電子書籍のあるべき姿

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電子書籍のあるべき姿

PexelsによるPixabayからの画像

電子書籍関連の記事はいろいろ書いてきたが……
その関連記事で興味深いものがあった。

電子書籍ビジネスが危ない!? 業界のキーマンを直撃(前編)|DIGITAL DIME デジタルダイム|ダイム発!トレンドスキルを磨くデイリー情報

 このほか山田氏は、本とウェブの世界では、文化が根本から違うことも指摘しています。

「ウェブに代表されるインターネットの世界と、私たちの出版の世界は大きなギャップがあります。一例を挙げると、私たちは、読者が何に興味があるか、どんな記事が読んでもらえるか、ということを一生懸命考え、その結果、売り上げにつながるんです。けれど今のネットの記事って、どんなキーワードをタイトルや記事に埋め込むとSEO(Search Engine Optimization。サーチエンジンで検索結果が上位に表示されるようにするなど対策を施すこと)の効果が上がるか、という前提を踏まえてから記事を作るんですね。しかも、そういう言葉を繰り返し入れる。それがウェブの現実です。
従来、編集者は著者の原稿に内容のダブりや、繰り返し表現があると、それは駄文だからといって書き直しをお願いしたり、編集者が工夫して対処してきた。それによって文章としてのクオリティを上げてきたんです。しかし、その常識が、ウェブの世界では、まったく逆。SEO的には、駄文だろうがなんだろうが、検索エンジンにヒットするような言葉が繰り返し入っているほうが”良い文章”なんです。こうした予備知識がないまま、従来の出版の方法論で電子書籍ビジネスをしようとするから、いまの出版社がやっている電子書籍ビジネスは、うまく行くはずがない。ガラリと意識を変える必要があるんです」

(中略)

これは、出版に限らず、ゲームや音楽などの直面している課題。たとえば音楽の世界では、CDなどのパッケージを売ることから、音楽配信などにシフトし、さらにはライブイベントなどで収益を上げるビジネスモデルに変化している。つまりパッケージ商品を売るのではなく、サービスを体験してもらうという流れにシフトしていると言い換えることができるでしょう。出版社も、こうした事例をケーススタディーとして学ぶ必要があるのでしょう。

(中略)

「そろそろ業界の人も気づかないといけないんですが、出版社、編集者、ライターなど、本作りに関わっている人のお客さんは、やはり”読者”なんです。でも、その”読者”のことをなおざりにしてきているんですよ。普通の企業だったら、もっとお客さんのことは大切にしていると思う。このあたりのギャップを克服すれば、おのずと次にやることは見えてくるはずです」

もっともな話(^_^)
じつは、同様のことは私のブログにも、過去に書いている。

電子ブックは売れるか? 2010年03月01日付

いや~、自分で言うのもなんだが、着眼点はほとんど同じ(^_^)
しかも、書いたのは1年3か月前だよ。

『”読者”のことをなおざりにしてきた』……というのには同感で、編集者あるいは出版にかかわる制作スタッフには「お客様」が見えていない。

歌手がライブをすれば、客席に客の顔が見えるが、本を作っている者には読者の顔が見えない。読者アンケートとかファンレターとかクレーム等で、間接的に客に接することはあっても、リアルな存在として読者が見えていない。

「今の読者は、こういうものを求めている」というのは、机上の空論、仮想の読者を想定しているにすぎない。その想定が的を射ていればいいが、読み違えると売れないことになる。

私は勤めている会社で、本のデザインなどもしているが、客である読者を見て仕事をしているとは言い難い。要求は編集者から、あるいはチーフデザイナーから出され、どういう読者層に向けて作るのかといった、基本的なことは知らされない。

デザインには明確な根拠と理由が必要なのだ。
マーケティングの結果、この本はこういう読者に向けたものだから、こういうデザインが必要である……という根拠だ。

しかし、そういうプロセスを経て作られている本は、ごくわずか。たいていは、編集者の好み、デザイナーの好みで作られる。極端な話、自己満足的な産物である。
これで売れるものを作るのは無理だ。

料理人は、客に美味しいもので満足してもらう料理を作る。名人は客の顔を見ずに、自己満足で作ったりはしないだろう。
しかし、出版業界は客の顔を見ずに、自分たちが良かれと思うものを作る。あるいは、毎月出さなくてはいけない、出版ノルマがあるから作る。そんな人たちが多いように思う。

実際、仕事として回ってくる書籍の制作で、「こんな本、誰が買うんや?」と疑問に思うものがある。ときには、ブームになっている本の類似本があったりもする。
出版業界にとって「お客」とは、売れた部数の数字でしかないのかもしれない。1万部売れた、10万部売れた、100万部売れた……という数字でしかない客の顔。

読者のための本……ではなく、何万部売るための本という発想。
それは似て非なるものだ。

以下、私のブログ内の、電子書籍関連の記事。
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