大金持ちは貧困層があるから存在できる

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公私でなにかと話題を集める、ZOZO前澤社長。
一代で富裕層の頂点に上り詰めたのは、才能と努力と運の賜物だと思う。氏の発言や行動が批判の対象になってもいるが、庶民からすればやっかみ半分でもあるのだろう。つまるところ、女も夢も金しだいというのを実践しているのだから(^_^)。

ひとりの人間が生きていくのに、数百億もの金を持つ必要はないのだが、それを可能にしている社会というか経済システムが問題なんだけどね。海外の富豪では、個人資産が数兆円以上などという国家予算並みの金をひとりが握っていたりする。

そんな富裕層の税金負担についての記事。

ZOZO前澤社長は年収100万円の貧困層より税・社会保険料が軽いのに田端氏が富裕層課税強化を批判

日本は額に汗して働くと所得税は30%近くまでになるのに、額に汗しない株による不労所得を得ると税金が安くなっていくという富裕層優遇国なのです。

次に消費税です。以下のグラフにあるように、年収に占める消費税負担割合は、200万円未満は7.2%に対して、1,500万円以上は1.6%です。前澤社長と田端氏よりも200万円未満の貧困層が4.5倍も消費税を収めているのが客観的事実です。

ここで問題にしているのは、金額ではなく所得(資産)に対する税の比率。
100億円の所得がある人にとって1%は1億円だが、100万円の所得の人にとって1%は1万円。富裕層と貧困層では、1%のお金の価値がぜんぜん違うという話。

貧富の差、格差がなぜ生じてしまうかといえば、世の中の富の量が有限だからだ。
富(金)の量が無限であれば、多くの人がより多くの富を得られる可能性が生じる。ただし、現実には富が無限にあると富の価値は無限に低くなり、無価値になってしまうという矛盾が生じる。富は有限だからこそ、価値を持ちえる。

有限の富を公平に分配しよう……という理想を掲げたのが社会主義だったが、その理想は幻想でしかなかった。少ない富を公平に分配するということは、みんなで貧乏しましょうということでもあったからだ。みんなで金持ちになろう……という社会主義は成立しない。なぜなら、富は有限だからだ。

よくある例えだが、「富」を「パイ」に例えるとわかりやすい。
テーブルの上に1枚のチェリーパイがある。これが世の中のすべての富だと仮定する。
これを何人かで分ける。
10人だからと10等分とは限らない。それぞれの取り分は、それぞれがゲーム等で競い合い、勝った者が多く取る。負けた者は少なくなる。ここには「公平」はない。

チェリーパイ

チェリーパイ(©from my point of view / Shutterstock)

1人が大勝ちして10分の9を独占すると、残りの10分の1を9人で取り合うことになる。
これが格差であり、貧富の差となる。
前澤氏のような大金持ちは、たくさんの貧困層がいるから富豪になれる。逆説的にいえば、貧困を撲滅すると、富裕層は存在できなくなるということだ。

貧富の差は、貨幣経済や資本主義の最大の欠陥であり、直しようのないバグにもなっている。新しいシステムが必要なのだが、まだ誰も現状のシステムより優れた社会システムを発明できずにいる。

少々SF的な話になるが……
人類が今後、数千年〜数万年と繁栄していくためには、科学的なテクノロジーの進歩だけではなく、社会的な進歩も不可欠だ。
欲望をエンジンとする現状の社会・経済システムでは、いずれ破綻する。経済成長が無限に右肩上がりになるはずもなく、富は有限だ。有限の富を奪い合うシステムでは、地球を食い尽くして終わる。

人類が滅亡することなく、数万年後も文明を存続するための道は2つ。

  1. 社会システムの大転換。富を奪い合うのではなく、共有するシステムの構築。
  2. ワープ理論およびワープ航行を手に入れ、銀河中の星々へと進出する。

(1)はStar Trekの世界だ。
貨幣経済はなくなり、人々が働くのは社会への奉仕と、自己の探求心のため。ある意味、理想形ではあるものの、人類がここまで変革するのはかなり難しい。

(2)は、富は有限だが、パイの大きさを無限に近いくらい大きくしてしまう方法。
銀河の端から端まで、瞬時とはいかなくても数時間で移動できるのなら、居住可能な惑星はたくさんあり、資源となる惑星もたくさんある。ほぼ無尽蔵ともいえる富があることになる。

