「満員電車でクラスターが起きない」に疑問

LINEで送る
Pocket

「満員電車でクラスターが起きない」に疑問

専門家の医師といえども、固定観念からくる古い考え方や、根拠の乏しい説をあたかも正論であるかのように言ってしまうようだ。

忽那賢志氏の記事については、以前にも問題点を指摘したが、相変わらず同じようなことを主張している。テレビにもよく出ているので、影響力があるだけに、鵜呑みにする人は多そうだ。

新型コロナ、日本の満員電車で「クラスター」が起きない「意外なワケ」(村上 和巳) | 現代ビジネス | 講談社(1/6)

そこで、この感染症治療の最前線にいる国立国際医療研究センターの国際感染症センター国際感染症対策室医長で感染症専門医の忽那賢志氏へ緊急インタビュー。新型コロナについて現在まで分かっていること、わかっていないことを整理したうえ、第3波ともいわれる状況下にあって、いま「知っておくべきこと」を掘り下げた(本インタビューは11月18日時点までに行われたものであり、その時点での知見に基づいている)。

(中略)

―実際のマスクの効果はどの程度なのでしょうか?

アメリカの事例ですが、ある美容室で働く美容師2人が新型コロナに感染していたという、正直そんな美容室には絶対行きたくないと思うような事例に関して興味深い報告があります。この美容師2人、お客さんともに全員マスクを着用していたため、2人と15分以上会話をした濃厚接触者と定義できるお客さん139人のなかで感染者はいませんでした。

(中略)

ちなみに日本国内の満員の通勤電車などを指して「3密なのになぜクラスターが起きないのでしょうか?」と疑問を寄せられることがありますが、これはおそらく電車内で皆さんがあまりしゃべらないからだと思います。

クラスターが発生しているケースの多くは、合唱している、カラオケをしているとなど大声を出しているところです。これに加えて最近は電車内でも多くの乗客がマスクを着用し、換気されていることも影響していると思われます。

マスク効果については、以前にも同様の事例を挙げて、効果を説いていた。
しかし、その美容室や病院の一件は、ピンポイントの例であって、これがマスク効果を証明することにはなっていない。マスクを義務化し罰金まで課す国や地域があるのに、そうした国や地域でも感染拡大は抑えられていない現実を、どう説明するのか?
マスク効果があるのなら、感染拡大は起こらないはずではないか?
そこの説得力がない。

それは日本でも同様で、99.9%くらいのマスク着用率がありながらも、感染拡大は止められていない。
感染した人は、マスクをしていなかった人なのか?
そうではないだろう。大部分の人はマスクを着用していたはずだ。
病院で発生するクラスターでは、医師や看護師が感染しているわけで、対策が一般人より徹底している医療関係者でも感染してしまうのは、マスク効果に疑問符が付く事例とは考えないのか?

マスクを過信する人々」で取り上げたが、デンマークのコペンハーゲン大学病院による調査では、「マスクが保護の機能を果たさない可能性も排除できなかった」との報告を出している。マスク効果に疑問符が付くレポートに触れないのは、恣意的ではないか? 少なくともマスクが期待したほど効果を発揮していないから、マスク義務化でも感染を抑えられない事態になっていると考えるのが妥当だろう。

また、「満員電車でクラスターは発生していない」というのは、根拠のない認識である。
「満員電車でクラスターは発生していない」のではなく、「満員電車での感染を追跡できていない」というのが正しい。

飲食店などは場所として固定されているため、「あそこで飲み会をした」と特定できるから、クラスターとして追跡できている。
しかし、電車は移動するものだ。何時何分の何号車に乗っていた人たち……と、特定することは困難。電車で感染していても、どの電車で感染したのかわからない。そのとき、乗り合わせた人たちが誰だったのかなんて、さらにわからない。
追跡できない、検証できないから、満員電車でクラスターが発生していても確認できないだけ。
確認できないものを、「満員電車でクラスターは発生していない」というのは根拠のない主張だ。
平たく言えば「嘘」である。

「換気されている」というのも、ちょっと違う。
満員電車の乗客の中に、ウイルスを排出している感染者がいるとする。
換気はされているから、空気はある程度流れている。数分で空気は入れ替わると言われている。
しかしである。
感染者は呼吸のたびにウイルスを排出していて、その人の周りにはウイルスを含むエアロゾルが漂う。それは感染者から排出され続けるため、換気していても常に周囲に漂うことになる。
この視点が抜けている。

イメージしやすいように、感染者を喫煙者に置き換えてみればよい。エアロゾルはタバコの煙と同等なのだ。
電車の中で、喫煙者がスパスパとタバコを吸っている。電車は換気をしているし、窓も開けている。それでも電車内には、常にタバコの煙が漂い、同乗者はそのタバコの煙を吸うことになる。

マスクをしていても、タバコの煙は素通りである。
同様に、空気感染するCOVID-19も素通りである。
電車でクラスターが発生していて、数日後に発症しても、「何日の何時何分の何号車のあそこの席に座っていた」と明確に証言できる人は、まずいないだろう。
結局、電車が感染場所であっても、わからないし証明できないだけなのだ。

忽那賢志氏の記事はよく読んでいるのだが、私より若い方なのに、ずいぶん保守的だなと感じる。氏のような方が、空気感染を前提とした感染対策を提唱してほしいものだが……。

とまぁ、私みたいな野良ブロガーが反論しても、誰も見向きもしないのだけどね。

(Visited 47 times, 1 visits today)