電子書籍関連の記事で面白いのがあった。
 この記事は『サイゾー』に掲載されたものが、Yahoo!の雑誌カテゴリに転載されているのだが、本家のサイゾーでは有料の会員登録をしないと全文は読めないらしい。
 なぜ、Yahoo!には全文掲載しているのか不思議(^_^;
 いずれ、Yahoo!からは消えてしまうと思うが、早めにご覧になることをおすすめする。

黒船が来襲する閉じた出版業界──佐々木俊尚が辟易する『電子書籍の衝撃』への衝撃(サイゾー) – Yahoo!ニュース

アップルの iPadやアマゾンのKindle、そしてグーグルのブック検索などアメリカ勢が、電子書籍ビジネスを全面展開し始めている。そして日本市場にも上陸しようとしている状況に対し、日本の出版業界や著者からは「海外勢から出版文化を守れ」といった反発の声が上がっている。だが日本の出版業界は、取次を軸とした流通プラットフォームが、今や文化的にも経済的にも破綻一歩手前の状況に陥っている。衰退する出版を救うためには、現状の流通システムを一新し、電子書籍化することで新たな「本の読まれ方」を構築するしかない。

(中略)

 ちなみに「外野」というのは出版業界人がよく使う言葉で、例えば業界外の人間がブログで電子書籍について書いたりすると「外野が言っても信頼できないんだよな」「外野は無責任だから」といった言い方をする人が、すぐにネット上に現れる。私は本を20冊ぐらいも出していて、あちこちの雑誌に寄稿しており、出版業界にどっぷり浸って暮らしているが、そういう人間に対しても「外野」という言葉を使うのだ。書き手も読者も印刷会社もみんな外野で、「内野」は出版社の社員だけということらしい。

 しかしそうやって「内野」だけで長年内向きの論理ばかりを振りかざし、電子書籍への取り組みもほとんど放置したまま今の事態を招いてしまったのを忘れたのかと思う。

(中略)

 私は植村氏とBSフジの生放送で電子書籍に関する討論を行ったことがあるが、「中小出版社が電子書籍を刊行しようとすると莫大な予算が必要になる」などと、かなりミスリードな発言が目立った。言うまでもないが、アマゾンやアップルは電子書籍を個人でもセルフパブリッシング(自主出版)できる安価なサービスを提供しており、本の刊行コストは電子書籍化で劇的に下がる。こんなことはもうすでにあちこちで語り尽くされている事実なのに、なぜ今さらそのようなミスリードを行うのか、私にはまったく理解できない。

 こういう人物が、日本の出版業界には実に多い。先ほどのパブリを運営している日本電子書籍出版社協会(電書協)の事務局長で細島三喜氏という光文社の幹部がいるが、彼はロイター通信の記事で「紙との共存ができるなら協力するが、紙の出版を維持できないなら協力はできない。こちらがコンテンツを出さなければ向こうも(電子書籍を)出すことはできない」などと実にガラパゴス的な情緒を表明している。

 長い引用になってしまったが、これが出版界の実情だ。
 私も「外野」のひとりだが、出版業界との関わりは長いので、共感することは多い。これについては、前にも書いた。

 出版業界が取る道は2つだろう。

(1)電子書籍には手を出さず、コンテンツも提供せず、紙の出版のみで孤高の姿勢を貫き通す。
(2)AppleやAmazonと積極的に手を組み、電子書籍の主導権を握る。

 どっちかだ。
 しかし、おそらくどちらも取れずに、中途半端のまま、後追いで状況に流されていくのだろう。
 時代を自ら作っていくのではなく、巻き込まれていくだけ。そのことは、iPadが発売されてから、あわてて対応する組織を作っていることからもうかがえる。
 しかしまぁ、大手出版社の対応の遅れは、新たなビジネスチャンスでもある。
 むしろ、出版社主導ではなく、プロアマを問わず作家個人やグループによって、電子書籍の土壌が作られていくような気がする。
 電子書籍の同人誌市場だ。
 なんといっても魅力なのは、Appleであれば作家の印税が7割だということ。単価が安くなるとはいえ、取り分が多いから、そこそこ売れれば、そこそこの収入になる。
 玉石混淆の中で、どうやって売るかの問題はあるが、それはコミケに代表される同人誌即売会でも同様だった。売れるところは売れるのだ。それなりの方法で。その方法を発見したり、運良く行き当たった者が、勝ち組になるのはいつものこと。
 少なくとも、現在は「早い者勝ち」の段階ではある。

 そのいい例が、作家発の電子書籍「AiR」だろう。

「採算が成立」??作家発の電子書籍「AiR」正式版公開 北川悦吏子さんや佐々木俊尚さん参加 – ITmedia News

 AiRは、出版社を通さず、電子版のみで販売した書籍。先行版は350円で、「参加者の労力に合った報酬を支払うには、先行版で最低3500ダウンロード必要」としていた(「出版社“中抜き”が目的ではない」 作家発の電子書籍「AiR」の思い)。先行版のダウンロード数は明らかにしていないが、「採算は成立した」という。

 紙の書籍で3500部では採算は取れないし、印税が10%だと12万2500円にしかならない。
 印税70%だと、85万7500円になる。この差は大きい。
 出版社中抜きが目的ではない……といいつつも、出版社を通していたらこの企画は実現しなかっただろう。
 出版社が主導しないのなら、作家が自分から動くしかない、ということを暗に示唆している。

 現状、電子書籍のフォーマットやプラットフォームが乱立しているが、これがいくつかに収束されるのが次の段階だ。こんなに多種多様に分かれていては、利用者は混乱してしまう。
 その選択肢の中に、日本発のフォーマットやプラットフォームが入り込む余地は……、おそらく難しい。
 ならば、どこがもっとも有望なのか見極めて、そこに集中する方が賢明だ。無駄な時間の浪費と投資をしなくてすむ。
 だが、それもできないんだろうね(^_^;

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