ただし、無尽蔵の富があるということは、富の価値も激減することを意味する。たとえば、貴金属の金(ゴールド)は、地球上には少量しかないため貴金属とされているのだが、銀河中の星々から無尽蔵の金が採掘されれば、もはや貴金属ではなくなる。そのへんに転がっている石ころと同等になってしまう。

どちらにも共通していることは、文明レベルが「Ⅰ型文明」以上になるためには、富の奪いあいを基本とした経済が、文明の進歩には足かせになりえるということ。

ちなみに、カール・せーガン提唱の文明レベルは以下。

宇宙文明の各分類について定義と具体的内容(Wikipediaより)

I 型文明
文明等級Kが2未満の文明。惑星文明とも称される。Ⅰ型文明は、1つの惑星上で利用できる程度の規模のエネルギーを余すことなく利用している文明である。地球に降り注ぐ太陽エネルギーは、全部で1.740×1017 [W]になる。この膨大なエネルギーのうち人類が利用できる量は1000[TW]ほどと考えられており、I型文明のエネルギー生産において太陽光エネルギーの利用が重要になると考えられる。地球に文明を営んでいる人類は21世紀初頭現在、この段階にある。(2)式にBPが2007年に算出した世界のエネルギー消費量を入力すると、Kの値は約0.73である。
文明のエネルギー消費量{ W_{type1}=1016 〜}

Ⅱ 型文明
文明等級Kが2~3に該当する文明。Ⅱ型文明は、惑星が周回する母星たる恒星(人類でいえば太陽)が発散しているエネルギーを全て使える段階にある文明を指す。フリーマン・ダイソンが提唱した、恒星を覆う球殻天体ダイソン球を建造するような文明が、この段階にあると言える。
文明のエネルギー消費量{W_{type2}=1026 〜}

Ⅲ 型文明
Ⅲ型文明は、銀河全体の発するエネルギーを全て使えるような段階の文明である。こうした文明では、銀河全域にまで植民されて巨大な文明が栄えていることであろう。銀河クラスの文明の維持には、恒星間の交流のため、超光速航法や超光速通信の開発も必須である。
文明のエネルギー消費量{W_{type3}=1036〜 }

経済的な損得勘定でものごとを進めると、儲からないことはやらなくなってしまう。そのことは現在でも問題になっていて、科学の基礎研究は儲からないから研究を継続できなくなるとか、宇宙開発では資金の回収ができないから計画を打ち切るとか、そんなことになっている。

Ⅱ型文明の説明中に出てくる「ダイソン球」などという超巨大建造物は、経済的な思考をしていたら絶対的に不可能なものになる。
ダイソン球が儲かるはずはないのだ(^_^)。
地球軌道上に、地球−太陽間の半径のダイソン球を建設すると、その内部には約281,237,384,968,656,588㎢(28京㎢)の土地(というか床面)ができることになる。これだけ膨大な土地があると、もはや不動産としての価値はないに等しい。
それを建造する文明は、損得ではなく文明圏の拡大とか文明種族としての挑戦とか、経済的なことなど考慮しない社会システムがなければ実現はしないだろう。

昨今の地球温暖化問題を始めとする環境問題も、つきつめると現在の経済システムが原因だ。
儲かるか儲からないかで、政策が決まる。
為替や株式が上がったり下がったりに一喜一憂しているようでは、今後数千年〜数万年を視野に入れた人類としてのあり方を考えることなど、できはしない。

話が飛躍しすぎた(^_^)b

冒頭の記事に戻ると、納税額がン十億だとしても、持っている資産の中での比率は小さいのだから、痛くも痒くもないのが富豪なんだ。

富豪にとっての1億円は、庶民感覚の1万円くらいだろうから、税金で70億円は70万円払ったといってるようなもの。年間の納税額が70万円なんて、年収600万円(所得税は74.4 万円)のサラリーマンと同等の負担感なんだよね。

貧困で食べるものがなく餓死したという事例や、経済的に苦しくて一家心中したという事件が起こったりする。だが、金持ちは貧困のニュースに同情したり、涙を流したりしてはいけない。貧困に苦しむ人々がいるからこそ、金持ちでいられるのだから。
かといって、貧困層に感謝しろとか、社会貢献しろとかいう気はない。
競争を勝ち抜いて、富豪に這い上がったのだから、自慢でもなんでも好きにすればいい。

ただ、自分がやることについて、子供たちの夢のためとかいう、偽善は感心しない。
自分の欲望を満たすのに、善人ぶった理由づけはいらないと思うよ。

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