4Kテレビ論争について、外野席から


BLOGOSで4Kテレビ論争が盛り上がっているようだ。私もいちおう4Kテレビについては触れていたのだが、蚊帳の外(笑)。

私はなんの肩書きも持たない、一介のブロガーに過ぎないが、みなさんの論争を読んでいて疑問に思ったこと、感じたことなどをいくつか。

「失敗」と「成功」の判断基準は何か?

「失敗する」いや「成功する」といった結果を予想しているのだが、みなさんの判断基準がなんなのかを示されていないようだ。
どういう状況になれば成功で、どういう状況を達成しないと失敗なのか?
その基準が、それぞれの論者によって明示されておらず、それぞれの思うところの曖昧な判定をしている。そこのところが、読んでいる側にはわからない。

「売れる」あるいは「売れない」という判断も同様だ。
売れることは間違いない。現在の百万を超えるような価格でも、富裕層は買う。貧乏人は買えないから売れないというのか、富裕層が買うから売れるというのか。

メーカーサイドに立てば、売り上げ目標というのはあるだろう。その目標を達成すれば、いちおう成功とはいえる。
やや古い記事だが……

ソニー「4K」、敵は東芝:日経ビジネスオンライン

同社は4Kブラビアの販売目標を公表しないが、「まずは世界で年間1万台ぐらいを目指す」(ソニー関係者)

……ということで、168万円する4Kテレビを1年で1万台という目標を掲げている。これだけではSONYのテレビ事業が改善するわけではないものの、メーカーとしてはこれだけ売れば「成功」の判断にはなるのだろう。

1万台くらいだったら、富裕層には売れる気がする。生産台数が増えてくれば、製造コストも下がるから100万円を切るような価格になると、もう少し買える所得層は広がる。

うちのテレビは、フルハイビジョンが出始めた初期の頃に買った40インチのブラビアなのだが、当時は35万くらいでちょっと高かったものの、安月給の私でも背伸びすれば買えた。同等のスペックのものが、今では10万円以下で買える。
4Kテレビも、50万円を切るのが、平均的な所得層(年収600万円前後)にも買えるボーダーラインだと思う。

「失敗」vs「成功」、「売れる」vs「売れない」の二極論では、その判断基準となる物差しが共通していないと、論戦は噛み合わず、平行線に終始する。
成否の判断は、●●●●をクリアすることが条件」というのを、設定することを提言する。

メーカーは4Kテレビを作らないわけにはいかない

4Kテレビの成否がどうなるかは、1年後にはおおよその展望が見えていると思う。
その成否はともかく、メーカーは4Kテレビを作らないわけにはいかないことも事実。「失敗するから作らない」とか「売れないから作らない」となったら、メーカーはテレビ事業から完全に撤退するしかない。

Panasonicはテレビ事業から後退することを示唆していたが、SONYや東芝はテレビから撤退する気はないようなので、4Kテレビは作らざるをえない。作らなかったら、4Kテレビ市場は韓国や中国に独占されることを意味する。そうなれば、テレビだけでなくその他の製品でも、世界のシェアは失っていく可能性がある。収益性はよくないとしても、一定のシェア、技術力があることを示さないと、ブランドの価値は下がってしまう。
ある意味、メーカーのプライドの戦いでもある。
技術力だけに頼るのが日本メーカーの欠点でもあるが、だからといってそれすらも放棄してしまったら、戦う前から負けてしまうようなものだ。

「画質がいいから売れる」のでもなく「画質を追求しても売れない」のでもない。
4Kテレビ市場を作っていかないと、テレビ事業は続けられない……というのが、突きつけられた課題だと思う。
すでに2Kテレビ市場は飽和状態で、大幅な売り上げ増は期待できない。次なる市場を作って、そちらにシフトしていくしかない。

これはテレビに限ったことではなく、スマホやタブレットでも、近い将来には飽和してしまうから、次なる新しい製品や市場を作り出さなければならない。問題は、どこがその先鞭をつけるかだ。

スマホとタブレットの市場を作り出したのはAppleだった。そのAppleも、追随するメーカーに追い越されつつある。
4Kテレビは、先のCESでは日本メーカーが半歩先んじている感じだったが、余裕のあるリードではない。市場としては大きくならないかもしれないが、半歩でもリードを保てることが、メーカーとしてのブランド価値にはなりえる。

