「マヨラナ粒子」とは?

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Space where subatomic particles fly around

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科学系のニュースで、聞き慣れない単語が出ていた。

「マヨラナ粒子」

マヨネーズを連想した人が少なからずいて、ネタにされていた(笑)。

「マヨラナ粒子」存在実証  京大など、量子コンピューター前進 : 京都新聞

 幻の粒子「マヨラナ粒子」の存在を示す実験データが得られた、と京都大などの研究グループが11日、発表した。世界的に注目される量子コンピューターの開発の基盤となる成果として、英科学誌ネイチャーに12日、掲載される。

自然界には、電子(マイナス)と陽電子(プラス)のように正負の電荷は異なるが質量は同じという粒子と反粒子が対で存在する。マヨラナ粒子は1937年、粒子と反粒子が同一で電荷を持たない粒子として、イタリアの物理学者が理論的に存在を予言。近年、特殊な構造の物質中に、極低温の条件下でマヨラナ粒子が出現する可能性が注目されていたが、決定的な実証データは得られていなかった。

京大の笠原裕一准教授ら研究グループは、候補物質の一つを絶対零度(零下273度)に近い温度を保ち、熱の伝わり方に対する磁場の影響を示す「熱ホール伝導度」を測定。ある範囲の磁場で、伝導度が電子の数値の2分の1となり、マヨラナ粒子特有の数値を観測したという。笠原准教授は「粒子として確認できていないものの、電子がマヨラナ粒子のように振る舞った証拠が得られた」と話す。

従来の実験で必要だった特殊な冷凍庫を使わずに観測に成功しており、笠原准教授は「マヨラナ粒子の制御法が開発できれば、量子コンピューターに応用できる」と語った。

一般紙で地方紙の記事なので、科学的な説明が乏しいのはしかたがない。
これでは、説明しているようで説明になっていなくて、疑問が増してしまう。

もっと詳しい記事が以下にある。

予言から80年以上実在が証明できなかった“幻の粒子”「マヨラナ粒子」が発見 ~より安定動作する「トポロジカル量子コンピュータ」の実現につながる一歩 – PC Watch

 京都大学および東京大学、東京工業大学は、同学所属の研究者グループが、極低温ではなく高温でも動作可能な「トポロジカル量子コンピュータ」の実現につながる幻の粒子「マヨラナ粒子」を発見したと発表した。

(中略)

マヨラナ粒子は、粒子と反粒子が同一という特異な性質をもった“中性のフェルミ粒子”で、素粒子の1つとして、イタリアの物理学者Ettore Majoranaによって1937年に存在が予言された。

(中略)

このマヨラナ粒子は「非アーベル量子統計」と呼ばれる特殊な統計に従っている。その性質を用いることで、環境ノイズに対して強く量子情報を安定に保つことができる、「トポロジカル量子コンピュータ」を実現できると考えられており、近年、マヨラナ粒子がある種の超伝導体や磁性体中で、準粒子として現れる可能性が指摘され、大きな注目と期待を浴びていた。

(中略)

したがって、整数・分数量子ホール効果に次ぐ「第3の量子ホール効果」を発見したとしており、この「半整数量子化」は、理論的には予言されていたものの、観測例はなく、今回の研究がはじめての実験的証明になるという。

(中略)

今回対象とした物質のように、電子同士が強く相互作用し合う物質(強相関電子系)のトポロジカル物性は未開拓であり、今後の研究の展開により新しい量子現象の開拓が期待されるとともに、量子スピン液体に現れるマヨラナ粒子の制御法を開発することで、高温でも動作可能なトポロジカル量子コンピュータへの応用が期待できるとしている。

やはり科学記事は、このくらいの解説は必要だね。私が疑問に思ったことの大部分は、説明してくれている。

ここでいう「高温でも動作可能なトポロジカル量子コンピュータ」は、絶対零度よりも高い温度という意味なので、極低温であることに変わりはない。今現在のPCやスマホが、極低温でないと動作しないとしたら、コンピュータ社会は到来しなかっただろう。

量子コンピュータも、同様の問題を抱えている。

人工知能(AI)のシンギュラリティが、2045年に到来するという説がある。しかし、その実現には量子コンピュータは不可欠であって、現状のサーバー系コンピュータや並列コア型スパコンのAIが、どんなにディープラーニングしてもシンギュラリティには到達しない。

なぜなら、そのための性能がないからだ。
コンピュータの設計技術者なら、そのことは自明のことなのだが、ソフトウエアで解決できると信奉する研究者は、幻想を捨てきれない。

たとえるなら、最速のスポーツカーのランボルギーニを用意して、自動運転のためのオプションをつけ、アプリケーションをアップデートしていけば、やがて音速の壁を超える車になる……と、いっているようなものなのだ。

この場合、必要なのはアプリケーションではなく、エンジンをジェットエンジンに替えることだ。マシンの性能を上げなければ、音速の壁は超えられない。

量子コンピュータが汎用化されるには、動作する温度が鍵だ。
温度が高ければ高いほど、製造しやすく、扱いやすくなる。たとえば、ドライアイス(−78.5 ℃)で冷やす程度なら、かなり使い勝手はよくなる。しかし、コンシューマー向けには、これでもハードルが高い。

理想的には、常温で動作する量子コンピュータができれば、世界は大きく変わる。それを可能にする技術はあると思うが、まだ発見・発明されていない。

シンギュラリティの未来は、まだまだ遠い未来だと思うよ。

 

 

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