人工知能の歴史をおさらいできる記事

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Can a program that plays chess be called "artificial intelligence"?

Can a program that plays chess be called “artificial intelligence”?

 人工知能(AI)について、様々な可能性が論じられている。
 少々加熱しすぎの気もするが、AIがなんでもできるという誤解や、幻想も少なくない。
 私のブログでも度々取り上げているが、現状のAIにも限界はある。

 AIの未来を展望するには、これまでの歴史を知ることも必要だろう。
 それについて、とても素晴らしい記事があった。

人工知能「冬の時代」が到来 | THE ZERO/ONE

ミンスキーは、パーセプトロンを批判し、その限界を示した後、パーセプトロンに対する考え方を改めた。パーセプトロンが「学習をする」「知能をもつ」と言われると、ミンスキーは直感的にそれは違うと感じてしまう。しかし、人間の知能を支えている神経系は、パーセプトロンとよく似た機構が基礎になっていることには違いないと思っていた。パーセプトロンだけで知能を再現することはできないが、さらに高次元の仕組みと組み合わせることで知能が再現でできるのではないかとも考えていた。「パーセプトロンとは簡単な機械であり、自然がそれと同じ機構をどこかで利用していないとすれば、まったく驚くべきことだ。ニューロンがもち得る最良のもののひとつは、おそらく小さなパーセプトロンだろう」。

 この連載記事は「その9」なので、「その1」から読むことを勧める。

ハッカーの系譜(10)マービン・ミンスキー (1) 知られていない「人工知能の父」
ハッカーの系譜(10)マービン・ミンスキー (2) 尊敬する大人と幻滅する大人
ハッカーの系譜(10)マービン・ミンスキー (3) 研究テーマと進路に迷う天才
ハッカーの系譜(10)マービン・ミンスキー (4) 機械仕掛けの脳細胞を作る
ハッカーの系譜(10)マービン・ミンスキー (5) 伝説のダートマス会議に参加
ハッカーの系譜(10)マービン・ミンスキー (6) MITに集まったハッカーの庇護者
ハッカーの系譜(10)マービン・ミンスキー (7) チェスをするプログラムは「人工知能」と呼べるのだろうか
ハッカーの系譜(10)マービン・ミンスキー (8) 世界初 機械学習可能なネットワーク「パーセプトロン」誕生
ハッカーの系譜(10)マービン・ミンスキー (9) 人工知能「冬の時代」が到来

 なかなか読み応えがあり、知らなかったことがいろいろと書かれている。
 こういう天才がいたから、AIが現実的になってきたんだなと思う。

 連載の(7)で、「チェスをするプログラムは「人工知能」と呼べるのだろうか」というのがあるが、私も度々書いているように、チェスや囲碁で人間に勝っても、それで人工知能が人間を超えたとは思わない。
 チェスや囲碁の差し手で、膨大な順列組み合わせを、レギュレーションの制限なしに、リソースとエネルギーを無制限に消費して計算しているだけ。物量で勝るAIの方が有利なのは当たり前。

 1人の人間の発する熱量は、60〜100Wの電球くらいとされる(脳そのものは21Wという説もある)が、AIの消費電力を100Wに制限したら、そもそも起動すらできない。
 AIの記憶容量は、メモリやHDを追加すれば、いくらでも増やすことができるし、一度記憶させれば忘れることがないし、読み出すことも高速で容易だ。

 ちなみに、AlphaGoが稼動するGoogle Cloud Platformのコンピュータ資源は、CPU1202個、GPU176基で、消費電力は25万Wだという。平たくいえば、消費電力で換算すると、1人対2500人で対戦しているようなもの。物量が違いすぎる。

 人間の脳の記憶容量については諸説あるが、ニューロンネットワークの量から、数ペタバイトはあるだろうとされている。ただし、これは理論値であって実行値ではない。人は記憶するのに、一発ですべてを覚えられるわけではなく、記憶を確実に定着させるには、繰り返し復唱したり暗唱したりしないと、すぐに曖昧になってしまう。
 また、記憶は思い出すたびに上書きされてしまうため、変質してしまうこともある。
1冊の本を、一度読んだだけで丸暗記できる人は、ほとんどいない。物理的理論値は数ペタバイトあっても、有効に利用できる記憶容量は数百メガバイトくらいではないかと思う。

 人工知能が人間を超えるかどうか?……というのが、話題になったり懸念されたりしているが、原点に立ち返る必要がありそうだ。

 記事中でたびたび出てくる言葉に、

「考えるとはなにか」

 原点というか、本質はこれなんだ。
 これについての答を、私たちは科学的に得ていない。
 哲学的な答であれば、過去の偉人たちの格言でこと足りるが、人工知能に必要なのは、知性を設計するための理論や技術なのだ。
 そのためには「考えるとはなにか」についての、数学的あるいは演繹可能な科学的理論がないと、知性を獲得するための部品は設計できないし、基礎となるプログラムも書けない。

 人工知性が偶然誕生する……というほど、宇宙の確率は甘くないだろう。
 神様はやさしいわけではない。

 

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