日本の家電メーカーが浮上できない理由」でも書いたことだが、4Kテレビは必然的に普及する。
現状の2Kテレビのまま、この先10年、20年と続くことは考えにくい。技術的にも経済的にも成長し続けたいのなら、現状のまま停滞することは堪えられないしありえないはずだ。4Kテレビが普及するときに、その製造メーカーが日本製なのか韓国製なのかという違いだ。
私としては、日本メーカーが先頭に立っていて欲しい。

比較データの問題

山田 肇氏が「画質が良いから売れるって単純すぎませんか?」の記事の中で、比較データを提示していたのだが……

画質が良いから売れるって単純すぎませんか? – 山田 肇(アゴラ) – BLOGOS(ブロゴス)

情報メディア白書によると、2011年のビデオソフト出荷本数は、ブルーレイが1423万本に対してDVDは6819万本で、DVDのほうが5倍売れている。

これはちょっとフェアじゃない。
データは2011年のもので、Blu-rayのコンテンツがまだまだ不足していた時期のものだ。
昨年のデータはどうなっているかというと……
各種調査報告|一般社団法人日本映像ソフト協会

2012年ビデオソフト売上速報

2012年ビデオソフト売上速報

2012年ビデオソフト売上速報

……ということで、ポイント部分に色づけした。
2012年1月~11月の累計で、
●DVD………60,094本 金額(百万円)=162,473
●Blu-ray……13,807本 金額(百万円)= 61,312

となっていて、本数ベースでDVD:Blu-rayが「4.35:1」、金額ベースで「2.65:1」である。
本数では4倍ちょっとでも、金額ベースでは2.65倍と差は縮まる。

DVDのほうが5倍売れている」というのは、誇張しすぎ。金額ベースで差が縮まるのは、Blu-rayの方が単価が高いからだが、同時に最近はBlu-rayのみでDVD版は出さなくなる傾向にある。また、コアなBlu-ray購入者はアニメファンや映画ファンであり、それらの商品はセット売りも多いので、本数としては少なくなっても金額が大きい。

そういう意味では、Blu-rayの方が収益性は高いといえる。
だから、「ブルーレイのほうが、画質が良いのに売れないのはなぜか」という突っ込みは正しい評価とはいえない。

政府の関与について

山田氏は、政府の関与についても批判しているが……

画質が良いから売れるって単純すぎませんか? – 山田 肇(アゴラ) – BLOGOS(ブロゴス)

4Kテレビの市場形成に政府が影響を与えようとしていることが大きな問題だ。政府が強い権限を利用して市場を無理やり作り出そうとするのは愚策である。

市場形成に政府が影響を与えることが愚策だとしたら、TPPも民間で勝手にやれってことになってしまうし、ある品目について輸入制限や関税をかけるのも愚策だということにはならないか?

国内の市場だから問題というのであれば、ある業界に補助金を出したり、ある企業の救済に税金を投入するのも愚策ということになるように思う。
政府の影響力が強すぎるのは問題だが、かといって知らん顔も問題だろう。

韓国メーカーが補助金や免税で、韓国政府に後押しされて成長してきたのは事実だし、それが愚策だとしても日本メーカーが躍進できるのなら、ひとつの手段ではあると思う。
主導権を握っていたいという政府の思惑もあるだろうが、それを利用するというメーカーの強かさも必要な気がする。


いずれにしても、4Kテレビの時代は遅かれ早かれやってくる。テレビ離れが進んだとしても、家にあるテレビはいつのまにか4Kになっていた……というか、4Kテレビしか売っていない時代になっていく。日本メーカーが4Kテレビを作らなくても、韓国や中国から4Kテレビが安い価格で入ってくれば、それが売れていくことは必然だ。
店頭に、日本製の2Kテレビと、外国製の4Kテレビが並んでいて、値段も大差ないとしたら、4Kテレビを買う。

客 「なんで、日本製の4Kテレビはないんだ?」
店員「日本製の4Kテレビはないんです。失敗するとかで、撤退しましたから」
客 「そうか。じゃ、しょうがないな。そっちの4Kテレビをくれ」
店員「承知しました」

そんな将来にはなってほしくないね(笑)。

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