語には、感動する
それは人間が欲している愛だからだ
残酷だけど、美しい愛の歌
彼らの歌は、心に響く
愛に満ちた歌に
私は感銘の涙を流す

「星の精霊」

変な鳥がいるのは気がついていた
赤羽鳥に似てるけど、臭いが違う
芯母に知らせると、ネストに引きこまれた
あれは星の人の目と耳だと

ずいぶん昔から、私たちを観察しているらしい
芯母たちは気がついていても、なにもしない
大白樹が私たちを見守っているのと同じだと
星の人は精霊のひとつなのだと納得した

子育ては、なにかとわからないことが多い
芯母の助けを借りて、子育てを覚える
彼は狩りと漁で食料を調達する
家族5人の幸せな時間は冬を越すまで

愛に包まれた日々
女性と男性と娚性が一緒に過ごせる
愛に満たされた季節
二度とないかもしれない
かけがえのない時間

夜空で違う動きをする星を指さす
あれが星の人だと教えてくれた
先々代の芯母長の時代に現れたという
話しかけてこない限り、相手にしない

私は星の精霊が気になって仕方がない
昼も夜も、いつも近くにいるからだ
話しかけてはいけないとは、いわれていない
赤子を抱いて森に入ると、赤羽鳥はついてくる

[Read aloud]
「ねぇ、星の精霊さん、お話はできるの?」
好奇心を抑えられず、私は話しかけてしまう
返事は期待していなかった
「できるよ。ラプチャムンクスさん」
名前を呼ばれて驚いた。
「あなたの名前は?」
「私はエルザ。初対面の挨拶はなんていえばいいのかしら?」
「それなら、朝の光があなたを照らすように、というの」
私はエルザとの会話に夢中になった。

愛に包まれた日々
女性と男性と娚性が一緒に過ごせる
愛に満たされた季節
二度とないかもしれない
かけがえのない時間

聖域を旅立つときがきた
彼は男の子を連れ、私は女の子を連れて行く
それぞれの故郷に向かうが、
女の村までは彼が一緒にいてくれる
芯母は涙を堪えて、私たちを見送る
何度も見送ってきたのだろう
さようなら、さようなら
愛する人よ、再会できますように
あなたに夜の星が輝きますように
あなたに夜の星が輝きますように

諌山 裕