『脱原発』というけれども…

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Twitterのフォロワーさんからのリンクで読んだ記事。

Life is beautiful: 私が事故後、脱原発派に転向した一番の理由

先日のエントリーに、「論理的に考える力のない人が、 『放射能は危険』→『原発は不要』→『脱原発』 となっているのは理解できます。 普通に論理的に考える力のある人は、 『脱原発したときのリスク』を考え、 脱原発をしないほうがよいのでは?という意見の方が多いと感じています。 中島さんのような方が、なぜ、脱原発一直線なのかが理解できません。 脱原発について書かれるのはよいのですが、 一度、なぜ脱原発を訴えているのか?についても、この場に書いていただけないでしょうか?」というコメントをいただいたので、今回はその質問に答えてみる。

世の中は、『脱原発』あるいは『原発への依存度を下げる』という方向に向かっている。
あれだけの事故を起こせば当然ともいえるが、問題が原発という大きな存在と影響力を持つものだから、『脱原発』に拍車がかかっている気がする。

爆発後の3号機原子炉建屋の外観(2011年3月15日撮影)

爆発後の3号機原子炉建屋の外観(2011年3月15日撮影)

私は以前から指摘していた。

原発は二酸化炭素は出さないが、放射性廃棄物は出す。
二酸化炭素と放射性廃棄物と、どっちがいいのか?

……と。
参照↓
環境負荷係数の総体で考える必要があるのでは?
エコの矛盾点
利権がらみの地球温暖化問題

リスクに対する認識、対処法というのは、リスクの程度をどのように判断するかだ。
問題をもっと身近な、扱いやすいもので考えてみる。

たとえば、タバコ。
いまや喫煙者は、肩身が狭くなった。吸える場所は少なくなり、喫煙していると社会的な評価を落とされる場合もある。

某ニュースサイトのコメント欄では、タバコの話題が出ると喫煙者は袋だたきだ。嫌煙運動はエスカレートして、喫煙者を社会の悪のように扱う。
だが、飲酒はそのような対象にはなっていない。
酒も度を過ぎれば健康を害するし、飲酒運転で悲惨な交通事故が起きるのは日常茶飯事だ。だが、嫌酒、脱飲酒……などという主張は出てこないのだ。
タバコに起因する直接・間接の死亡率と、酒に起因する直接・間接の死亡率を、統計的に比較した記事は見かけたことがない。

どちらが、よりリスクが高いのか?
なんとなく、タバコは害がある……という空気で嫌煙運動が進んでいるように思える。
そりゃ、タバコは吸わない方がいいに決まってる。健康に悪いことは、喫煙者だって理解している。

だが、酒はどうなのだ?
新人の歓迎会や忘年会で、毎年、急性アルコール中毒によって死亡したというニュースが流れる。飲酒運転で児童の列に突っ込み、一度にたくさん亡くなるケースもある。そんなとき、「飲酒運転はやめましょう」とはいわれるが、酒を禁止しましょう、という話にはならない。

タバコの場合には、「タバコを吸いながら仕事をするのはやめましょう」ではなく「タバコはやめましょう」なのだ。
タバコのリスクを排除するために、嫌煙運動を進める。
ならば、酒のリスクを排除するために、禁酒するのが道理ではないのか?

たとえば、車。
交通事故で、毎年5千人くらいが亡くなっている。
一昔前は、死亡者数が年間1万人くらいだった時期もあるから、少なくなってはいる。

だが、5千人が死んでいるのは、たいへんな数なのだ。
今回の原発事故に起因する、直接的な死亡者はいないようだが、被爆による将来的な死亡率はわからない。それでも、年間5千人が被爆で死に至ることはないのではないか?

単純な比較はできないが、交通事故の方がはるかにリスクが高いとはいえる。
にもかかわらず、『脱車社会』とはならないのだ。
交通事故が起きるのは「しょうがない」あるいは「必要悪」として、黙認しているように感じられる。事故に遭ったら「運が悪かった」というわけだ。

極端な話、原発で被爆して死ぬよりも、今日の帰り道に交通事故に遭う確率の方が高い。
宝くじの1等に当たる確率は約400万分の1だが、交通事故で死ぬ確率は約2万分の1なのだ。宝くじに当たるよりも、交通事故で死ぬ確率の方が高い。
それほどリスクが高くても、『脱車社会』とはならない。
昔は原発なんてなかったんだから、なくても生きていける……というような論調もあるが、それをいうなら、車だって同じである。

『脱原発』については、基本的には賛成だ。
放射性廃棄物より二酸化炭素で温暖化する方がマシだと思うからだ。

どうせやるなら、一気にやってしまうべきだ。たとえば、5年後に完全停止。地デジ化と同じように、期限を切ってしまえば、産業界は対応しようとするだろう。そこに新たな産業構造が生まれてくるかもしれない。

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